小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごと偉人のエピソード第17弾です。

今回は永遠の大スター、ポールサイモンさん。

僕たちより上の世代では、

「サイモン&ガーファンクル」

としても有名な米国の歌手です。

ボクも大ッ好きな方で、史上最多13ものグラミー賞を受賞、タイム誌「世界で最も影響力のある100人」にミュージシャンとして唯一選ばれる(2006年)くらいのスゴイ方。

彼の代表曲に

「母と子の再会(Mother and Child Reunion)」

という歌があるのですが(※日本でのリリース時には「母と子の絆」と訳されています)、

この歌にちょっと興味深いエピソードがあります。

NYチャイナタウン

ある日、サイモンさんは中華料理店に入り昼食を摂りました。

さて、何を食べようか…

と開いたメニューから目に入ってきたのが

「母と子の再会」

という料理でした。

これを見た瞬間サイモン氏は強いインスピレーションを得たと、後々語っています。

料理から名曲ができる…なかなかステキなお話です。

この、

「母と子の再会」なる料理。

コレ日本で言う「親子丼」のことなんですね。

つまり、鶏肉と卵の料理。

“親子”

すなわち“母と子”が「ふたたび」出会って、

美味しい料理になっている。

その事にサイモンさんは衝撃を受けたわけです。

「それってあんまりカワイソウじゃん・・・!」

と思ったのか、「ステキな再会・・・!」と思ったのかは分かりませんが、

歌詞の

『こんな奇妙で悲しみに沈んだ日なのに、母と子は再会した』

…というフレーズを見る限り、どうやら「食べられる直前の短い再会」、という“皮肉な運命”に対しての悲しみのある驚きだったようです^^;

卵消費量世界第3位の国・日本に住む私としては、

「そんなに驚く組み合わせかなぁ・・・?」

と思わないでも無いですが、

実は

サイモンさんにとって、

「卵と鶏肉」の組み合わせは

「食べようと考えてはいけないメニュー」だったかもしれないんです。

 

◆ユダヤ教では親子丼は超NG!
ポール・サイモンさんはユダヤ系アメリカ人。

そして、

ユダヤ人にとって「親子丼」はタブー料理なんです。

ユダヤ教の戒律には

「子ヤギの肉を、その母の乳で煮てはならない」

と記されています。

お母さんと子供を一緒に料理するなんてかわいそう!ダメダメ!

…という考えのようです。

同じ理屈で、

チーズバーガーもアウト。牛肉と乳製品ですから。

クリームシチューにお肉を入れると、これもアウトです。

鮭イクラ丼なんてのも、もちろんダメ。

イスラエルでは「胃の中で一緒になるとダメだから。」という理由で、肉料理のコースではデザートにアイスクリームなど乳製品を用いない、なんてレストランも少なくないのだとか。

うーん、厳しい!

もしかすると、サイモンさんは幼少から、あまり親子丼の食材組み合わせに触れてこなかったのかもしれませんね。

そして、サイモンさんは親子丼との衝撃的出会いの少し前に、長年連れ添った愛犬ペギーを亡くしています。

「身近に起こった愛する者の、初めての死だったんだ。その喪失感と“母子の再会”料理の衝撃が繋がって、この曲ができたんだ。」

との事で、色々な出会いと別れ、死生観がこの名曲を形作ったんですね。そう思ってこの歌詞を聞いてみると、なかなか興味深いです。 良い曲ですので、ぜひちょっと聞いてみてください↓

◆革新し続けることの素晴らしさ・・・!
ポール・サイモンさんの初アルバムリリースは1965年最新アルバムは去年。なんと50年以上に渡り、自分の築いたスタイルを崩しレゲエやエレクトロミュージック・アフリカ民族音楽など、様々な音楽を次々取り入れ新境地を開拓し続けているんですね。

親子丼の歴史は、およそ百年。

伝統ありながら、こちらも生たまごの黄身を添えたり、ふんわり泡立てたり、まだまだ新技法とレシピが考案され続けています。

僕達も、いろんな出会いやご縁を活かし、よい食づくりに励まないといけませんねー。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:海外ではタブー!?親子丼の謎 – たまごのソムリエ面白コラム

