小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

いちおしメニューは少しでも出数を増やしたいですよね?

そんなときのちょっとしたコツとして「食感・オノマトペを書く」というものがあります。

日本は『食感の国』なんです。

サクサク

もちもち

ぱりぱり

“食感”を表す語彙の数が、他国と比べて圧倒的に多いのです。

雪と共に生活するエスキモーの言葉には『雪』を表す単語が数十語もあるそうですが、同じように日本人は『食感』を大事にしてきたとも言えます。

実際、日本人の食感に対する許容性は相当広いものがありまして、例えばこんにゃくカマボコの食感。弾力と歯ごたえが好きな方は多いかと思います。

ですが、海外では「ゴムみたい…。」とさっぱりウケません。

でも弾力を減らして食感を変えたカニカマボコは欧州で「20世紀最大の食の発明!」とまで言われる大ヒットとなっています。面白いですね。あとネバネバ食感も、世界的には好きな方はごく少数派だとか。

 

〇オノマトペというだけで好印象!?

加えて、「オノマトペ」。(もぐもぐとかヨチヨチとかニコニコとかツルツルとか擬音語・擬態語のこと)

語彙の研究によると、食に限らず、どの国でも、オノマトペは9割以上が肯定文なんだそうで、もしかすると否定する文章があまり無い事も、『ポジティブな表現』として印象良く受け止められやすいのかもしれません。

ですので、

「ふわとろオムレツ」

「しっとりロールケーキ」

「ほくほくゆでたまご」

「なめらかふわり!玉子サンドイッチ」

みたいなカンジで、なんでも良いので『食感』をイメージしやすい言葉を加えることで注文数が増える、例えばオムライスでは販売数が17%増加したとのデータもあります。

「わくわく」などの雰囲気ワードとか、「香りスッキリ!」みたいな匂いイメージなんかも良さそうですが、『食感』のキーワードがさらに影響大きいようです。

中部大学の小川教授は、「食感は美味しさの6割を占める」と述べています。

本能的にお客様もそれを感じながら美味しさを求めているのかもしれません。

ちなみに、一般的な傾向として、景気の良い時は強い音素、景気の悪い時は柔らかい音感が好まれるというデータもあるようです。

好景気→「バリバリ」「お肉ゴロゴロ」

不景気→「ほろほろ」「ふんわり」みたいなカンジですね。

なんにせよ、一言加えるだけで、美味しさ魅力が上がりオーダー数が増えるなら、ぜひやってみる価値があるのではないでしょうか。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:新食感事典・西成勝好)

カテゴリー | ソムリエ日記 , 飲食店さまへ 2020年09月17日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

スペインのバスク地方というところに、面白い竜の伝説があります。


ある山に、恐ろしい竜が住んでいました。

頭が7つ、体は大蛇のように長く恐ろしい風体で、夜ごとに美しい娘を食べに村にやってくる。

今宵も生贄に選ばれた娘が、洞窟の前に座らされました。

ところが、今度ばかりは!とある若者が立ち上がったのです。

装備を整えて、娘を食べにやってくる竜を待ち構えた。

果たしてやってきた7つ首の竜に若者が切りかかり、戦いが始まりました。

若者もかなりの手練れで、竜とすさまじい戦いを繰り広げます。

と、戦いの合間に若者が、

「ああちくしょう、もし今、一杯のワインと、この娘さんの麗しいキスがあれば、お前なんかすぐやっつけてやるのになぁ…!」

と竜に向かって叫びました。なかなかキザですねェ。

すると、竜が答えたのです。

「ウワハハ!!そんなものでワシを倒せはせんぞ!!ワシに勝てるのは、この額に卵をぶつけられる者だけだッ!!」

そのやりとりを横で聞いていた娘は、サッと村へ取って返し、卵を持って帰ってきました。

「卵よ!」と、若者にその卵を渡し、共に投げつけたところ、

竜の額に当たって、アッサリ竜は死んでしまったのです。

めでたしめでたし。


ええ……!?

そんなので良いの…!?

