小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまご・鶏のことわざ 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

世界のたまご鶏ことわざ 第79弾

今回はドイツから。

 

<『卵は卵だ』と言ったが、
小役人はガチョウの卵を取った>

“An egg is an egg,” said the beadle, but he took the goose-egg.

ヘンなことわざですが、ようは
「同じだよ~。」と言いながら
よりトクするものを持っていく
ずるい行動のことです。

 

いますよね~。
イベントの準備なんかで
「みんなで分担ね♪」
なんて言って、
いちばんラクな役割りを
しっかり先に取ったり…。

 

こばやしは子供の頃、
法事でもらったお菓子を
子供たちで分ける際

「ぼくがやるね!」
なんて言って、
一番人気のチョコパイを
自分に4つ取って、
怒られたことがあります。

「数は合ってるじゃん・・!」

なんて抗弁しましたが、
まさに小役人のガチョウ卵ですね。


 

このことわざは前提として、

「ガチョウの卵は鶏卵
よりも価値が高かった」

…という事が分かってないと
なんじゃこりゃ?と
なっちゃいます。

 

ガチョウのたまごは
鶏卵より2.5倍も大きく
味は濃厚でクリーミー、
年間に産む量は鶏卵よりも
少なく希少なんです。

黄身の割合も多くて
好きな人も多いんですよね。
今でも高級品としての位置づけに
なってます。

 

以前ご紹介したことわざで

『ガチョウの卵をもらうために鶏の卵を屋敷に持って行く』

というのがありますが、
これも「エビで鯛を釣る」
つまりより高価な
「ガチョウのたまご」に
替えてもらおう、という
意味なんです。

 

ちなみにこのことわざの
小役人(ビードル)とは
教会で案内や宗教的行事の
補助をする人のことで、
『偉い人の使いっ走り』
的なイメージもあります。

英国だと“学生代表としての補佐役”
みたいな立派イメージがあるそうですが

このことわざでは
スネ夫的なイメージでしょうか!?

 

なんにせよ、
目先の小さなトクを得ようと
考えちゃうよりも、

自他の心で
多くの人のハッピーを
目指す方が、

結果として信頼され
得られるものも多いわけです。

 

企業も同じですよね~。

たとえば老健施設で
必ず地元町内からしか
仕入れをしないグループが
ありますが、
仕入れコストは合い見積もり
より高くなっても、

地元の信頼が増える方が
メリットになっているわけです。

 

社会貢献を第一にして
結果として繁盛する。
先義後利を
自分でも心に銘じてまいります。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2023年04月18日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごのことわざシリーズ第78弾
今回はドイツのことわざです。

<サラダを飲むのは1ダカット分の医者、
卵を飲むのは2ダカット分の医者>

“Drink upon salad costs the doctor a ducat; drink upon eggs costs him two.”

 

「ダカット」は中世の金貨一枚のこと。

つまり

『毎日サラダと卵を食べれば
高額の医者代がいらなくなる、
健康になるよね!』

・・・ということわざです。

 

たしかに・・!

野菜は食べるべきだ。健康に良い」
これはみなさん「そりゃそうだ。」
というイメージをお持ちでしょうが、

「たまごを毎日食べるのは
野菜の2倍!
カラダに良いんですよ~。」

・・・といわれてるのは
たまご屋として
すっごく興味深い
ことわざです。

 

じっさい、
中世ヨーロッパでは

たまごが薬として
の位置づけ

だったこともあります。

そこから
お酒と卵を合わせた
栄養ドリンクになって
「カクテル」が生まれた、
という説もあるくらい。

 

あと、このことわざ
面白いなあと思うのが

健康の大事さを
「お金のコスト」で
表現している点。

 

ふだんの生活スタイルで

『じつはこれだけ
コストがかかるんだよ。』

・・・と言われるのって
なかなか攻撃力ありますよね。

 

たとえば
「減塩しましょう。」
なんて言われるよりも、

「塩ひとつまみ減らすと
生涯医療費が
200万円減るよ。」

・・・なんて言われた方が
インパクトあって
生活態度変えたくなりますよね。

 

そういえば
むかし見学させていただいた
ある食品工場さんでは
設備機械に『外車の写真』
貼ってありました。

「よく台車でぶつけるんで、
大事に扱ってくれ、って
つもりで貼ってあるんだ。」

とのことで、

「これはメルセデス・ベンツ
Sクラスと同じ価格の機械」

「これはフェラーリ296GTBと
おなじ価格」

「これはレクサスLSとおなじ」

 

・・・なんて分かるわけです。
じつは食品工場って
高価な機械が
ゴロゴロありまして、

高級車として意識すると
たしかに扱いに背筋が伸びますね(笑)

 

コスト視覚化のインパクトって
すごいです。

 

あなたのお店のメニューでも、
もしかすると「お値打ち」
「リピートイチオシ」の

イメージ視覚化

がウケるかもしれませんね!?

