小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごのビックリ科学 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

先週ちょっと面白いニュースがあがっていました。

New understanding of avian eggshell attachment has implications for medical, egg industries
(https://phys.org/news/2024-02-avian-eggshell-implications-medical-egg.html)

(卵殻の吸着力についての最新研究が、鶏卵産業と医療に影響する)

ようするに、

たまごのカラと
内側の薄皮が、
なぜしっかり
くっついているのか?

のメカニズムが
最新研究でくわしく分かってきた

たまごの品質アップにも
医療にも
いろいろ役立つかも
とのこと。

たまごのカラの
内側には

卵殻膜(らんかくまく)

っていいまして
うす~い膜が
ぴっちり貼られて
いるんですね。

ゆでたまごを剥くと
皮みたいなのがありますよね?
あれです。

生卵を割ると
カラの内側に
キレイにくっついています。

ピッタリと
しっかりくっついてて

はがそうと思うと
ちょっと力もいります。
まるで工業品のような精密さ。

で、ですね

たまごのカラって
炭酸カルシウムで
できてまして、
あるいみ「かたい石」ですね。

また内側の膜は
たんぱく質でできた
「やわらかい繊維」です。

 

無機物と有機物
このふたつが
ミクロでしっかり
くっついている。

 

じっさい
どうなっているんでしょう?

考えてみれば不思議なんです。

カナダ・マギル大学の研究チームが、
最先端の3DイメージングX線顕微鏡と
電子顕微鏡をつかって、
この界面を3次元的に調べたんですね。

すると、

卵のカラに
膜の繊維が
1000分の一ミリ単位で
からみつき、

逆に膜には
卵殻のトゲが
百万分の一ミリ単位で
埋め込まれている

 

という構造が分かったんですね。

たまごのカラは
ミクロでみると
お城の石垣のように
凸凹してますから、
その隙間に
膜の繊維がからみついている。

 

そして、もっと拡大すると、
カラの微細なトゲが
釘のように、
まるで靴のスパイクのように
がっちり刺さる事で
卵殻膜のシートをつかんでいるわけです。

マクロとミクロで
お互いに入り込んで
カバーしあっている
すごい構造なんですね~。

 

◆人工靭帯なんかに応用できそう

これ、たとえば
人工的につくったヒザ関節とか
靭帯に応用できるかもしれないんです。

やわらかい繊維の人工靭帯と固い骨
アスリートの動きに耐えられる
しっかりしたものを目指すなら

 

固いたまご殻と
やわらかい膜が
お互いからんで
がっちりくっつく構造は
理想的ともいえます。

そして
固いもの&やわらかいもの
の組み合わせって
いろいろありますよね?

たとえば
歯と歯ぐきもそうですし、
車のコーティング塗装とか
コンタクトレンズとか
スマホのガラスコーティングとか

将来は卵殻と薄皮の応用で
世の中がさらにステキに
なるかもしれません。

 

◆たまご品質向上にも!?

そして、マギル大学の研究者さんたちは

たまごそのものの
品質向上になるかも

とも言っています。

そもそも
たまごの薄皮(卵殻膜)は
カラの強度を高め、
高度な防菌構造のため
にあります。

「殻と膜の界面が
丈夫で安全で健康な卵の
特徴だ、という発見から

この界面構造を
さらに強化する
遺伝子を育てていけば、

卵の生産者や養鶏業者の
破損ロスを減らすことが
できるかもしれません。」

とのこと。

たしかに
この観点での育種は
無かったかと思いますので、

「とても割れにくい卵」

「保存性が数倍伸びる卵」

みたいなものに
つながってくるかもしれません。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2024年02月27日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごと言えば新鮮…

というイメージはあるかと思います。

 

ですがその逆なのが、

時間をかけて美味しくする
発酵食品としてのたまご

これに、
すごくおもしろい魅力があります。

どれもちょっと変わった
食べ物になるんですね。

 

◆たまご発酵醤油

普通は小麦と大豆と麹で
作るのが醤油ですが、

なんと!
卵の白身と小麦
醤油ができるんです。

特徴としては、
味が濃いのに色が
すごく薄い・・!

