小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごの歴史・文学・文化学 記事一覧

卵を使って人心をコントロールした、
イギリスの伝説の予言者の実話を。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

わが徳島県と香港の定期便が
先月から減便になっています。

週3→週2に減って
それでも着便はガラガラ…。

その理由が、

災害の予言。

『7月5日に日本で大災害が起こる、
秋までは日本に行っちゃだめ。』

という言説がアジアで広まっているんです。

『大地震が起こるって。』

『いや隕石らしい。』

などと、あまりの広まりっぷりに
気象庁長官が

予言はデマだから心配しないで。

・・とコメントを出すほどの
異例事態になってます。

これ、
日本のある漫画がきっかけなんですが、
さらに香港の有名風水師
「9月まで行くな!」と
お墨付きを出したことで
エスカレート中です。

笑い話じゃすまないレベル、
観光地によっては売り上げ
9割減のお店も出ているみたい。

うーん、
経済ダメージ半端ないですね~。

万博もやっている最中なのに・・・。

 

まぁ、当たんないですよね。

以前、地質学の教授が

「地震予測は誤差が
プラスマイナス200年
それでも75億年の地球からすると
すごい精度だよ。」

なんておっしゃっていました。

それを「日にち」指定で
ピンポイント予言するなんて、
まじめな研究者さんからしたら

「なめてんのか。」

というレベルなんでしょう。

 

◆めっちゃ騒ぎになった『卵の予言』

さて、200年前のお話。

』が終末を予言して

大騒ぎになったことがあります。

舞台は1806年のイギリス。

北の街リーズ市に住む
メアリー・ベイトマンさん(38)は
ある朝、庭で飼っている鶏が
ヘンな模様の付いた卵を産んだのに
気づきました。

よく見ると卵のカラに

「救世主がまもなく到来する」

と描かれている。

しかもインクなんかじゃなく
殻が腐食したようにくぼみ、
拭いても消えない文字で…。

それを見て人々は大騒ぎ。

「奇跡だ。」

1ペニー払って鶏と卵を見るために
メアリーさん宅へ押し寄せたんですね。

その結果、

『タマゴの予言だ・・・。』

『最後の審判が来る・・。』

『この世が終わる・・!』

と多くの人が信じまして、
街はすんごいパニックに。

狂乱状態になったり
めっちゃ信心深くなって祈り続けたり・・・。

 

◆商売し始め気づく人が・・・

結論から言うと、これは“詐欺”でした。

メアリーは読み書き堪能で、当時としては
かなり高度な教育を受けていたのですが、

それを使って盗みや詐欺を働き
生まれ故郷ヨークシャーから
リーズ市へ逃げてきた“悪者”だったのです。

で、予言でっちあげを
思いついた・・・。

 

見物料を取るくらいなら
まだよかった(?)のですが、
さらに

「印章」を売り始めたのです。

JC(ジーザスクライストの略)”

と書かれた一枚の紙で、

『持ってると黙示録の後に
天国への入場を保証しますよ。』

との触れ込みで売りまくった。

それを数千人が買い求める・・・。

 

しかし、このあたりで

「おい、あれって怪しいんじゃないの?」

と考える人が出始めます。

◆張り込みで現場を押さえる

で、そんな人たちが、
早朝にメアリーの鶏小屋を
こっそりと見張ったのです。

するとそこには・・・

文字の書かれた卵を
めっちゃ頑張って
ニワトリのおしりに押し込む
メアリーの姿が・・!

うーん、
ニワトリさんかわいそう!

 

◆卵殻の消えない文字トリック

ちなみに『くぼんで書かれた消えない文字』は

濃縮酢

を使っていたことも分かりました。

卵のカラって
ほぼ炭酸カルシウムでできています。

そこに酢酸をたらすと化学反応が起き
内の膜はそのままでカラは溶け出すんです。

のちの調べによると、メアリーは
何度も何度も卵殻に酢酸を塗り重ね

文字のカタチに
殻を溶かし凹ませ奇跡メッセージ
演出したんですね。

当時の民衆には
思いもよらない手法ですから
すっかり信じ込んじゃった。

うむむ、狡猾ですね。

◆卵で騙した悲惨な末路

メアリーは露見した後も
「詐欺じゃない」と否定し続けましたが

もはや印章を買う人もなく
リーズの予言者のめんどり
と呼ばれたその鶏も
早々に隣人に売ってしまいます。

そして・・・

その3年後
今度は「奇跡の治療」として
病人に毒入りプリンを食べさせ
殺人の罪でついに絞首刑となったのです。

 

その数奇な人生から
ヨークシャーの魔女」と
呼ばれることになったメアリー、

その処刑には2万人が見物につめかけ、
遺体はリーズ総合診療所に長く展示され
多くの人がお金を払って見物に来たそう。

ちなみに
2015年まで(!)リーズ市の
医学博物館に展示され続けていたそうで、

メアリー自身が行列をつくり
利益を長く生み続けたという
なんとも皮肉なお話ですね。

ちなみに2017年に彼女の一生を書いた
本も英国で出版されています。

“ヨークシャーの魔女~メアリーバットマンの数奇な人生~”

表紙の左手に持っているのが
奇跡の卵ですね。

 

◆不安だと奇跡にだまされやすい!?

