小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごの海外ニュース 記事一覧

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

ドイツには「にわとりを助けよう(Rettet das Huhn)」という協会がありまして、

たまごを生み終わったニワトリを飼ってくれる人を募集し

引き渡す取り組みをしています。

 

卵を産むニワトリさんは通常、

2年ほど飼育期間があります。

それを過ぎると

サイズ不適卵が増える

ひび割れが増える

などが起こるようになり、飼育コストが見合わなくなってしまうのです。

 

実際はニワトリさんは10年ほど生きます。

長いものでは15年と言われていまして

確かにかわいそうな側面があります。

そのまま飼い続けるのが理想なのでしょうが、

そうすると卵は一個1000円でもキビしい単価になってしまいます。

難しいですね~・・・。

 

もともと動物愛護はコストにとても影響しやすくって、

たとえばドイツでは法律で

余ったヒヨコの殺処分が禁止になりました。

 

するとそのコスト増から鶏卵価格は高騰

EU内周囲の国との競争に負けつつあり

鶏卵業界が苦境に立たされる

ようにもなっています。

コスト面を考えた飼育

つまり「経済動物」ではできない、

 

ニワトリさんを愛してくれる

人達が老後まで飼育してくださるなら、

これは一つの小さな解決策です。

2008年以降、10万羽を引き渡したそうで、

ステキな取り組みですね。

 

ちなみに日本では、

卵を産み終わったニワトリは

ほぼすべて食肉となります。

ボク自身は、

『感謝して命をいただく』ことは

ひとつの供養だと思っていますので

この事に反対する気持ちはありません。

 

ただ、

「たまご」は牛乳と合わせて

畜産物でほぼ唯二の

『命を奪わずに得られる動物性たんぱく質』

です。

 

食肉として

命を奪うことに心を痛め

解決をしたい、と願う人たちが

親鶏のことを考えてくださること、

とてもうれしく感じます。

 

◆セカンドベストはすごいこと

そうはいっても

ドイツには採卵だけで4800万羽もニワトリがいますし、

日本に至っては世界トップクラス1億5千万羽です。

すべてをこの方法で救う事はできません。

 

でも、

次善の策・セカンドベストとして

有効な手段ではありますよね。

 

理想の状態があって

現状とのギャップを

「まず今より良い状態」にできる

セカンドベストな方法で

どんどん埋めていく…

 

これは、飲食店さんでも

僕たち卵屋でも

どの商売でも必要なことですよね。

 

僕も考え続けます。

 

ここまでお読みくださって

ありがとうございます。

(参照:Rettet das Huhn: “Adoptiveltern” für Ex-Legehennen gesucht | NDR.de – Nachrichten – Niedersachsen)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2022年08月1日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

世界的な穀物価格高騰で
日本だけじゃなく東南アジア全域でも
鶏卵の価格が高くなってきています。

 

いや、たまごに限らず
穀物を食べる畜産全般ですね。

 

一昨日のニュースですが、
マレーシア国内貿易消費者省の
ノレナ・ジャアファル局長が
地元ニュースのインタビューで

 

「最近の値上がりで
卵が買えなくなったら、
そのぶん食べる量を
減らせばいいだろう。」

なんて答えて、
SNSで大炎上しています。

「1週間に20個
食べていた卵を、
15個・10個と
減らせばいいんです。」

とも言ってまして、

 

「生活に一番大事な
たんぱく源なのに!」

「たまごで栄養を
取っている国民を
何と思っているんだ!」

・・・と怒りの声があがってるんですね。

 

うーん「減らせば?」は
「代わりにケーキ食べれば?」の
マリーアントワネットよりひどいですね~(汗)

 

マレーシアは価格高騰対策に
何度も価格統制をやっていまして、

 

今年の初めにも

「これ以上、卵の値段を上げるな。」

なんてお触れをだしています。

世界的な飼料高騰で
現状そんなこと言っている
状況じゃないですから
業界も猛反発していまして

 

先月末までの価格統制のなかでも、
すでに全国のたまご屋・養鶏業者で
1000件超えての価格販売違反が発生
という大変な事態となっています。

ちなみに
マレーシアは超卵好き国でして、
2015年から統計を取っていませんが
その際は年間一人315個の消費、
一人330個の日本に次いで

世界第三位

でした。

 