あとほんのりと
たまごの風味がすること
でしょうか。

ふつうの醤油や味噌は
発酵の過程で黒褐色になる
メイラード反応が起こります。

たまご醤油の場合は
これが少ないんですね。

 

ちょっと面白いのは
その作り方でして、
醤油麹菌の発酵って
液体な卵の白身には
生やせないんです。

ですので、
たまご+小麦粉で固める

つまり、
いったんケーキを作って
砕き、そこに麹菌を生やして
発酵させてるんですね。

ケーキ→醤油

何年か前に京都女子大発の
ベンチャーから出まして

現在、たまご+大麦で
つくった卵醤油が市販されています。

超たまごづくしのメニューなんかも
おもしろいんじゃないでしょうか。

 

◆麹熟成卵黄

さっきの発酵醤油は
卵白に麹でできたものでしたが、
卵黄+麹発酵でも
かなり面白いものができます。

それが、麹熟成卵黄
キューピーさんが研究してまして
なんと黄身のうまみが5倍
香気成分は90倍に。

なかなかスゴイですね。

どちらかというと
競合がたまごじゃなくて
チーズなどになってくる
感じです。

まだ新しい食材ですので、
今後も何か面白い使い方が
ありそうです。

 

◆中国伝統の高級食材
「卵白粉」

最後は、
超レア食材「卵白粉」です。
発酵醸造学・小泉武夫氏の著書
「発酵食品礼賛」に出てきます。

『卵の卵白だけを発酵槽に入れ、
夏期で2から3日、秋期で4から5日
冬季で1から2週間、放置した状態
で空気中から進入した菌で発酵を行わせる。

(中略)この発酵した卵白を濾過した後、
乾燥させてから粉末にしたもの』

これがとてもきめ細かい
優良な粉となって、現在では
滋養剤や高級菓子なんかに使われて、
希少価値からなかなか手に入りにくい
ものになっているとのこと。

 

位置づけ的に
和三盆みたいなカンジですね。

発酵させるのは、
「卵殻膜や胚などを
発酵による泡とともに
浮遊させて除去し、
製品純度を上げるため」
とのことですが、
これ、めっちゃ大変なんですよ。

 

なにせ、生の卵白って
溶菌作用がありまして、
菌にめちゃくちゃ強いんですよ。

つまり、そんな簡単に
菌が生えたり発酵したり
しないんです。

上記の卵白発酵なんて
めっちゃ手間なんですね。

そこまでして、
上質の食材を作り上げるなんて
ホント感動します。


いかがでしたでしょうか。

そもそも卵の発酵食品を
そこまで見かけないのは、

「たまごが長期保存食だから」

なんですね。
意外と長もちするので、
発酵して保存する必要がなかった。

ですが、
「よりおいしくなる」
その目的で考えると
いろんな発酵が
新たな食材として
おもしろい可能性があるんです。

 

ちなみに
ピータンやたまごの糠漬けは
菌による分解が進むわけでは
ありませんので、
厳密に言うと発酵食品ではありません。

 

ぜひ、たまご繁盛メニューの
新たな選択肢として、
たまご発酵食品を活用して
くださいませ~。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2023年04月16日

ネットを見ていますと、

「欧州にいて
硬水に変わったので
ゆでたまごが
半熟になってしまった。」

とか、

「水の硬度が変わると卵が
うまく茹でられないな・・。」

なんて感想を述べている人が
ときどきいらっしゃいます。

実際のところ、
どうなんでしょうか?


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

お水には硬水と軟水が
あります。

ミネラルが多いのが硬水
少ないのが軟水、

日本は軟水が多い国です。

 

つまり水に入っている
成分が異なるのですが、

卵料理には、
たとえばゆで玉子など
茹でたときには

水の硬度は
影響するのでしょうか?

 

◆茹で加減には影響なし

ゆでたまごの固化
については基本的に

温度と時間のみ
で決まります。

カラの内部に
水の成分が影響をおよぼし

半熟や固ゆでまでの
時間が変わったり
ゆでた食感に影響することは
ありません。

 

たしかに
「理論的」には、
水中の塩分濃度差が高いと
凝固点上昇が起こり
加熱温度が上がります。

 

それにより
茹で加減が変わることは
あるかもですが、
基本的に水の硬度程度
わずかなミネラル量差では
ほぼ変化なしです。

 

ですので、
日本の水(軟水が多い)で
6分半かかってできる
ゆでたまごの硬さは、

硬度の違う欧州でも
6分半ゆでれば
同じ硬さです。

 

では、カラを剥いてから、

味付けに煮込んだ場合

はどうでしょう?

