小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごの歴史・文学・文化学 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

イタリア・トスカーナ地方に伝わる昔話です。


あるおばあさんが、

ニワトリの卵1個をつかって
小さなオムレツを作りました。

それを窓辺で冷ましていると
一匹のハエが飛んできて、

おばあさんが気づく前に
すっかり食べてしまったのです。

カンカンに怒ったおばあさんは
判事に訴えます。

判事は棒を渡し、

「見つけたら、
このこん棒で叩けばいいだろう。」

とにべもない答え。

すると、
判事のに一匹のハエが止まりました。

おばあさんは

「あのハエだっ!」

と思い込み、

渡されたこん棒で
判事の鼻を思い切り叩き、
へし折ってしまいましたとさ。

おしまい。


ええ・・・

アグレッシブですね
おばあさん!

トスカーナでは
まぁまぁ知られている物語
なんだそう。

 

このお話、たまご屋として
いくつか興味深い点があります。

 

◆たまご一個オムレツのなぜ

卵1個のオムレツって、
ちょっと物足りなくないですか?

食の細いおばあさんだから・・
ハエがペロッとたいらげるなら
小さめじゃないと話が成り立たないから…

なんて理由もあるかとは思いますが、

 

もう一つの理由としては
「イタリア式オムレツの魅力」
ある特徴があるから。

 

イタリアのオムレツは

フリッタータ

といいまして、
卵に野菜やチーズたっぷり
時には肉やパスタの残りも入れて
しっかり焼き上げた料理なんですね。

オムレツではあるんですが
たとえ卵1個でもボリューム感が出せる、
しっかりお腹にたまる料理なんです。

ちなみにこのお話しのタイトルは
『ラ・フリッタティーナ』、これは
小さなフリッタータをこう呼びます。

 

◆飲食店メニューで面白いかも

この小さなオムレツ
フリッタティーナは近年人気が伸びています。

手ごろで食べやすく見た目にカワイイ、
ナポリにはこのミニオムレツ
フリッタティーナ専門店もあって人気なんです。

あなたのお店のメニューとして取り入れるのも
面白いんじゃないでしょうか。

ちなみにフリッタータは
「スパニッシュオムレツ」
と似ていますが、
あちらはフライパンでひっくり返して両面焼くのに対し、

フリッタータは
オーブンに入れそのまま焼き上げる
という違いがあります。

 

 

◆窓際で冷ますのはなぜか

あと、
なんでオムレツを窓際で冷ますんでしょうね・・・?

日本ではなじみないですが、
欧州の桃太郎クラスに有名なおとぎ話に、

「小さな丸パンの冒険物語」

があります。

 

おばあさんがかまどで
焼いた丸いパンを
窓際に置いて冷ましていた。

それに退屈した丸パンが
コロンと転がって外へ冒険していく・・・

そんなお話し。

ここでも窓際で冷ますのが
キーポイントになってます。

 

イギリスの
人型クッキーが冒険する物語
『ジンジャーブレッドマン』も
同じく“窓際冷まし”から。

なんでしょうね?

日本だと
“縁側で柿を干す”みたいな
カンジで、

窓際調理のパターンが
あるのでしょうか。

 

想像するに、
欧州は緯度が高くって
ローマで青森くらいですから、

日差しも強くなくて
外気も冷たい期間が長く、
手っ取り早い冷却設備的な
使いやすさがあるのかもしれません。

興味深いです。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

 

参照:Thomas Frederick Crane, Italian Popular Tales 「La Frittatina」1885

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年08月26日

海外には、
『お盆』に卵を食べる風習があるんです。

今回はロシアとベラルーシをご紹介。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

お盆というと
亡くなったご先祖様が返ってくる日、

家族や親族が集まって
供養し感謝を伝える行事。

食べ物でみても
不思議で面白い風習ですよね。

 

外国にも「お盆」と同じ
死者を偲んで感謝を伝える、
そして興味深い“食事”の風習があるんです。

この絵画は
ヴラディーミル・マコフスキー作
『パスハのモレーベン』(1888)