1800年代初頭のリーズ市は
工業都市として変わってきており
絶望的に貧しい人たちを
多く生み出していました。

そんな人たちの不安を、彼女は
“魔術”への恐怖と“奇跡”への安堵で
コントロールしようとしたんですね。

 

現代のいま予言が広がるのも、
世界情勢にみんな不安だからかも
しれませんね。

自分の感情に注意です。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:The Yorkshire Witch)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2025年06月17日

ファンタジー由来の繁盛メニューって
面白いかもしれません。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

映画化もされた
J・R・R・トールキンの小説「ホビット」に
こんななぞなぞが出てきます。

 

「蝶番(ちょうつがい)も
鍵も蓋もない箱
だが中には黄金の宝が
隠されている」

これなんでしょう?

 

答えは「EGG」
たまごです。

なるほど!

たしかにフタもカギも無く
中には黄金の黄身ですね!

主人公ビルボが冒険中に
ゴラムという謎生物から
なぞかけ合戦』を挑まれ、

負けると食べられる恐怖の中で
思いつくまま作ったなぞかけです。

それにしては格調高くて
センスありますね!

 

対するゴラム(邦訳ではゴクリ)は

「そういえば昔、
おばあちゃんとおじいちゃんに
そんなのの吸い方を教えたことが
あったな・・・!?

こたえは『卵』だ!」

とズバリ当ててしまいます。

よくわかりませんね・・・?
なんのこっちゃ。

 

これじつは、
怪物ゴラムが元人間ということと、
欧州のことわざを知らないと
面白さが分かりません。

「おばあちゃんに卵の吸い方を教える」

という古いことわざが欧州にありまして、
日本でいう「釈迦に説法」、

「年上の知識ある経験者に
えらそうに物事を教える」

という意味です。

 

それがなぜヒントに・・!?
という話ですが、

つまり、

「そういえば昔
犬が歩いて当たっていたな
答えは・・・“”!」

みたいな
じっさいに諺とおなじ行動を
やっちゃってたから思い出した。
というギャグなんです。

 

われわれ日本人には理解ハードルが高いですが
西洋でそれくらい「あるある」になっている
たまご諺がある、というのは卵屋として興味深いです。


ちなみに作者のトールキンさんは

「どこかの童話集に載っていた
文学的ななぞなぞを短くした。」

と言ってます。

訳者の山本史郎さんによると、
下のなぞかけだとか。

 

“壁はシルクのように
柔らかな肌ざわり。

澄みきった泉のなかに、
黄金のりんごがあらわれる。

この城に入口はないが、
賊が押し入り、黄金を盗む。”

おお~!
ステキな情景のなぞなぞですね。
かっこいい。

もちろん答えは「たまご」です。

シルクのような壁』が卵殻
清みきった泉』が白身
黄身は『黄金のりんご』ですね。

美しすぎます。

 

たしかにそのまま使うのは
“即興”としては練られすぎてますから

みじかく縮めた
トールキンさんは正しいですね~。

 

◆たまご好きシーンが印象的

「ホビット」そして続編の

「指環物語(ロードオブザリング)」世界では

養鶏が割と発達しているようで、
たまごが『日常のごちそう』として
ときどき出てきます。

たとえば主人公ビルボのところに
ドワーフ4人がおしかけたときも、

「ハムエッグは卵6個だよ。
それが旅立ちの朝のメニューなんだ。

スクランブルじゃなくって
目玉焼きね。
黄身はくれぐれも壊さぬようにな。」

と注文されて

『お願いします』の一言もない!と
ビルボがグチを言うシーンがあります。

物語の舞台「中つ国」には
突然の客が5人来ても
一人6個ずつ卵を食べられる
たまごの流通があるようです。

 

作者トールキンさんは
イギリス人ですから、

英国が世界に誇るベーコンエッグ、
たまごの魅力に並々ならぬ想いを
持っていたのかもしれません。

たとえばうずら卵を使って

『ロードオブザリング風ベーコンエッグ』

『トールキン風ベーコンエッグ』

みたいなメニューも面白いんじゃないでしょうか。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(関連:おばあちゃんはナゼ卵を吸うの!?【たまごのことわざ】 | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2025年01月6日

洋菓子店のみなさま
クリスマス大変おつかれさまです。

そして飲食店のみなさま、
年末へ向けて更なるお忙しさかと思います。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

今年もあと一週間ほど
どんな正月になるでしょうね!