 

あ、あと
このことわざは本当で、
じっさいのところ

卵を食べると健康寿命
が伸び、
薬並みに効くことが
証明されています。

医療費コストを
下げるなら、
毎日の卵です。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2023年03月18日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご鶏のことわざ第77弾
今回は英語圏からです。

<野生のガンは飼いならされた卵を産まない>
“a wild goose never laid a tame egg”

『次の世代には親やご先祖の気質が
遺伝しているよね。』
という意味のことわざです。

日本語で言うなら、
「カエルの子はカエル」でしょうか。

ただし、
日本のカエルよりも
ニュアンスが攻撃的です。

ガンは英語でワイルドグース
つまり“野生のガチョウ”ですが、
これ「傭兵」の意味もあるんです。

対して
「飼いならされた」の部分
「テイム(tame)」は
『従順で無気力でおとなしい』
みたいな意味。

ですので、たとえば
・範馬勇次郎に育てられたら軟弱にはならない
・テロ国家が変わるわけないだろう
みたいなちょっとマッチョ思想な
バトル的・物騒なことわざなんですね。

英語圏辞書をみても、

“A wild goose never laid a tame egg, so come on—we have to impose sanctions on that nation!”
“ガンは決して飼いならされた卵を産まない―ならば、さあ、あの国に制裁を加えるべきだ!”

“ ​We must never presume that humanity will be without violence; after all, a wild goose never laid a tame egg.”
“人類に暴力が無くなるなどと決して思ってはいけない。なにしろ、野生のガンが飼いならされた卵を産むことはないのだから。”

なんて物騒な用例が書いてあったりします。

なかなか面白いですね~。
カエルとはえらい違いです。

ただ、考えてみると
遺伝子的にはティラノサウルスは
数億年を経た進化の果てで
ニワトリに変わったわけですし、

千年の育種を経て鶏卵は
美味しい味のものが
ほぼ毎日生まれるよう、
品種が変わっています。

みごとに『飼いならされた』
たまごだと言えます。

商売でも、
2代、3代と続く中で、
創業の気風を残して継いでいくのも
もちろん大事ですが、

変化対応する中で
飼いならされた卵となる
ように柔軟に変化することも
必要なんじゃないでしょうか。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2023年02月24日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
たまごの名言シリーズです。

『たぶん、世界で一番プライベートなもののひとつは、割る前のたまごである』(M.F.K.フィッシャー)

“Probably one of the most private things in the world is an egg before it is broken.”

M.F.K.フィッシャーさんは、
20世紀後半に米国で活躍された
女性料理研究家・作家さん。

数十冊の著作を残し
カリフォルニアワイン・
ナパバレーワインライブラリーの創設者
としても知られています。

フランスの美食家で政治家
ブリア・サヴァランの『美味礼讃』
を現代風に英訳した方として有名ですが、

他にも
なかなか面白い本を書かれて
まして、たとえば

「オオカミの調理法」
(How to Cook a Wolf)

と題した

戦時下で作る”ための料理本

があります。

第二次世界大戦中の
食糧難のさなかに出版され

『限られた食材で
バランスの良い食事を
摂る手段とレシピ』

とか

『停電中の調理方法』とか、

『眠れないときの料理』とか

『爆撃時のペットのケア』まで

書かれてます。

ずいぶんと
主婦の助けになる!

・・・と評判になりました。

 

またフィッシャーさんは

第二次世界大戦後、
混とんとして食のモラルや
魅力が低下していた米国に、

正統なフレンチ料理や
料理の歴史をめちゃめちゃ
分かりやすく伝え続けた

この功績は料理人さんの啓蒙に
ものすごく影響が大きかった
とも言われます。

ようは、
移民国家である米国で
ルーツのさだかじゃない料理
わらわら出されている状況に

古い料理の本を研究し、
歴史と共にわかりやすく伝えることで、

『この料理って、
こういう歴史的な背景と
意味があったのか…!』

と料理人さんが気づく。
重みや魅力を知るきっかけに
なったわけですね。

 

その結果いまでは、
たとえば
ニューヨークだけで
29もの星付きレストランが
立ち並んでいます。

 

新しい食の発信地として
アメリカの食が位置付けられ
ているのは、フィッシャーさんの
おかげとも言えます。

 

歴史に埋もれてしまっていた
料理レシピは
まさに「殻にこもったたまご」

冒頭の名言と同じ
世界一のプライベートな
“情報”だったかもしれません。

それを割ってみせて
世界に共有してくれた。
広大な美食ワールドに
拡散してくださった。

それが料理の発展になってますね~。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2022年11月11日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

月一のたまごの「ことわざ・名言」シリーズです。

 

「アヒルの農場で生まれようが、そんなことはどうでもいい
― 白鳥の卵から生まれたのなら。」

ハンス・クリスチャン・アンデルセン

 

いい言葉ですね~。

これは、アンデルセンさん
ご自身が書いた童話
「みにくいアヒルの子」
を念頭に置いた言葉ですね。

 

『あなたは生まれながらに
ステキな存在なんだから、
環境のせいにして
言い訳していたら
もったいないよ。』

というメッセージでしょうか。

どんな環境でも才能を信じろ!