……とは思いますが、実は「卵が竜を倒す武器」なのは“竜の伝説”としてはわりと良くある『定番』なんだそうです。

謎のおばあさんからもらった卵だったり

たまごに呪いをかけて武器(?)にしたり

黄身の無い特別な卵だったり

似たお話が各地にあって、西洋の人からするとそこまで奇異なストーリーではないのだとか。

うーん…、日本で「山んばをとんちで退治する」話にいろんな地方バリエーションがあるような感覚でしょうか。

 

〇たまご=聖なるものという古い信仰

キリスト教以前の信仰でもあるのですが、「たまご=聖なるもの」という考え方はヨーロッパでも広く見られます。その一部が残り、イースターエッグや断食明けの卵投げなどのお祭りと結びついているんです。

卵に対する敬愛する空気感といいますか、日本で言うタイをお祝いイメージでとらえたり、中国で桃が聖なるものとして見られたりするポジティブなイメージが卵に見られていて、たまご屋としてはなんだかうれしいですね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2020年09月10日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

日本食品標準成分表というものをご存知でしょうか?

文部科学省が調査して公表している「日常的な食品の成分に関するデータ」のことです。

食品にたずさわる人なら、まず知らない人はいません。

調理師さんがカロリー計算をして献立を考える際の指標にしたり食品開発者が商品表示の計算に利用したり、いろんな使い方がされています。

この食品成分表「鶏卵」の項目で少し前に問題が起こったのです。

数年ごとに検査しなおして数字を改定するのですが、昨年(2019年)12月に5年ぶりの改訂がありまして、

なんと!「たまご」の栄養量が大幅にアップされたのです。

ビタミンDの量がいままでの約3倍、(100g中1.8㎍→5.2㎍)

ビタミンEは約5倍の数字に変更されたのです。(1.0㎎→5.1㎎)

かなり思い切った変更ですね~。

でも、それってなにが“問題”なのでしょう……?

 

〇健康こだわり卵が苦戦する…!?

実はこれ、鶏卵商品の「差別化表記」にかかわってくるのです。

たとえば、『この卵はビタミンEが通常卵の3倍です!』なんて商品を目にしたことありませんでしょうか?

“通常の卵”の栄養素の量が増えるということは、そういった表記が変わるということです。

『3倍含まれます!』が →例えば『1.1倍です!』とかになっちゃう。

これだとちょっとパンチ弱いですよね…

〇きっかけは選択ミス!?大幅変更の原因は

実は、大きく数値が変わったのには理由があります。

それは、検査するサンプルの一部に“栄養強化卵”を選んでしまったからです。

「栄養強化卵」とは、特別な飼料を食べさせることで、通常の卵よりも特定のビタミン等が多いたまごのこと。

そんな『栄養の多いたまご』を検査のサンプリングで選んでしまったため、今までの分析値と異なってしまったのです。

高校生の平均体力を調べようと思って、うっかり国体強化選手や甲子園球児を連れてきちゃった、みたいなカンジですね。

このことは文部科学省担当部署も認めていまして、

検査した数値そのものは訂正しないのですが、『※今回の調査試料には特殊な栄養強化飼料を給与した鶏卵を含むため~(中略)~通常の鶏卵の情報は本報告で更新される前の成分表2015年版(七訂)を参照のこと。』

……と注釈が入る事となりました。

〇そもそも今回のトラブルが起こった背景は……

さてこの件、

個人的には、

調査のヒトが間違っちゃうくらい店頭にたくさんの種類の“栄養の多いたまご”が並んでいる……ということが背景にあるんじゃないかと思っています。

現在、たまご業界は寡占化に向かっていまして、

大規模化、大企業への集約が進んでいます。

なので小さな農場はこだわりを打ち出し、

味や健康などいろんな差別化を試みているのが現状です。

寡占化の反動として多様化が進み、

栄養成分も、味も、以前よりばらつきがあると言えます。

今どきは売り場で10種を超えるたまごが並ぶのも珍しくありませんが、

例えばその内7種がこだわり卵で栄養成分が高いたまご…なんて事もあります。

「普通のたまご」を選ぼうと思ったら、栄養強化しているたまごだった…ということも、以前よりずっと起こりやすくなっていると言えます。

この「多様化」と「標準レベルの向上」という状況は、

僕たち卵屋にとってはライバルの多さとも言えますが、

卵好きにはワクワクする状況、そしてお客様にとっては喜ばしい事とも言えます。

 

