小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごの歴史・文学・文化学 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

七夕ですね!

織姫と彦星、年に一度の逢瀬です。

今年は全国的に天気が良いようで何よりです。

 

さて、この七夕って、
たまごとのつながりが深いんです。

特に発祥の中国では。

 

もともと七夕は中国で
織姫の伝説としてスタートしました。

彦星はおまけ。

 

なので針仕事や機織り、
子宝祈願などの七夕風習が多くあります。

現代風にいうと
七夕は「働く女性の日」なんですね。

 

たとえば香港では、

女性の皆さんが手工芸の腕を披露するため、
卵の殻をくりぬいて灯篭をつくったり
工夫をこらした刺繍細工をたまごに施すんです。

 

また、大都市重慶のあたりの南部地域では
「卵焼き」の風習がありまして、

七夕の夜に近くの橋に卵と薪を持ち込んで
その下で「卵焼き」をします。

 

おばあちゃんが家族のために
たまごをじっくり厳選して良い物を選んで、

新聞紙にくるんで焚火に入れて
カラごと焼き上げるんですね。

 

ほら、焼き芋をそうやって作るじゃないですか。
あれのたまご版です。

この卵に、
その年の家族の願いを込めまして、
卵を焼くことで1年の病気を焼き払い
願いを祈るんです。

 

日本の七夕の「短冊」と同じですが、
それが「焼きたまご」なんですね~。

なかなか興味深いです。

 

やってみるとわかりますが、

焚き火で卵を焼くと、
見た目は真っ黒になりますが

ホントほくほくの美味しい
ゆでたまごになるんですよ。

 

◆「焼きたまご」はかなり美味しい

「たまごを煮ないで焼く」

という調理方法は中国・東南アジアでは一般的なんです。

水が貴重だったり
キレイな水が少ない地域では
「蒸し料理」が発達するんですが
焼き玉子も同じ理由ですね。

 

ゆでるよりも
食感がちょっとしっかりした
ゆでたまごになります。

 

お店やご家庭にあるオーブンで

既定の茹で時間+1分くらいで

ゆでたまご、いや焼き玉子ができますので

「お湯を準備するのめんどくさいなぁ」

という方や、変わった食感を求めるお店さんはぜひ試してみてくださいませ。

 

また、少し前に端午の節句のたまご飾りの話をしましたが、

その次の節句になる今回の七夕節句
中国では同様に『赤く煮たたまご』の飾りをするんです。

中国料理のお店ではこんな風な
ちょっとしたイベント的なたまごの魅せ方
アリじゃないでしょうか。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2022年07月6日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

「となり町で起こった、おそろしい話があるのよ。」

アンデルセン童話集に、

こんなめんどりの言葉で始まる

『ほんとにそのとおり!』(まったくそのとおり!)というタイトルのお話があります。


一羽のめんどりが

夜止まり木で休むときに

ちょっと羽をつついたところ

羽が一枚、ハラリと落ちました。

「あら、一枚羽が抜けちゃったわ。

でもいいのよ。あたしは羽をつつけば

つつくほど、キレイになるんだからね。」

と、冗談を言ったのです。

 

それをなんとなくウトウト聞いていた

隣のめんどりが、

「なんだい、キレイになるために

羽をむしるニワトリがいるのかい。

あたしがおんどりだったら

そんなヤツは軽蔑するね~。」

 

と軽口をたたきました。

その真上で、それを聞いた

フクロウ

「え~!?おんどりの気をひこうと

自分の羽をぜんぶむしっちゃった

ニワトリがいるんですって。

子供に聞かせたくない話だわ。」

 

そしてとなりのハト奥さんに

「奥さん!お聞きになった!?

おんどりを狙って

一羽、いや二羽っていう人もいたわ。

二羽のめんどりが

オスの気をひく格好になるために

ぜ~んぶ羽をむしっちゃったんですって!

そんなのカゼひいちゃうわよね。」

 

聞いたハトは隣の鳥小屋で

「三羽のメンドリが一羽を好きになって

病気で死んだんだって。

みんな羽をむしりとったそうよ。

かわいそうに。」

 

ハトからコウモリへと話は伝わり

「五羽のめんどりがいてね。

一羽に一目ぼれして

より痩せて見せようと

羽をぜんぶ抜いちゃったんだって。

それから、

血みどろになって蹴りあいを

して倒れて死んじゃったんだ。

飼い主も大損害さ。」

 

・・・と噂になり、

まわりまわって

冒頭のメンドリさんに伝わったのです。

一枚の羽が取れただけなので、

まさか自分のコトだと思わず

 

「なんてひどい事件!