ロシアの“復活祭”を描いた絵です。

 

ロシアには『ラドニツァ』と呼ばれる
この復活祭の後に記念日がありまして、

日本の『お盆』に近い日なんです。

復活祭後の第2火曜日に
故人となった家族やご先祖を追悼するんですね。

 

面白いのがこの日は

「お墓の前で
ごちそうを食べる」

という風習なんです。
しかも楽しく明るく。

上の絵は
1881年『The Graphic』誌に掲載された
サンクトペテルブルクの墓地での
「ラドニツァ」ですが、

お墓にもたれて
ごちそうを抱えた
よっぱらいがいたり

子供が走り回っていたり
たのしそうでシュールですね。

 

日本の『お盆に親族が集まる』のと
似たものを感じます。

このラドニツァで
お墓の前で食べるごちそう
復活祭で残ったものまたは復活祭と同じメニュー。

これをお墓に持っていき、
食べ物をお供えしつつ
自分たちも食べ、盛り上がるんですね。

 

そしてそのさい

お墓に「赤い卵」が
ごちそうと共に
供えられます。

さきほどの復活祭の絵画、
左側のテーブルに、
よく見ると

赤い卵が2個

のっています。

ロシアでは、
復活祭(イースター)に
卵を赤色に染めて食べる風習があるんです。

玉ねぎの皮で染めます。
キレイですよね~。

 

「赤い卵」は、
十字架で流されたキリストの血や、
それで得た『命と勝利』を象徴するもの。

ラドニツァには
この赤い卵は欠かせません。

必ずお墓に供えるんです。

ロシアのお隣ベラルーシにも
ラドニツァがあるんですが、

「家族でお祈りしたあと、
墓の上で赤い卵を転がし、
墓にビールやウォッカを注ぐ」

「家主は色付けした卵を一つ
地面に埋めて、
お墓に料理を並べる」

 

「もし物乞いに会ったら
赤い卵を贈ってもてなす」

なんて古い記録が残っています。

ちなみにめっちゃお酒を飲んで大騒ぎしていたそう。

あと、
子供たちは「ビトキ」っていいまして
ゆで卵をぶつけ合ってバトルする遊びを
していました。

ベラルーシには

「ラドゥニツァの日は
昼食までは畑を耕し、
昼食後には涙を流し、
夕方には跳ね回る」

という言葉があります。

 

親しい人の死は悲しくても
この日はめいいっぱい楽しむ。

どういうロジックなんでしょう?

 

◆なぜお墓でごちそうを?

「復活祭(イースター)」は
キリストが復活したことを祝う祭りですが、

「輝かしい復活祭の後、
故人たちと共に
キリストの復活という
偉大な喜びを分かち合えるように」

というのがこのラドニツァの趣旨ですね。

つまり
結婚式と二次会みたいな。

公式のお祝いのあと、
「(死んだ)あいつらとも祝いたいなぁ。」
という気持ちで開かれるもののようです。

 

だから、
復活祭と『同じごちそう』で
めでたい『赤い卵』が
かならず供されるんですね。

『いっしょにお祝い』だから。

ステキな考え方ですね。
死の悲しみから前を向いていく
ひとつのきっかけになってきたのでしょう。

※「なんで赤い卵なの?」は
いくつか面白いエピソードがあるので、
またあらためて紹介しますね~。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:Radonitsa: Eat, Pray, Drink – First Things)

(参照:Radonitsa: How Russians Give Joy to Their Dead – Nicholas Kotar)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年08月14日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

モリエール著
フランスの古典戯曲『病は気から』
たまご料理について語る面白いシーンがあります。

 


自分が病気だと思いこんでいる
金持ちのアルガン。

医者に手厚く見てもらうため、
娘と若い医者を結婚させようと考えます。

ですが娘アンジェリックには
恋人クレアントがいて・・・

という、ドタバタの喜劇です。

 

その中でアルガンは、
若い医師とその父医者に
診察をしてもらいます。

「ウム。これは脾臓が悪いな。」

「かかりつけ医には肝臓だと
言われたのですが・・・。」

「肝臓も脾臓も同じようなものです。」

 

「普段の食べ物ですが・・・」

「ウ~ム、
焼いて肉を食べるから
こうなるんですな。」

「いつも煮たものだけを
食べているのですが・・・?」

「焼くのも煮るのもおなじことじゃ。」

「先生、卵一個には、
塩を何粒入れれば
よいのでしょう?