余談ですが、

業界の変化による大きな成分値変更は、他の食材でも起こっています。

たとえば「ひじき」。

2015年の改定で鉄分の含有量が9分の1になりました。(100g当り55mg→6.2mg)

今回の卵の場合と逆ですね。

これは、昔ながらの鉄鍋で煮込んでいた工程から、今はほとんどがステンレス鍋を使った企業中心へと業界が変わってしまったから。

 

〇栄養だけなのか…?「良いたまご」とは何なのか?

では今後、僕たち卵屋がもっと差別化を計ろうと思ったら、もっともっと栄養強化した育て方をすべきなのでしょうか?

僕は、そうは思いません。

卵はそのままでも栄養たっぷり。『完全栄養食』とも言われ、そもそも体に必要なアミノ酸など栄養成分がピッタリの量で入っています。

身近な食材である「たまご」でより多く栄養が摂れるのは素晴らしいことですが、

あまりに栄養強化でインフレが起こるのは、もともとの「卵」のすばらしさを否定する事にもなってしまいます。

また、飼料としてたくさん食べさせた特別な栄養成分のうち、ほんの一部だけが卵の栄養として入る…。

ステキなことですが、なんだかちょっともったいない気もします。

「メニューになったときにどうワクワクしてもらえるか」という観点であれば、栄養成分以外にもいろんな価値があります。味や育て方、他にも伝えなくてはいけない価値は沢山あります。

今回のトラブル込みの改定も、もしかすると、卵の価値の在り方を皆で考え直すきっかけになるのかもしれません。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2020年09月4日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

今回は小ネタ、です。

「ゆでたまごを作るには、まず常温に戻してから。」

……これはキレイに茹でるコツで、

どの料理本にも書いてあります。僕も言ってます。

でも……これって意外と面倒なんですよね~。

常温(室温)に戻そうと思うと、

冷蔵庫から出して10分くらいはかかっちゃうんですね。

早めに準備しておけば良いだけなんですが、

ゆで玉子って、茹でた後になにがしかの調理をする事が多いわけですし、なるたけさっさと作ってしまいたい。

そこで、ですね。この10分を一気に短くするシンプルな方法があります。

それは……

冷蔵庫から出して、卵を水道水に漬ける

これだけで、冷蔵庫冷え冷えだった卵が2分で常温になります。

これは、空気よりも水の方が圧倒的に熱伝導率が良いからなんですね。

水 ⇔ 卵 の間でどんどん熱交換がおこって、早く温度が戻るのです。

後は、その水で茹でてしまえば無駄になりません。

コレもともとは冷凍品のすばやい解凍方法なのですが、

試しにたまごでやってみたらかなりいいカンジでした♪

さらに急ぐなら、

チョロチョロで良いので冷えた卵を流水に漬けておくと、もっと早いです。

なーんだ。と言われそうですが、意外と盲点なので一度お試ししてみてくださいませ~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:「マツコの知らない世界」でご紹介した『究極のゆでたまご』作り方_たまごのソムリエ面白コラム

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

歌舞伎の小道具に「卵紅(たまごべに)」というものがあるのをご存知でしょうか!?