高官の「週に20個食べるのは・・・」
というのも割と実情を踏まえた
表現なんですね。

 

たまご屋としては
とてもシンパシーが沸きます。

 

◆日本の現状相場価格は…

日本でも状況は同じでして、
相場価格自体は需要と供給の
バランスによって決まるため

 

鳥インフルエンザ大発生で
大不足した昨年よりは低価格ですが、
それでも過去5年では昨年に次いで
高価格となってきています。

この先飼料価格高騰と
円安の双方がさらに進むと
全国で減産方針となり
秋口くらいには相場高騰へと
進んでくることも考えられます。

 

せめて四半世紀ぶりの
超円安だけでも
解消されれば違ってくるのですが・・・

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2022年07月8日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

TikTok中心に海外で「エッグクレンジング」

なるものが話題になっていますね。

なんでもメソアメリカの儀式で、

卵を使ってオーラを浄化するというものです。

 

レモン水で洗った卵を、

頭から腕、胴体、足へとコロコロと体全体に転がす

 

そうすると、

あなたの魂や精神、オーラから卵が

すべてのネガティブなエネルギーを取り除いてくれる。

 

その後、卵を割ってみて、黄身のカタチをみて、

泡があればマイナス感情

くもの巣っぽいシワがあれば誰かの嫉妬

そんなものが取り出されたことがわかる…

 

・・・という「儀式」です。

うーん、なかなか興味深いですね。

 

僕がお伝えする

たまごの「ここがイイ!」という紹介は、

論文やデータなど、

根拠があるものだけです。

 

ですので、この儀式が万人に

ホントに効果があるかどうか

は正直わかりません。

 

ただ、自分を癒すひとつの手法として

「たまご」が使われ

拡散され実行されているという点に

面白さを感じます。

 

かつてコロンブスが

アメリカ大陸から持ち帰ってしまった梅毒は

その後ヨーロッパで広まり、

ナゾの新しい奇病だったことから

 

その治療方法として

「ひよこ」を患部にやさしく当てる

という施術(?)が

されていました。

 

たまごやヒヨコ、

ニワトリさんを「癒し」とする考えは

昔っから続いている

ともいえるかもしれません。

 

じっさい、米国のデータでは

ヒヨコの売上・たまごの売上は

社会不安がある年ほど大きくなるとの報告もありまして、

 

金融不安の年や大統領選挙の年、コロナ禍でも

たまご・ひよこの売上が増えています。

 

そもそも生命の源である「卵」を神聖視する文化って世界中にありまして、

「たまごから生まれた」なんていう伝説を持つ英雄がいる国も少なくありません。

 

欧米のキリスト教文化圏なんて、

「卵を信奉する」みたいな土着の宗教を

徹底的に排除して広まったために

聖書にも不自然なくらい「鶏卵」の記述がまったくないのですが、

なのに、そういった卵神聖視の文化とふたたびくっついて

 

復活祭のイースターエッグとか

イタリア謝肉祭の“卵投げ”や

英国の教会主催の“たまご渡し”みたいな

教会主導の「たまごのお祭り」があちこちにあります。

 

つまり、いまTikTokでバズってる

卵=癒される

という考えは、長い歴史の産物とも言えるんです。

 

僕はたまごって『美味しく食べるもの』

だと思ってますので、

エッグクレンジングは

「もったいないな」

という感覚ですが、この

「たまご=癒し」の感覚って有効に使うべき、とは思ってます。

 

たとえば、

『ホッとする』

『昔ながらの』

『ふわっと』

みたいな癒しキーワードと玉子料理って

かなり相性良いんですね。

 

やってみると注文数が伸びるキーワードが

たくさんあります。

 

食材として長く家庭で普及しているとか

健康的な感覚とか

いろんな要因はありますが、とにかく

 

コロナ禍で不安の多い情勢です、

ちょっとでも安心や癒しにつながる

あなたのお店のメニュー要素として、

『たまごメニュー』+『いやし』キーワードで

考えてみてはいかがでしょうか!?