「6粒、8粒、10粒。
偶数にしなさい。

薬の場合は、
奇数にするのだ。」

「はー、なるほど。
ありがとうございました。」

と、アルガンは感心して、
医師親子は診察を終えます。

(『病は気から』第二幕・第九場)


1673年初演ですから、
いまから350年前の戯曲です。

うーん、
吉本新喜劇など
現代でもありそうな面白さですねぇ。

 

これ、
権威に弱い患者」と
根拠が曖昧なのに
専門家らしく振る舞う医師」の
ドタバタ喜劇シーンなんですね。

 

ツッコまれると
「内臓なんてどれもおなじ」

なんて返答しておきながら
一方でたまご料理の塩の粒
偶数奇数まで指定する。

そんな矛盾に気づかず
エラソーにするヒトって
いますよね~。

痛烈な皮肉です。

 

◆塩をまぜると食感が変わる

ちなみに卵料理は
塩を入れることで
食感が良くなります。

たとえば茶碗蒸しは
0.6%程度の塩分があると
滑らかな舌触りになって
出汁の含みが良くなり、

そこから塩を多くすると
もろい食感になってきます。

塩をどれくらいの
パーセントで入れるかは、
たまご料理の『食感』に
大事なんですね。

ここをテキトーにしちゃうと
イマイチになることもあるんです。

また、塩を卵液に混ぜてから
調理前にどれくらい置くか、
その時間で食感が変わる、
との報告もあります。

塩をまぜて15分ほど置くと、
とろ~りふんわり食感の
スクランブルエッグになる、という研究ですね。

 

塩粒の偶数奇数「まったく」関係ないですが、

「たまご料理のできあがりが
なんで毎回違うんだろう・・・?」

なんてお悩みの方は、いちど
量と入れる時間をしっかりそろえて
塩をつかってみてくださいませ。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:希釈卵液に各種食用塩を添加したゲルの調理特性・日本調理科学会)

(参照:鶏卵の調理・調理と科学(4))

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年07月15日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

サッカーw杯、
盛り上がってますね!

 

日本サッカー協会のシンボル、
日本代表のエンブレム
八咫烏(やたがらす)
日本神話に登場する三本足のカラスです。

足はそれぞれ
天・地・人を表すそうで、
たしかに足が多いと
サッカー強そうですよね。

八咫烏を祀る熊野神社は
『蹴鞠(けまり)』の名手とも
関係があるらしいですから、
思いついた人すごいですね。

ピッタリの良いシンボルを
見つけてきたなぁ、と思います。

 

さて、
本日は「卵ニワトリの妖怪伝説」第2弾。

「三本足のニワトリ」

について。

 

実は古来より、
足の多い鶏の伝承って
たくさんありまして、

しかも他の鳥と比べて
圧倒的に多いのです。

 

しかし、

カラスの神様と違って

中国そして日本では
『3本足のニワトリ』は

妖怪扱いなんです。

もっとも有名な伝承話が、

『西竹林の鶏三足』の出る民話。

いろんなバリエーションのお話しが
各地にあります。

有名なのが一休さんのお話し。


一休和尚(一休宗純)が旅先で
あるとき住民に頼まれて
「化け物がでる噂の寺」に泊まります。

夜更けになると、
化け物が現れて歌ってしゃべって踊り狂う。

まず一体目の妖怪が、

「東の野原にいるバズは、
なんとも哀れな身の上だ。

生きている間は楽しいこともなく、
背骨は傷み、足も折れてしまった。

そして最後には野原で死に、
土へ帰ってしまった。」

2体目の妖怪が、

「西の竹林にいるケイサンゾクは、
役に立たない不自由な姿で
生まれてしまった。

人から世話されることもなく、
竹林の中でひとり寂し~く暮らしている。」

という。

三体目の妖怪は

「南の池にいるリギョは、
なんとも冷たいものだ。

水を住みかとし生活しているから、
いつも体は濡れっぱなしで冷たい。」

これを聞いた一休和尚は、

「なるほど・・・。」

 