国じゅうに広めなきゃ。」

と、新聞に掲載し

本にも載り、

 

小さな一枚の羽根が

5羽の大惨事めんどりとして

永遠に記録されることになったとさ。

 


・・・というお話です。

いきなり出版のお話になるのが

ちょっとシュールです。

 

二百年前に書かれたものですが、

なかなか現代的な炎上話にも

感じますね。

 

・噂がより面白い方向にエスカレートすること

・そして皆が正義感から拡散していること。

・後々までログが残ってしまうこと

 

Twitterや掲示板での

典型的な炎上パターンでしょうか。

デジタルタトゥーなんて言葉もありますが、

ネットの海にずっと本人のログが

残ってしまうダメージも似ています。

 

つい先日、

220万人登録者のユーチューバーが

「生たまご100個落としてみた」動画を

アップして炎上していました。

 

「ちゃんと食べるから。」と釈明していましたが、

卵屋の一人としては、そもそも粗雑に扱われる時点で

無駄じゃないからいいよね、とは思えないですね~。

 

こんな明らかに不謹慎なケースは別として

自分で意図せず炎上を引き起こすことも

十分あり得ます。

 

上のニワトリさんのように

「羽一枚」でも不愉快に思われる

ケースも考えて

襟を正していく必要ありますね~。

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2022年06月29日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

本日のテーマは、

『たまごと海外のやりとり』について。

 

現在食卓に並ぶ卵は

ほぼ100%国産です。

 

ですが実は明治時代

日本はめっちゃたまごを輸入していました。

維新後

江戸時代から文明開化で

世の中がガラッと変わりました。

 

そこで食文化としてめっちゃ

食べられるようになったのが、

卵なんですね。

江戸時代、卵って貴重品でした。

昨日ブログで書いた通り

一個500円ほどの価値がある

ぜいたく品あつかい。

 

これなぜかというと

「たくさん作れなかった」

からですね。

 

江戸時代には

農家さんが畑仕事のかたわら

小遣い稼ぎにちょこっとと飼育する

そんな養鶏が一般的でした。

 

ですので、卵もそんなに

採れなかったわけです。

 

ところが…

維新後は卵を食べる人が急増

そんな少ない生産では

とてもおっつかないので

 

お隣の中国からバンバン

たまごを輸入したんです。

 

それが、

美味しい卵を食べたい!

という情熱で、

猛烈な国産量産の取り組み

始まったのです。

 

明治に入り急増したニワトリ。

畜産統計によりますと

最古のデータがある

明治20年(1888)の時点で

なんと!910万羽ものニワトリさんが

飼育されてました。

 

江戸の終わりからたった20年で…

これすんごい増加ペースなんです。

 

そして…

そこからわずか30年で更に3倍に!

1920年には3千500万羽もの鶏になりました。

 

そこからさらに増え続け、

昭和初期には中国に逆に

卵をバンバン輸出するまでになっちゃうんです。

 

ちなみに今は、採卵鶏だけで

日本には2億羽!が飼われています。

世界的にみても、驚異的な増え方なんですよ。

 

すごいですね~。

 

なんで日本人は

こんなに卵好きなのかというと

ひとつには、宗教観が日本人に

合っていたから、とも言われます。

 

仏教の教えで殺生を避ける

そんな考えの中、

「たまごって無精卵だし

殺生じゃないよね?」

という考えが広く定着していたことが

急速な増加の理由。

 

◆宗教レスな食材として理想的

ちなみに卵は世界的にも

宗教の戒律にひっかかることが

極めて少ない無宗教食材です。

 

三大宗教はもとより

戒律に厳しい宗教でも

「たまごは食べてオッケー」

なところが多いのです。

先週から、

訪日外国人観光客の入国手続きが

2年ぶりにを再開しています。

 

本格的な入国が今月下旬以降より

始まる予定です、

 

宗教の戒律にひっかかりにくい

たまごの和食料理は、

外国人旅行客に

受け入れてもらいやすいです。

ぜひ、インバウンド復活を

見据えた戦略として、

たまごの無宗教性のメリットを

知ってくださいませ。

 

あなたのお店のメニューイングに

活かせるかもしれません。

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2022年06月14日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