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2021年10月4日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

つい先週、こんなニュースが海外で話題になっています。

“シルバーレイク公園でのボランティアによる卵漬け作業に抗議が殺到 (Protest greets volunteer egg-addling effort in Silver Lake Park | Post Bulletin)”

これ、どういうことかと言うと、

米国にシルバーレイク公園という大きな自然公園があるのですが、そこのガン(ガチョウ)が増えすぎたのですね。で、数を減らすために「卵に油を塗る」作業をボランティアでしていたところ、「なんてかわいそう!」という抗議が殺到して騒ぎになっているのです。

卵が孵化14日目になっていないものに限るから人道的だよ、残す卵もあるので全滅じゃないよ、という意見に対して、「生まれないのを分かっていて抱卵させるなんて親鳥がかわいそう」「プラスチックの偽卵と入れ替えるべき」「規模が大きすぎだ」などの反論がでて対立しているようです。

さいしょに読んだときは「そんなことせずに獲った卵を責任もって食べちゃえばいいのでは。」とも思ったのですが、それだと減った分だけまた産んでしまうので意味がないんですね。

うーん、動物愛護の視点と環境バランスの観点が絡み合っていて、なかなか難しい問題です。

さて、

事の是非はちょっと置いておいて

ちょっと興味深いのが、

「卵に油を塗る」という点。

なぜ、それで「雁の数を減らせる」のでしょうか‥‥‥!?


〇卵は呼吸をしている

すべすべとした卵のカラ。

実はこの卵殻には、なんと一万個もの微細な穴があいています。

「気孔」というのですが、そこから呼吸(ガス交換)をしているんです。

有精卵の場合はこの気孔から酸素を取り込んで胚が育ちますので、すなわち上記のニュースのように油でコーティングしてしまうと、かわいそうですがそれ以上育たなくなります。

有精卵だけじゃなく、あなたのご家庭の冷蔵庫にある卵も同じ。

呼吸(ガス交換)をしています。

なので、保存中にその影響がでます。

食用たまごの場合はメリットとデメリットがありまして、

まずメリットは、呼吸の結果、ゆでたまごがキレイに仕上がる、ということ。

産みたての卵にはたっぷりの炭酸ガスが含まれていてpHが低く、そのせいで茹でると白身が卵殻膜とくっついてきれいに剥けません。あちこちくずれてボロボロになっちゃいます。

でも、気孔から3日ほどかけてゆっくりと炭酸ガスが抜けまして

そうすると、ツルン!と剥けます。

呼吸のデメリットは、卵の「鮮度」が落ちやすくなること。

油などでコーティングして呼吸を止めると、有精卵は成長が止まってしまいますが、

卵の鮮度は長持ちすることが知られています。

これはいろんな研究データがあるのですが、油などでコーティングして呼吸を止めることで、まず黄身の盛り上がりや、白身のプリッとした弾力性などのいわゆる「張り」が長持ちします。

海外にはそのために開発された卵に膜をつくるバイオコーティングまで作られています。

(関連:ふりかけるだけで卵の保存性を劇的に伸ばすバイオシールドが開発される!?【インド】 | たまごのソムリエ面白コラム

その他、呼吸によりそばにあるいろんな食材の香りを吸ってしまうなど、いくつかの影響があります。

あまり卵を長期間保存することなんて無いかと思いますが、災害などで局所的に食料供給が絶たれ、なにがしかの保存性を求められるサバイバル状態が来るかもしれません。

もしそんなときがありましたら、卵と油の関係を思い出してくださいませ。

上記のニュースの環境トラブルは重要な問題ですが、卵と油、プラカードに書いてありますように「ケーキのため」だけに使えるようになりたいものですね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2021年05月6日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

とんでもない寒波が来てますね~。

さて、海の向こう、アメリカでも寒さが続いています。

先日、カンザス州のハイウェイパトロール隊がSNSで一枚のたまご写真をアップしました。

おお・・・!

たまごの中身が出る途中でカチンコチンに凍ってます!

これはスゴイですね。

『もし寒さで車が動かなくなった時は、カンザス州緊急対応サービスがありますので、慌てず連絡してくださいね!』

とのメッセージに添えての写真だったんですね。

これは判りやすいですね~。

こばやしは20代の頃、カンザス州の隣の隣の州サウスダコタという所に半年ほど住んでいたことがあり、冬に車がハイウェイで故障して凍死しかけたことがあります。

ガソリン計のメーターが凍り付いてガス欠に気づかなかったのです。

大陸の冬ってめちゃくちゃ冷えるんですよね。毎夜気温はマイナス20℃近くまで下がり、車のフロントガラスが寒さで収縮してヒビが入るくらい……。

運よく通りかかった車に助けてもらいましたが、このハイウェイ緊急サービスを知っていればもっと安心していられたでしょうね。

日本の寒波も大変ですが、みなさま暖かくしてお気を付けてお過ごしくださいませ~。

(local News that matter /It’s so cold in Kansas, Highway Patrol says an egg did this)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2021年02月17日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ゆでたまごをミンチ肉で包んであげた英国の伝統料理「スコッチエッグ」。美味しいですよね~。