翌朝に村人を集め、

バズは“馬頭”
ウマのガイコツがあるはずだ。」

ケイサンゾクは“鶏三足”、竹林に
三本足のニワトリがいるはずだ。」

リギョは“鯉魚”だろう。
南の池にコイがいるはず。」

村人は手分けして調べてみると、

「ほんとだ・・・!」

この3つを供養したところ、
妖怪は出なくなったそうな。

めでたしめでたし。

一休諸国物語(1661)


というお話し。

 

これに似た民話が
日本中にありまして、

寺に泊まるのが
侍だったり旅人だったり、

竹林にいる鶏
三本足が多いですが
一つ目だったり一本足だったり
四本足だったり・・・

つまり

見た目に奇異な鶏

が出てきます。

コイとガイコツは
フツーのものなんですよね・・・。

 

研究によると、
足数がちがう妖怪は、
ニワトリだけ伝承が多いんだそう。

それも江戸時代ごろから。

なぜなんでしょう?

 

◆堕ちた神様の怪しい魅力?

研究者伊藤龍平氏によると、
これは時を経て
霊鳥から怪鳥へ変わっていったから。

 

朝鳴くニワトリは古くから
太陽の象徴、神様の霊鳥でした。

尊いニワトリがさらに
3本足で見つかると、

もっとすごいレア神様

という扱いだったのです。

 

なので、三足鶏は
日本書紀では神様のお告げと書かれ、
平安時代には
“悪い平清盛人形をぶっとばす”
ヒーロー的エピソードもあるくらい
「すごいニワトリ様」でした。

それが、江戸時代には
そんな霊的な考えがすっかり廃れて

「見た目がちがう!?こわい!」

となっちゃったんですね。

 

民話でも
「妖怪」として登場する話ばかりに・・・。

でもやっぱり人気があって、
いろんな民話やエピソードで
語られる存在になるのです。

 

うーん、たとえるなら
神様から悪魔になって
でも人気もある

堕天使ルシファー

みたいなものでしょうか!?

 

3足ニワトリ、
お店のメニューでも
縁起物または妖怪演出として
鶏モモ料理とか手羽元とかで
何か応用できそうです。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:南方熊楠 十二支考)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年06月26日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

そろそろ暑くなってきましたので、
すこし涼しくなる、
ニワトリや卵の妖怪話を時々紹介していきます。

今回は「バジリスク」


マケドニア国のアレキサンダー大王が
インドに遠征をしていた際

ある城を大軍で包囲し攻めました。

すると、

すごい数の将兵が、
傷も無いのにバタバタと倒れ
死んでいったのです。

「なんということだ!
すぐ原因を究明せよ。」

と学者に命じ調べさせると、

 

!敵の城塞のカベの上に、
なにやらデッカイが・・・!

「あの怪物が原因です!」

と報告が。

 

状況を見ていると、
このニワトリ怪物がにらむと
目から人を殺す毒光線をだす。

それにあたると
兵が死んでしまうとのこと。

ええ・・・!
それは困った。

 

要するに
長射程のビーム兵器が
城壁の上にあるわけで、
こっちの弓やヤリでは対処できません。

さすがに
アレキサンダー大王も困って、

「どうすればよいだろう?」

と学者に尋ねた。

すると、

「そうですね・・
我が軍と城壁の
あいだの小高い丘に、
でっかい鏡をおきましょう。」

とのこと、
大王はそのとおり鏡を設置し
様子をうかがっていると・・

怪物の目から出た
眼力ビームが跳ね返り、
ニワトリ怪物はバッタリと倒れ
死んでしまったのです。

その後、大王は難なく城を落としたそう。

『ゲスタ・ロマノールム』(139話)


という伝説。

 