卵の殻のてっぺんに丸く穴をあけ、中身を出したあとで赤紅を溶いた液を詰め紙で封をします。

役者が切られたり吐血するシーンで、この卵を潰すと流血する。これが「卵紅」です。

そう、いわゆる「血のり」ですね。

携帯性が良くていざというときにクシャッと壊しやすい。

歌舞伎の発展した江戸時代で考えてみても、たしかに卵殻のほかにそんな便利な容器って思い当たりません。卵の殻はなかなか優秀な特殊容器なんです。

そういえば、忍者粉末を卵殻に詰め、いざという時に投げる煙幕玉を作っていた……というようなことをどこかで聞いたことがあります。

ただ……よく考えてみたら激しく動く前提の忍者が持ち歩くのには、卵のカラでは強度不足な気もします。

もしかすると、「歌舞伎の卵紅」からヒントを得た後世の創作なのかもしれません。

〇有名シーンのお約束、卵紅

この卵紅を使用するシーン、

例えば歌舞伎演目「仮名手本忠臣蔵」でも最も人気の高い五段目『鉄砲渡しの場』があります。赤穂浪士の一人・勘平がうっかり鉄砲で人を撃ち殺すシーンがありまして、そこで卵紅が使われているんです。

この演目、略称で「血吐き」なんて言われたりもするそうで、それくらい卵紅の重要度が高いシーンなのです。

ちなみに、鉄砲を撃つまでの細やかなしぐさやタイミングが結構難しいらしく、その大変さを笑い種にした落語まであります。

『素人芝居』という落語で、

素人芝居でこの『鉄砲渡しの場』をやったものの鉄砲の音がどうしても鳴らず、でも撃たれ役は卵紅を口に含んでガブっといっちゃってるので血はダラダラ…困ったあげくに「今日は吐血で死ぬんだ」と説明してバッタリ、というオチの噺です。

こんなパロディがでるくらい一般的だったということですね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , 面白たまご話 2020年08月25日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごの故事ことわざ・第63弾、今回は中国から。

<二卵弃干城>(二卵を以て干城の将を捨つ)

「卵2個で将軍を捨てちゃう」→「小さな欠点にこだわって大事なものを逃がす」という意味です。


昔々、中国の春秋戦国時代のお話です。

衛という国に、孔子の孫・子思(しし)さんという方が住んでいました。

ある時、ししサンが王様に「苟変(こうへん)という者がおりまして、大変優秀です。ぜひ干城(将軍)に採り立てるべきです。」と提案したんですね。

ところがそれを聞いた王様、

「ふ~む…!?そのコウヘンとやらは、税の徴収の際に卵2個ずつをちょろまかしていたと聞いたぞ。そんなヤツを重要な職につけるなんてダメじゃろう。」

との返答。過去にセコい着服をしていた人物のようです。うーん、

すると子思さんは、

「何をおっしゃるんですか。立派な大木だって、小さく朽ちてる所は何か所かあります。でも優れた大工ならそんな所があったってちゃんと大木を活かしますよ。たった2個の卵で、大将軍を捨てるおつもりですか?」

と返したそうです。

つまり、欠点に目をつぶって長所をちゃんと見ましょうよ、というお話ですね。


『欠けたドーナツ理論』と申しまして、

まん丸なドーナツの一部が欠けていると、残りのほとんどは欠けてないのに、とにかく欠けた部分ばかりに目が行ってしまうんです。

人間も、ステキで立派な長所がたくさんあるのに、とかく欠点ばかりに目がいきがちなんですね。

皆さんもそんな経験ありませんでしょうか?

つい欠点が気になる、そういう一面がある以上、

意識して「良い面」を見るように訓練していかないといけませんよね。

二卵を以て干城の将を捨つ』は、人間は誰でも長所半分・短所半分である、短所は無くならないんだから長所を見て伸ばしていきましょう。そんなことを教えてくれる故事成語です。

 

〇たまご2個はちっちゃなこと……!?

このお話の時代はだいたい2500年くらい前なのですが、その頃に卵が世に普及していて卵2個が「小さな横領」として出てきているという事に、卵屋としては注目したいです。

中国から鶏が日本に伝わってきたのもだいたい2500年前のその頃で、またローマでも卵を沢山産むように鶏が品種改良され始めたのが同じ時期なんです。世界的に鶏卵が広がりつつあった時期なんですね。

貴重品から「割と身近な食材」へ、そんな過渡期のエピソードとしてのこの故事成語「二卵弃干城」、なかなか興味深いです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2020年08月12日