以前に、「スコッチエッグはオヤツだ。」として英国のある小学校が弁当に入れるのを禁止をしたことから大論争になったニュースをご紹介しましたが、コロナ禍でふたたび「スコッチエッグはおやつかオカズか問題」が再燃しています。

コロナ禍中に揺れる英国は今、コロナ患者の発生比率に応じて3つのエリアに分けられており、

1段階…10万人あたり感染者100人以下

2段階…10万人あたり感染者100人以上

3段階…感染者急増

このどのエリアそれぞれで、厳しい禁止事項や移動制限が課されるロックダウンが検討されています。

ロンドンなど大都市は「2段階目」のエリアに入ってまして、『屋内での交流』や『食事以外のドリンク販売』が禁止になる事に……。

「食事ならしょうがないけど、気軽に飲み歩きするのはダメ!」としてパブやバーなどに人が集まるのを禁止するんですね。

感染拡大をふせぎたい政府の考えは良く分かりますが、規制されるお店や酒好きロンドンっ子からしたらたまりません。

適切な食事を出す店 → 開店してオッケー

軽食(おやつ・つまみ)だけを出す店 → 店を開けちゃダメ

となりますので、

「じゃあ、ウチはスコッチエッグを出しているけど、これはゴハンなの?オヤツなの?」

という議論が出ているわけです。

もちろんネットでも論争となっていまして、

先週LBCニュースの取材に対して、ジョージ・ユースティス環境大臣が正式な回答をするまでの騒ぎになっています。

気になる大臣の回答は、

「スコッチエッグはごはん」

との事でした。

もともとは「おやつ」だったよね。

でも、今はフライドポテトやサラダと一緒に提供されている店も多いんだから、

これってもう「食事」って言ってもいいよね。

……というコメント。

かくして、スコッチエッグはおやつかごはんか論争にも一応の決着がつき、

ロンドンっ子は美味しいスコッチエッグ料理にひきつづき舌鼓をうつことができるようになったわけです。

 

◆ロンドンっ子のゆずれないソウルフード

それにしても、なぜスコッチエッグなのか?思われるかもしれません。

スコッチエッグは英国で280年の伝統がありまして、ロンドンにあった百貨店「フォートナム&メイソン」で出されたのがはじまり。

その後英国中に広まり「英国最高のつまみ」と評されることもあるくらい、いろんなこだわりの味を楽しめる国民食になっています。

英国人、とくにロンドンっ子にとっては「スコッチエッグだけはゆずれねェ!」というソウルフードなんです。

そして、「スコッチエッグはおかずかオヤツか」の議論はずいぶん前からありまして、

そもそもは大英帝国領だったインドで旅人が腰にぶら下げて運ぶ『携帯食』だったと考えられていることや、それぞれのパブの自慢のつまみメニューになっていることなんかが、論争の根っこになっているんですね。

なんでしょうね?……日本で言うならさしずめ

『たこやきはごはんかオヤツか?』

みたいな議論でしょうか。

うーん、そう考えると、揉めるのもなんだか分かる気がしますね(笑)

そういえば、スイスでは「チーズフォンデュはコロナ禍で安全か」の激論がされており、「加熱しているので安全」という見解を専門家が出しています。いろんなお国柄がでますね。(チーズフォンデュは安全か? スイスで議論 国際ニュース:AFPBB News)

いずれにせよ、コロナ禍が去ってそんなことを気にせずゆっくり食事ができる世の中に、はやくなってほしいものです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:Scotch egg to the rescue: minister says it can be ‘substantial meal’ | World news | The Guardian

(関連:伝統的スコッチエッグの作り方 【おススメレシピ その1】 | たまごのソムリエ 面白コラム

(関連:イギリスで「最高のつまみ」と評された卵料理『スコッチエッグ』 | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2020年12月2日