この怪物、「バジリスク」といいまして、

生まれがちょっと面白いんです。

雄鶏つまり
オスのニワトリ産んだ卵を、

ヒキガエルがあっためると
バジリスクが生まれます。

うーん、
「オスが産む」
これだけでもかなりレアケースで
さらにカエルが育てないといけない・・

さすが伝説の怪物、
そうそう起こりそうにないですね。

このバジリスクの産まれる設定は
英国の小説「ハリーポッター」にも出てきます。

 

もう少し詳しく
卵について説明すると、
フツーの鶏卵とは
見た目もちょっとちがうんだそう。

 

一説には

『雄鶏は
年老いたニワトリで、
この卵には殻が無い』

けれどその下のうす皮が
めちゃめちゃ頑丈で、
どんなに打ち付けても壊れないんだとか。

頑丈でやわらか・・・
ぽよんぽよんと弾む感じでしょうか。

なかなか面白いです。

 

◆デザインが蛇からニワトリに?

このバジリスク、ヨーロッパの
いくつもの伝承にでてくるんですが、

最初はあまり大きくない
ヘビの姿だったんですね。

それが
話が伝わるにつれて
だんだんと盛られてきます。

中世になってくると
見た目もエキサイティングになってきまして、

アタマに鶏のとさかのついた
ドラゴンになって、

その後伝承はさらに
ニワトリっぽくなり、

ヘビのしっぽがついた
巨大ニワトリ

というイメージが定着していきます。

前述のハリーポッターに出る
バジリスクは初出に近いヘビっぽい姿で、

アニメ化もした大ヒット漫画
「ダンジョン飯」は後のデザイン。

ニワトリ+ヘビの見た目で
卵もプニプニのやわらかく描かれていて、

あ~、どっちも伝承が活かされるなぁ、とワクワクします。

飲食店さんでも、
物語をメニューに活かせれば面白いですね。

 

余談ですが
ポーランドの首都ワルシャワには
その名も「バジリスク」という老舗店があって、

卵と白ソーセージの鍋や
卵と白ソーセージのジュレック(現地の味噌汁みたいなスープ)が人気なんだそう。

まさかプニプニの卵では
ないと思いますが、
食べてみたいですね~!

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:たまごの妖怪はアジアにしかいない!? | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年06月19日

世界の巨大オムレツ祭りについて
少し前に書いたんですが、

 

そういえば面白い
巨大オムレツ騒動があったなぁ、
と思い出したので、
ご紹介してみますね。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

ギネス挑戦のオムレツづくり
スペインで大混乱を起こした
エピソードがあります。

 

2015年のお話。

スペイン北部にある
バスク州ビトリア市。

人口25万人の小さな町がこの年、
『美食の首都』賞(Spanish Gastronomy Capital)を受賞したんですね。

この賞は
スペインの食文化と観光振興を目的に、
毎年1都市だけが選ばれる栄誉ある称号。

めっちゃすごい事なわけです。

そこで市長さんは
その記念行事の一環として
市の中心にある広場で

「ギネス記録に挑戦しよう!」

と考えたんですね。

目指すのは、

「史上最大のスパニッシュオムレツ」
(スペイン風オムレツ)

です。

いや、正確には、

スペイン美食の首都協会”が主催し
ビトリア市が費用を出して、
ギネス世界記録挑戦のイベントを
やることになったんですね。

シェフのゴンサレスさん監修のもと、
市で大々的にPRしつつ開催されることになりました。

◆めっちゃ大変!でも成功するも・・・

スパニッシュオムレツって
卵以外に、じゃがいもと玉ねぎが
ぜったい必要なんですね。

世界記録となると準備も費用も大変です。

 

挑戦サイズは4000㎏!

すご~い。

 

当日は大賑わい。

大勢の人たちが準備し、
たくさんの鍋をつかって
卵もジャガイモもすべて手作業で
焼き上げて・・・

ついに4トンの
スパニッシュオムレツが
完成しました!

やったー!!