先日、フジテレビの
あるクイズ番組さんから、

 

江戸時代の文化風俗を記した本

「守貞謾稿」の内容

について、
僕に質問がありました。

 

江戸時代の
「たまごの値段」

が載っているんですね。

 

といっても生卵じゃなくて
「ゆでたまご」の値段です。

一個が20文でした。

うどん・そばが16文でしたので、
現代の感覚では・・・

一個500円くらいでしょうか。

 

うーん、

わりと良いお値段ですね。

 

「鶏卵の水煮を売る 価大約廿文 詞にたまごたまごと云 必ず二声のみ 一声も三声も云ず 因云四月八日には 鶏とあひるの玉子を売る 江俗言伝ふ 今日家鴨の卵を食する者は中風を病まずの呪と 京坂 此事無也」

とありまして、

『価大約廿文』とあるのが

値段20文のコトです。

 

「たまご~たまご~」
と2回言って
売り歩いたわけですね。

当時のゆでたまごは

バテ気味の時に食べる
滋養強壮のもと。

 

いうなれば
オロナミンCみたいな感覚で
江戸っ子は買っていたようです。

 

また、別項には

寿司の
「玉子巻き」の値段

も載っていまして、
こちらは16文。

玉子寿司の下にある
「玉子巻」とある
渦巻みたいなのは、
こんなヤツですね。

うどんそばが当時16文で
玉子の寿司はそれと同じ

ゆでたまごはちょっと高価、
ということですね。

 

なかなか興味深いです。

寿司の方が手間が
かかってそうですが、
冷蔵保存できない江戸時代なら

 

「丸のまま茹でられる」
そんな鮮度の
クオリティ卵が必要となる
ゆでたまごの方が、

玉子寿司より貴重、
ということだったのかもしれません。

 


◆「空気」を記録した本だからスゴイ!

この「 守貞謾稿」という本
すんごく重要なんですね。

 

なんでかというと

記録に残される
ことのない、

その時代の
『当たり前』が
書いてあるから。

 

例えば現代では

『現代用語の基礎知識』とか
『新語事典』なんてものが
出てますよね?

 

それによって、
現代のヒット商品や
皆が熱狂した話題なんかが
数十年経ってもわかります。

「セブンイレブンが
今年は過去最高益だった」

とかそんなことも記録されます。

 

でも・・・

「コンビニのドアは自動ドア」

とか、

「ドリンクには
ホットとアイスがあり
レジで指定する」

 

‥‥‥なんてことは、

わざわざ
書かれたりしません。

なぜなら、

誰でも知ってる
『当たり前』だから。

 

例えば
数百年経って、
誰かが

現代のこと・令和の文化を
見返そうと思ったら、

 

こうした
空気のように
あたりまえのことは、

「どんなんだっけ?」

と分からない事だらけ…
…になっちゃうかもしれません。

 

で、江戸末期に記された本
「 守貞謾稿」ですが、

この本はそういう
『当たり前』の
いろ~んな
空気化していた事柄
網羅して紹介している本
なのですね。

庶民がどんな食べ物を
食べていたのか。

「たまご」がいくらだったのか。

「たまご」というと、

何の鳥のたまごを
食べていたのか。

 

お祭りで売られていた
いなり鮨には、

何の具が
入っていたのか。

 

こういった、

ホントに「フツーの事」

が記されているのって、
とってもとっても
貴重なんです。

で、ですね。

こういう日々の当たり前の気づきや
考え方を記すのって

今でいうなら、
この「ブログだなぁ。」
と思いますね。

 

毎日更新のこのブログも
お客様とぼくたち、
そしてニワトリや卵について

 

見逃しやすい
日々の気づきを記してますが、

 

ヘンなことを書いていても
2百年後に高く評価されるかも!?
…思って開き直って書いています(笑)

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2022年06月13日

こんにちは!

たまごのソムリエ・こばやしです。

 

5月5日、端午の節句ですね!

