小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

なぜ江戸時代に目玉焼きは無かったのか

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

考えてみれば、
目玉焼き、って
シンプルの極みですよね。

いろんなコツがあるにせよ、
調理形態としては、

割って

焼く

これだけのシンプルさです。

人類がはじめて卵を目にして
「食べよう。」と思ったら
まず思いつく料理の一つですよね。

 

日本人も目玉焼き大好きですが、
英国、オランダにドイツスペイン
インドにエジプト・カンボジアにも
古くから目玉焼きの名物料理がありまして、
世界の超スタンダードたまご料理
言って過言じゃないです。

 

千年以上前のローマ時代の
目玉焼きレシピも残ってますし、

スペインには400年以上前の
目玉焼きをつくるシーンが
絵画になって残っているくらい。

(関連:400年前の名画に描かれた目玉焼きが超ウマイ! | たまごのソムリエ面白コラム

 

なのに、意外なことに
日本での目玉焼きの歴史は
そう長くありません。

記録を見てもせいぜい百数十年、
明治時代になってからなんです。

それも「洋食」として・・・

 

たまご料理が普及した江戸時代には
「卵百珍」のようなたまご料理専門書が
いくつか出版されていますが、
目玉焼きに類するレシピって
どこにも載って無いんですよね。

ゆでたまご料理は
けっこうたくさんあるのに。

考えてみれば、不思議です。

平安時代に書かれた
日本最古の説話集『日本霊異記』にも
毎日卵を獲って料理する男が出てきますが、
「毎日たまごを煮て食べる」となっています。

 

なぜなんでしょうね?

記録がないので推測するしかないのですが、
個人的には「鮮度」と「流通」の問題
大きかったのじゃないかと思います

 

◆たまごは保存食だったから

目玉焼きって、そもそも
「鮮度」が重要なんです。

新鮮じゃないと、
割り入れた時に
黄身が崩れちゃいます。

古いたまごで試験的に
目玉焼きをつくることが
ありますが、崩れずにできても
黄身白身ともに平た~くなって
火がすぐに通ってしまい、
さほど美味しく作れないんですよね。

 

しかし、江戸時代のたまごって
なが~く置ける「保存食」としての
位置づけで、

新鮮なものを食べる食材じゃあ
なかったのです。

じっさい常温でかなりの日数持ちますし。

 

しかもカラがカプセルになっていますから
割れさえしなければ虫も寄ってこず
保存もしやすいのです。

 

そして当時の日本の養鶏は、
農村部で家ごとに少しずつ
飼っているのが主流でした。

なので
鶏卵の産卵場所から消費地まで
どうしても日数がかかり、
また少量生産のため
あるていどまとまってから
売りに行く必要もあったわけです。

そのため、
手に入るたまごの黄身は
くずれやすくなり、

「混ぜて焼く」または「煮る」
最適な調理方法だったんじゃ
ないのでしょうか。

 

加えて、江戸時代から
ゆでる・煮るのたまご調理
レシピは豊富なのは、
日本のキレイな水資源が
たっぷりあったからじゃないかと
思います。

「こっちの方がうまいじゃん。」

と、目玉焼きよりも
「煮る」ほうに行っちゃったのかと。

 

新鮮なたまごが豊かに手に入る今こそ、

和食としての目玉焼きを、

さらに探究してみるべきかもしれません。

というか、めっちゃ食べたいです。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

(関連:江戸の文化本「 守貞謾稿」はなぜ貴重なのか? | たまごのソムリエ面白コラム