めでたしめでたし。

 

ところが・・・

ギネスは、

「ビトリア市のオムレツは
ギネス記録とは認められない。」

「“スペイン美食の首都協会”が作った
オムレツは、
現在の記録を超える重量
ではなかっただけでなく

当社のガイドラインに従って
正しく調理されていなかった。」

と、声明を出したんですね。

ええ~~・・!?

 

◆ルール違反だった

つまり拒否された理由は2つ、

まず、

世界記録を超えてなかった。

4トンもあるのに・・・!?

確かにすごいですが、
じつはこの時点の世界記録は、

11トンのオムレツ。

ちなみに一位は
“日本の記録”です。

 

1994年に横浜で
16万個もの卵を使った
11,036キログラムの
スパニッシュオムレツが
作られています。

日テレの番組企画でした。
平成のテレビはすごいなぁ。

 

ビトリア市のはその半分以下
だったわけですね。

うーん、それはちょっと
認定は厳しいですね・・・。

 

これに対し
ビトリア市長マロトさんは、

「日本の記録は
オリーブオイルじゃない!
牛乳が使用されていた。

オリーブオイルは
卵とジャガイモと並んで、
スペイン風オムレツの
伝統的な材料だっ!」

と、主張したんですが・・・

 

さらにもう一つの却下理由が
問題だったんですね。

“正しい調理法じゃなかった”

という点。

◆ギネス認定にはルールがある

ギネスワールドレコーズの公式サイト
ハッキリ書かれていますが、

“世界一”となるには
ガイドラインがあるんですね。

調理の場合は、
「いっぺんにつくること」でしょうか。

ですが、ビトリア市のものは、

「小分けでオムレツをつくって
最後に巨大フライパンの上で合体」

という方式だったのです。

四角い板状に
オムレツを焼いて・・・

パズルのように組み合わせ
おっきな一枚にする。

「それは『小さいオムレツたくさん』でしょう?」

というのがギネスの見解ですね。

うん、まぁ・・たしかに。
そうですよね。

 

◆事前に知っていた!?大もめに。

というわけで、
ギネス世界記録は
却下になったのです。

かかった費用は5万ユーロ
(当時の為替で約700万円)

「残念だったけど、しょうがないよね。」

・・・とは
ならなかったのです。

このビトリア市の
スパニッシュオムレツの挑戦失敗は

バカだなぁ。」と話題になり
遠く海外ニュースにまでなってしまいます。

 

マロト市長は怒り心頭、

「そんなものにお金は払わん。」

と、美食の首都協会へ
5万ユーロの支払いをストップし、

協会は「不当だ。」と訴えて裁判沙汰に・・・。

 

さらには
その直後に
地方選挙で与党が大敗し、
野党と入れ替わったため
市長は失脚

新市長ひきいる市の新政権は、

「なんだこの浪費は・・!?」

「11,000㎏超えの世界記録が
20年前からあるのを知ってて

たった4,000㎏のオムレツの
準備しかしないなんて、

おまえら
最初っから達成する気が
無かったんじゃないの!?」

と前市長を非難します。

対する前市長は

「た、たとえダメでも
記録に挑戦すること自体が
市にとって前向きになれる
意味があったんだよ。」

と抗弁し、
政争まで絡んだその騒ぎが
またニュースに・・という
悪循環に入ってしまったんですね~。

 

◆「作って楽しむ」がいちばん!

結局のところ、
良く調べなかったのが
いけなかったんですね。

そして
『美食の首都』賞に選ばれたのは
けっしてキングサイズの食が
理由ではなかったはずです。

記録より記憶

なんて言葉もありますが、
なにもギネスを目指さずとも

みんなでワイワイ美味しい
オムレツを一緒に作ろうよ!

だけでよかったのかもしれません。

イベントは
後からの意見で内容が
変わってしまいがちです。

そもそも誰のため、
何がしたかったのか、
その想いを忘れないように
確認しあう必要があるのかもしれませんね。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:Spanish omelet record attempt: The great Spanish omelet fiasco | Spain | EL PAÍS English)
(参照:Omelet record attempt leaves Basque city government with egg on its face | Spain | EL PAÍS English)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2026年02月28日