お子さん向けのイベントもあちこちでやってまして、

なんだかこっちまで童心にかえって

ワクワクしますね~。

 

節句というのは季節の節目のコトですが、

商売柄、気になるのは食べ物のこと

 

スーパーさんに行くと

昨日今日は「子供の日に!」

なんてPOPで

手巻き寿司向けのお刺身や

ステーキやローストビーフ用の塊肉なんかが

ドーンと並んでまして、

ウチの子供達もテンションが上がっています。

 

ですが本来は、歌にもある通り

柏餅とかちまきですよね。

 

なんにせよ、

うまいものたっぷりなのは、

子供の日らしくてステキです。

 

端午の節句って、

日本だけじゃないんですね。

そもそもは中国からきてまして、

ほか韓国台湾やベトナムでもお祝いの日なんです。

(ただし旧暦5月5日なので6月末ですが)

 

そして、

中国東南部では、

たまごがお祝いで使われるんです。

 

卵を煮込んで赤く染める

「染紅蛋(べに染めたまご)」

というものをつくって、

これを赤いひもで編んだ袋に入れて家につるすんです。

なかなかステキですね~。

もともと中国では

赤ちゃんが生まれたお祝いに

赤く染めたたまごを食べる習慣がありまして、

その後、元気に育ったお祝いも

同じように卵でするんですね。

 

欧州・米国の春の祭り

イースターでもたまごを

色とりどりカラフルに染め、

地域によっては飾りますが、

中国の節句お祝いの場合は

赤一色です。

これはこれで壮観です。

 

どちらも似た時期の

卵染め風習ですし、

なかなか興味深いですね。

 

◆たまごぶつけバトルも!

赤く染めたたまごを入れる、

真っ赤なひもで編んだ卵袋は

「編蛋袋」と呼ばれますが、

 

これを軒につるさずに

子供同士がひもを持ち

ゴツンゴツン!とぶつけ合って

割れなかった方が勝ち!

みたいな遊び「童蛋(こどもたまご)」なる

端午の節句あそびもあります。

 

イースターエッグづくりのイベントを

お店さんでされているのを

ときどき見かけるようになりましたが、

 

中国料理のお店さんで

5月5日または旧暦5月5日(6月25日)に

子供向けイベントとして

「紅染蛋」づくりや

「童蛋」バトルをやってみるのも

面白いかもしれませんね!

 

ちなみに次の節句、7月7日

「七夕の節句」にも

やはり赤い卵飾りをする中国の風習がありますので、

そっちのイベントで考えてみるのも

ステキなんじゃないでしょうか。

 

ここまでお読みくださって、

ありがとうございます。

(参照:端午節の伝統行事 国際ニュース:AFPBB News)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2022年05月5日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

フィンランドに伝わる天地創造伝説に、がでてきます。

フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」によると、


大気の女神イルマタルがいました。

700年ものあいだ原初の海を漂っていたのですが、ふと海から膝をだしたところ、そこに一羽の鴨が飛んできて留まり、巣をつくりました。

そして鴨は黄金のたまご6個を産み、次に鉄のたまご1個を産みました。

ところが、フッと女神が膝を動かしちゃったのですね。

あら、っという間に7個のたまごがボチャン!と海に落ちてしまいます。

そしてその割れた中身から、

大地、空、そして太陽に月、星、雲が生まれたのだそうです。

そこから手足をつかって湾や砂浜、漁場を創り出し、

その後打ち寄せる波によって身ごもり、女神は最初の人、ワイナミョイネンさん(聖書でいうアダム)を産んだのです。

卵が割れていてよかったですねェ。ワイナミョイネンさん、ずっと海で浮かんでないといけないところでした。


フィンランドには世界一島が多い群島があるそうで、なんと島の数70000以上。すごい!

海から始まる神話なのもうなづけます。

個人的には天地創造のはじまりとなったのが金の卵との卵、というのが興味深いです。

鉄は地球の地殻以外のほとんどを占める鉱物ですし、歴史的には鉄のコントロールは強者の力をもたらした存在です。ヴァイキングにもつながる勇ましさを感じますね~。

この叙事詩カレワラは、単なる昔話や伝承をまとめたものというだけでなく、民族のアイデンティティとなり、フィンランドのロシア帝国からの独立に大きな影響を与えた存在なんだそうです。

神道文化として日々の文化に根付いている古事記や日本書紀とよく似ていますね。

上の絵はフィンランドを代表する画家ロバート・ヴィルヘルム・エクマンさんが描いた女神イルマタルが海に漂うシーン。

フィンランドにはカレリアパイ(カレリアンピーラッカ)なる料理があります。小麦とライ麦を練ってマッシュポテトを乗せて焼き上げたパイ料理で、たっぷりのゆでたまご&バターで食べるのが定番なんだとか。

うーん、ぜひとも現地で食べてみたいですね!

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2021年06月28日