チャンスはあるのだから!

という勇気をもらえる言葉ですね。


「人魚姫」「みにくいアヒルの子」
「マッチ売りの少女」「雪の女王」など
生涯で170以上の名作物語を残した
アンデルセンさん。

 

貧しい家庭ではありましたが、
お父さんお母さんはとても
愛情深い人だったそうで、

毎夜物語を読みきかせ
自宅で人形劇の舞台を作って
くれるほどだったとか。

そのおかげでメキメキと
空想力が培われたそうです。

 

ただ、
親族に虚言癖の方が多く
本人もその傾向があったこと
から、

「いつか精神的に病んで
しまうのでは…?」と
ずいぶん悩んでいたのだとか。

 

ちなみにアンデルセンの「セン」は
デンマーク語で「〇〇の息子」という意味で、

きちんとした性をもらえない
貧しい家の出を示すそうです。

 

出自や周囲の環境にめげずに
自身の長所をステキな物語創作
につぎ込んだアンデルセンさん、

「アヒルの農場で生まれようが
そんなことはどうでもいい
白鳥の卵から生まれたのなら」

まさにご自身がこの名言を
体現されたわけですね。

 

アンデルセンさんの描く物語には、
意外とたくさんの
たまごやニワトリがでてきます。

子供にわかりやすいお話に
出るキャラクターですから、
ニワトリがそれだけ身近な動物
であったことが分かります。

 

あと、面白いのが現代への影響。
物語の良イメージと名前の響きの
良さのためか、

「アンデルセン」

の名が入った飲食店さん
洋菓子店さん、パン屋さんが
全国にたくさんあります。

 

じっさいこの記事のため
調べものをしようと検索したら
膨大な「アンデルセン」店が
出てきまして、

本人について調べるのに
ちょっと苦労したくらい。

 

それだけ
ご本人のイメージが
一つの物語になっているようで
ステキな気がしました。

あなたのお店でも
メニューや新店のお名前として
ためしに
『アンデルセン』を入れてみると
繁盛の卵になるかも!?

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(関連:にわとりアンデルセン童話話に見る炎上のメカニズム | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2022年10月23日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

今朝から当サイトが
一時的に見られなくなっておりまして、
ご指摘いただいた方
ご心配ありがとうございました。

さきほど復旧し、ホッとしております。


さて、本日は
たまご鶏のことわざ第76弾、
今回はハンガリーから。

<彼は、めんどりがアルファベットを知っている程度にはそれを知っている>
(ハンガリー)

『あの人って
これについては

ホント無知だよね~。』

・・・ということを
控えめに言うときの
ハンガリーの表現です。

 

なかなか面白い言い回しです。

 

ものの本によると

良い人間関係を
つくるには
「否定語」を
できるだけ使わない

ことが大事なんだとか。

 

「これ嫌い。」
よりも
「味が好みとちがうな。」

みたいに。

 

このことわざも
なんにも知らないヤツだ
という否定の表現を

「ニワトリ程度は知っている
と言うのは、
皮肉交じりではありますが
優しい表現にも感じますね。

 

ちなみにヨーロッパでは
古くから
「めんどり」は母親的心づかいの象徴
(「おんどり」は勇気と用心の象徴)
ですが、

同時にめんどりは
厚顔無恥でめっちゃしゃべる
イメージもあります。

「めんどりが
アルファベットを知っている
程度にそれを知っている」

というこのことわざの、
「よく知らないくせに語る人」
イメージは、
そのあたりの印象から
来ているのかもしれません。

 

◆実はかしこいニワトリ

あと、このことわざは、
ニワトリさんには風評被害なんです。

アルファベットこそ知らないものの
実は非常に知能が高くて、
例えば数も、カラスと同じ
5つまで数えられますし

人の顔なんかも
すごく良く覚えています。

 

◆超めずらしい!ハンガリーの卵煮込み料理

ハンガリーの方は、
割と卵を食べます。

中でも面白いのが、

「ショレット」という
ユダヤ系の方が
安息日に食べる煮込み料理。

 

たまごとインゲン豆、大麦、
玉ねぎ牛肉を煮込んだ
おでん的な料理ですが、

なんと、

たまごを殻ごと煮込む

んですね。

食べるときは殻をむいて食べます。

なかなかびっくりですよね。

 

でも考えてみると、
日本の「おせちの海老」だって、
エビのカラは付いたままで
それを剝いて食べるわけですから
同じとも言えます。

 

殻ごと煮込むことで
味の強弱もつけられそうですから
飲食店さんの演出として
面白い調理ができるかもしれません。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(誰も知らない世界のことわざ /創元社)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2022年09月1日