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「オーヴォから始めませんか?」

…と突然ナゾの言葉を言われ、大変あせった。

ロシア語通訳であり著名なエッセイスト米原万理さんの

国際会議中・同時通訳時のエピソードです。

「オーヴォ」とは「OVO」、

ラテン語で「たまご」の事。

そして、

古代ローマ時代のことわざに、

「たまごからリンゴまで」(ab ovo usque ad mala)という言葉があります。

意味は「最初から最後まで」。

つまり、

『たまご=はじまり』

という意味合いがあったんですね。

冒頭のナゾの言葉は、

「いったん“最初の議論”に戻りませんか?」

という意味だったわけです。

日本で言うならば

“源氏物語の一節”を引き合いにだすようなイメージでしょうか。

欧米では、自国の言葉以外に、「ラテン語」の古典から言葉や格言を引用することが「教養の証」であったりもするようで、今回の件はそれが「たまご」すなわち「オーヴォ」だったわけです。 そりゃいきなりは意味が分からないですよねェ…。

ちなみこの「OVO」、スペルもなんとなく卵っぽくってなんだか好きなんです。たまごの見た目からできた漢字の「卵」と同じで、“象形文字”に近い成立の仕方をしたのかもしれませんね。

 

◆たまごは食前ドリンクだった!

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ちなみに、なぜ「たまご」が始まりを意味するのかというと、

「生まれる」、つまり「生命の始まり」ということ以外に、

ギリシャ・ローマ時代の食文化では、食事の始まり前に生卵をそのまま一気飲みするのが通例だったからなんです。

つまり、

「食べる前に飲む!」

みたいなカンジで、卵は体を労わる「食前ドリンク」だったわけです。

実際たまごにはアミノ酸やレシチン含め、肝臓に良い成分がたっぷりはいっていますので、確かに飲み会前に食べると悪酔いを防ぐ効果があります。

ずいぶん涼しくなりましたが、

ビールで一杯、

という時にはつまみは「オーヴォ」の『出し巻き玉子』などから始めてみてはいかがでしょうか!?

あとリンゴが「最後」の象徴なのは、アダムとイブが食べちゃったことでエデンを追われた、楽園「最後の食べ物」だからのようです。 こちらは残念ながら健康面でのお話ではなさそうです^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:「魔女の一ダース」新潮文庫・米原万理)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2017年09月5日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごの都市伝説をご紹介するシリーズ第6弾です。

ピンク色が素敵なフラミンゴ。

動物園でも人気の鳥さんです。

卵はいったいどんな色なのでしょうか!?

昨年、米国中心にSNSで紹介され、話題となっていたのが「フラミンゴのたまご」。

こんな写真が出回っていたのですが…

「『楽しい事実』 フラミンゴの卵黄は明るいピンク色。写真を見てみて!」

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こんなカンジで色んなサイトで紹介され話題になりました。

「卵がピンク」…ってカラのことじゃなくって「黄身」の色ですか(笑)

結論から言うと、これはフェイクです。

フラミンゴの卵黄は「淡い黄色」です。

卵の黄身の色は、たしかに食べたものによって左右されます。

トウモロコシ成分が多いとやや黄色い黄身になり、お米をたっぷり食べると白っぽい黄身になります。

フラミンゴが良く食べるエビや藻は「カロチノイド」と呼ばれる赤い色素を含むため、その色素がたまごの黄身に影響することは、たしかに考えられます。

ですが、せいぜい「やや赤っぽい黄色」の黄身になるくらいで、写真のようなショッキングピンクになることはゼッタイありません。

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ちなみに、フラミンゴの羽の色がピンクなのも、食べた「エビの色素」によるものです。動物園などでフツーのエサを食べていると、だんだんと色が抜けて白っぽくなってしまうのだそうです。

対して鶏さんの赤い羽根は、もともと持つ固有の「種」としての羽色でして、食べたものには影響されません。何を食べても赤ニワトリの羽は「赤」なんですね。白い鶏さんも白いままです^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

関連:【世界のたまごアート】色彩感覚抜群のたまごにビックリ! – たまごのソムリエ面白コラム

関連:たまごの都市伝説に関する記事一覧 - たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , 食べ物ジョーク・おもしろ 2017年08月31日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

昨日までのアグリフードExpo、当社ブースにお越しくださいまして、本当にありがとうございました! 貴重なご縁に感謝です^^

さて、たまご鶏のことわざシリーズついに第55弾!今回は米国から。

<“好機”は卵のように、新鮮なうちに孵化させないといけない>(Opportunities, like eggs, must be hatched when are fresh)