おでんとかポトフとか
煮玉子とか。

 

こちらも同じで、
硬水軟水によっての
変化はありません。

 

もちろん煮込み時のイオン濃度
塩分濃度で浸透圧差が変わり
ますから、味染みには影響します。

 

ただ、水の硬度と
味付けにつかうの塩分濃度は
大きな差があるため、
硬度のちがいによる
ミネラル差はわずかなもので
誤差の範囲となります。

 

◆割れに対する影響はあるかも・・・!?

ただし、

ゆでたまごの
割れ対策として、
多少効果がある
可能性があります。

茹でている最中に
ヒビが入ってしまうと
中身が出てくるのですが、

少し塩などを入れておく
漏れ出した白身がサッと
固まるため、それを防ぐ
効果があります。

 

硬度が高い場合も同様で、
ミネラルが多いと
白身と反応して固まりやすさが
少し変わってくる作用があり

割れ対策の意味では
硬水の方がわずかに
茹でる際に有利
となります。

 

「肉料理の煮込み」には
アクがとりやすい硬水が
相性が良かったり、

豆腐の食感や麺の食感などでは
「水のちがい」は
その差の影響が大きく出ます。

 

ですが、
ゆでたまごに関していうならば
あまり気にせずに
美味しい料理を
作っていただけますので
ご安心くださいませ。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2023年01月25日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

ブラインド無しで、
一瞬で遮光ガラスになる窓

がSNSで話題になっていました。

 


面白いですね~。

仕組みとしてはシンプルで
窓枠の片側にだけ微粒子粉体?が
収納されるようになっていて
ひっくり返すとそれが
砂時計のように2重ガラスの
間を満たすのだと思います。

なるほど。

ちょっとしたアイデアですね。

ガラス窓が一人二役
なるわけです。

ちなみに卵のカラも、
いくつもの役を兼ねています。

たとえば
内部と外気の『空調コントロール』

卵殻には気孔という微細な穴が
一万個ほど空いてまして、

産みたて後すぐから
内部の炭酸ガスを放出し
外部の空気をとりこみ
たまご内部のPHをコントロール
してくれます。

あとそのガス調整のついでに
『水分調整』もしています。

また、たまごのカラには
高度な『防菌機能』もあります。

卵殻は4層構造になっていて
一番外側のクチクラ層から
一番内部の内卵殻膜まで、

栄養たっぷりの卵の黄身を
外部の菌から守っているのですね。

このカラの防菌機能と
白身の溶菌機能がないと、
21日間という卵からヒヨコが生まれる
ふ化までの期間、
あったかい状態でたまごが
腐らずに耐えることは
できないんですね~。

ちなみに卵殻は
上質で均一な炭酸カルシウムで
できていまして昔から

化粧品や
絵の具の材料

カルシウム製剤や
焼成アルカリ製剤として

非常に性能が良いため
広く使われてきました。

上記はたまごカラで作った
絵の具で描いたものですが、
なかなかステキですよね。

また内部の卵殻膜
(薄皮のトコロです)は、

すごい保湿性や
肌への効果があるため

クラボウなんかがゴルフウェアの
高級繊維に活用したり、

キズのなおりを早くする
医薬向け製剤として活用されています。

意外な役立ちをしている
たまごの機能について
ご説明しました~。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2022年10月5日

ときどきお客様に、

「卵アレルギーでも食べられるたまごって無いの?」

とお問い合わせをいただきます。

 

結論から言うと、

「現状では存在しない」

ただし将来は可能性大いにあります。


こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

先日のブログ

ワクチン研究と卵の関係について

お話しました。

 

当初のウィルス・ワクチン研究に

鶏卵がとても役立ったこと

 

そして現在のワクチン培養に

鶏卵が大いに使われている、

そんなお話でした。

 

ただ…

1つ問題なのが卵アレルギー。

 

卵にアレルギー反応を示す人は

鶏卵で作ったワクチンを打てない

んですね。

 

今回のコロナ禍では、

アレルギー対策のメリットがあり

短期間で大量生成できる手法として、

 

『mRNAワクチン』と言う

ふつうの風邪ウィルスに

コロナウィルスの遺伝子を

組み込んでつくる方法も

用いられています。

 

ただ、

この手法はコロナ禍で

緊急的に用いられた生産方法なので

まだもう少し研究が必要でして、

 

鶏卵によるワクチン培養が

主であることは変わりありません。

 

そこで「医療用たまご」として

遺伝子改良などの技術を用いた

「卵アレルギーを発症しない鶏卵」

の開発が進んでいます。

 

◆アレルギーフリーの食用たまごが近い将来スーパーで買える!?