日本語で言うと「鉄は熱いうちに打て」でしょうか。

以前、似た言い回しの米国ことわざをご紹介しましたが↓、

上記の方が古いようです。

<“好機”は卵のように、ひとつずつやってくる>(Opportunities, like eggs, come one at a time)

良いタイミング、勝負どころ、チャンス、好機…

人生のこんな瞬間はぐずぐずしていると、すぐに腐っちゃう。

行動こそ真実、

サッと取り組む姿勢がとっても大切です。

そして、頑張って頑張って、

それでもうまくいかなかった場合は・・・、

次の好機・たまごを待って、

また全力を尽くせばいいんですね^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:チャンスを逃さない生き方って・・・?【ニワトリのことわざ】 – たまごのソムリエコラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2017年08月25日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

2週間ほど更新が止まっておりました。

さて、明日から東京ビッグサイトで開催の「アグリフードExpo」に出展いたします!

「国産食材」を専門に扱う最大の展示会です。

初参加ですので、どんな反応、どんなワクワクのご縁があるのかと思うと、とっても楽しみです。

お越し際は、ぜひお立ち寄りになってくださいませ!

日時:8月23日(水)-24日(金)(23日10:00-17:00、24日10:00-16:00)
場所:東京ビッグサイト 東6ホール(小間番号E-07)

日時:8月23日(水)-24日(金)(23日10:00-17:00、24日10:00-16:00)

場所:東京ビッグサイト 東6ホール(小間番号E-07)

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カテゴリー | ソムリエ日記 , ちょっとつぶやき 2017年08月22日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

夏限定!たまご・鶏さんのちょっと怖い伝説、第5弾です。

今昔物語9巻に載っているお話。

中国の昔、

北周という国の第3代皇帝、武帝という方がおりました。

この方、とっても鶏卵が大好きで、毎食大量のたまごを食べていました。

さて、武帝が死んだのち、

彼は卵を食べた“殺生”の咎で地獄へ落ち、

責めを受けました。

『極卒の牛頭が鉄の床に伏せた武帝を両側からギュウギュウ押す。

すると武帝の両脇が裂けそこから血の代わりにたくさんの「たまご」が出て来て武帝の体のそばに積み重なった。』

のだそうです。

うーん、これは怖い…!

…のかなぁ…!?

まぁちょっとシュールな光景であることは確かですね。

これは「今まで食べてきたたまごが体から押し出される」、という責め苦でしょうか?

私は卵屋ですから、毎日たまごをたくさん食べ続けているんですよね。

うーむ。

地獄で責められたら沢山たまごが出そうだなぁ。

息子はカマンベールチーズが大好物なんですが、死んだらチーズが出るのかな…^^;

◆仏教からの復讐…!?
さて、以前も書きましたが、そもそも仏教では「たまごを食べる」ことは殺生として禁じられていたんですね。

日本でも、平安時代に書かれた仏教伝来のための書「日本霊異記」や鎌倉時代のエピソード集「沙石集」で、卵や魚を食べてバチがあたる人の逸話が書かれています。

(関連:【納涼】たまご・にわとりの怖い伝説 その2 – たまごのソムリエコラム

(関連:【納涼】たまご・にわとりのちょっと怖い伝説 その1 – たまごのソムリエコラム

じっさい、日本では仏教伝来後の平安時代から、欧州文化が入ってくる1600年代まで、800年近くのあいだ、卵を食べる文化がピタッと無くなっちゃっていました。

そして、この武帝さん、仏教的にはめっちゃ恨みを買っている方でもあります。

じつは、中国に仏教が伝来してから、国家権力を大動員して仏教迫害をした4人の皇帝の一人なんですね。

文武百官を集め「道教・仏教・儒教」3教の優劣を論じさせ、仏教と道教を廃止させた、という『宗教生き残りバトル(?)』をやったエピソードが有名です(周武の法難・574年)

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「武帝さんが地獄に落ちて責め苦を受ける」というお話は、後の仏教徒が「あのヤロウめ!」…という感覚でもって語り継いだんじゃないかと思います。

してみると上の「たまご伝説」は、

「卵を食べたから罰せられた。」じゃなくって、

「武帝さんが罰せられることありき」で卵がその恰好の理由に選ばれたようにも感じますねー。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。