「健康な飼い方、良い飼料で育てたりで

なんとかならないの?」

 

なんて思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、それは不可能なんです。

 

アレルギー反応を示す

卵のタンパク質は、なんと

全たまご中の65%もあります。

 

6割強ものたんぱくが、

「自然で健康に育てる」

「飼料をこだわる」

なんて方法だけでは

別の性質に入れ替わったりは

しないんですね。

 

つまり、現状は

飼育の工夫だけでは

「アレルギーにならない卵」は

100%不可能です。

 

ですが、

新たな育種・新種の研究の中で

医療ワクチン用の鶏卵から

将来は食用の鶏卵へ、

アレルギーの方でも大丈夫な

たまごもできつつあります。

日本の大学でも研究がありますし、

オーストラリアのディーキン大学と

国立科学研究機構の共同研究など

国を挙げての研究も進んでおり、

じっさいに低刺激性の鶏卵が

試作段階ですが、生まれています。

 

まずは「ワクチン製造への利用」へ、

「医療用の特別な鶏卵」として世に出てきて

いずれスーパーに並ぶ日は

そう遠くないかもしれません。

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

(関連:どうして卵アレルギーになるの?それを防ぐには?【アレルギー最新話 その①】

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2022年05月3日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

ゴールデンウイークですね!

僕たちはニワトリさんと一緒に

変わらずの仕事ですが

 

同じ四国愛媛の道後温泉では

全ての旅館が満室、

道後温泉そのものは

朝からなんと6時間待ちとのこと。

 

コロナ禍も少しずつ落ち着き

世の中の賑わいが戻ってきつつある

そんな様子が見えて、期待ですね。

世の中がもとに戻りつつあるのは、

医療関係の方々の研究と

ご尽力のおかげですが、

その最初の一端には

「卵」が関係しているのをご存知でしょうか?

 

◆数十億人を救った、たまご製ワクチン

1931年の事です。

米国ヴァンダービルド大学の

アーネスト・ウィリアム・グッドパスチャー博士が

卵を使って、疫病の原因となる

「生きたウィルス」の純粋培養に成功したんです。

 

パンやクッキー、果物など

生物じゃない「栄養源」で

増えるのはカビ類ですが、

それと違ってウィルスって、

生きている物の中でしか

増えられないんですね。

 

しかもウィルスって、

生物から取り出しても

そのままだと、ほかの雑多な

ウィルスや菌と混ざっていて

 

特定のウィルスの性質が調べにくく、

ワクチンも増やせなかったのです。

 

それが、

鶏卵(有精卵)をつかうことで

単一の種類だけを純粋に、

大量に、培養ができるように

なったのです。

それまでは

ワクチンを作ろうと思ったら

豚に感染させてから

その抗体を肝臓から殺して取り出す

しかなかったのですね。

しかも数人分、ちょびっとだけ。

 

それが、

グッドパスチャー博士の

卵を使った培養方法だと、

 

一個のたまごから

1000人の子供を守れる量の

天然痘ワクチンが採れるように

なったのですね。

 

おかげで現在では天然痘は撲滅され、

麻疹、風疹、おたふく風邪など

今もこの鶏卵培養で作られたワクチンが

多くの人を救っています。

 

2009年の新型インフルエンザ発生時

世界に流通したワクチンの大部分も

ニューヨーク医科大学で培養された

30個のたまごが元になっているんです。

 

◆さらに進化!たまご製ワクチン

ちなみに、

「どうせつくるならでっかい卵

ダチョウたまごの方が

もっと効率いいんじゃないの!?」

という研究も進んでいます。

 

ダチョウ卵だと、

一個でワクチンが数十倍採れますから。

京都大学の塚本康浩学長がその第一人者ですね。

さらに大量に急ピッチ生産できる

 

今回のコロナウィルスには、

mRNAワクチン方式という

鶏卵培養ではない新ワクチンが登場しました。

急ごしらえの技術で不安視する声もありましたが、

今のところ成果は大きいようです。

 

これらの新技術にも、

ウィルス理解の礎となった

鶏卵の存在が大いに貢献しています。

 

正常な世の中まであと一歩。

楽しみに、油断せずに

世の中を活性化していきましょうね~。

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2022年05月2日