スタッフのYさんから
おもちをいただきまして、
できたてを食べながら、
正月のお雑煮もたのしみに想像してます。

 

さて、お餅といえば、
おもしろい卵料理があります。

「餅餤(べいだん)」

と言いまして、一言でいうと

おモチのたまごサンド

たまごと野菜を煮て、
それをおモチで挟んで
四角く切ったものです。

これ、千年前の平安時代から続く
由緒正しい料理なんですね。

今年は平安ブームでしたが、

清少納言の「枕草子」
この「べいだん」が出てきます。


『~白き色紙に包みて、松の花のいみじく咲きたるにつけて持て来たり、ゑにやあらむと、いそぎ取り入れて見れば、餅餤といふ物を、二つならべて包みたるなりけり、添へたる立て文に、解文のやうに書きて

進上
餅餤一包
例によりて進上如件
少納言殿に』


となってまして、

『~白い色紙に包んで、梅の花がステキに咲いた枝に付けて持ってきたものが、これもしかして絵じゃないかしらと急いで受け取ってみると、餅餤(へいたん)という餅が二つ包まれていました。

添えてある立文は以下のような形式でした。』

“進呈

餅餤ひとつつみ

習わしによってこんな風に献上します

少納言殿へ”

 

という内容が描かれていました。

文学仲間の藤原行成さんからの
ちょっとステキな贈り物だったようです。

 

◆昇進式のプレゼントだった

ちなみにこの『お餅たまごサンド』
餅餃(べいだん)は、

特別感のあるごちそう

でして、
特別なシチュエーションでのギフトでもありました。

 

この頃毎年2月に定考(こうじょう)という
表彰式がありまして、

帝に仕える官吏の中から、
とくに芸能に秀でたものを選んで
官位を与える昇進の儀式でした。

そこで公卿諸臣に供された餅が
この、たまごサンドモチ“餅餃”だったのですね~。

当時の先進国・中国から来たお菓子なので
おしゃれ感も強かったっぽいですね。

ゴディバのチョコギフト
ゴールドコレクションをもらった、
みたいなイメージでしょうか。

なかなか興味深いです。

 

ちなみに紫式部が行成さんから
もらった際は

「こんなステキなものもらって
なんて返信しようかしら・・。」

と悩んで天皇の奥様(中宮様)とも
ワイワイ話しあって

「餅餃(へいたん)を直接じゃなく
使いにもってこさせるなんて

冷淡(れいたん)ですわね♪」

なんて返答を書いています。かけ言葉ですね。

すると行成さん本人がすぐにやってきて

「教養を鼻にかける女性って
すぐ和歌で返信したがるのに、
しゃれた文章で返すなんてやるなぁ。」

なんて感心して、
その後同僚に話したところ
貴族の間で評判になったそう。

 

◆旧暦2月はたまごのベストシーズン

ちなみにこのお話し、
旧暦の2月は
今の4月上旬くらい。

もともと平安の頃は、
鶏は毎日たまごを産んでいませんでした。

ツバメやすずめなどと同じく、
4月~7月ごろだけ
たまごを産んでいたんです。

鴨やあひるの卵も同じ。

 

卵は『季節もの』
春だけのレアなご馳走食材
だったのですね。

ですので『たまご料理』って
この時期最高の旬の料理といえます。

花卵 『万宝料理秘密箱 卵百珍』 | 江戸料理レシピデータセット

 

◆『春の旬たまご料理』の切り口はアリ

年中産んでくれるようになったいまでも
鶏卵の質は春が良く、
ニワトリのコンディションも最高です。

「春は旬なたまご料理」

の切り口でメニューに入れるのは
とてもおススメです!

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:「枕草子」133段・平安朝の食文化考/帯広大谷短期大学紀要第39号2002年3月)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2024年12月26日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

『ニワトリが鳴いたら朝だよ』

が重要なキーになる物語が
世界中にあります。

今回は日本のお話し。


 

ダイダラボッチという巨人がいました。

富士山を見て

「めっちゃ美しいじゃないか。」

「こんな山があるなんて
羨ましい!」

・・と、思ったのです。

 

もっと美しい山、
もっと高い山を
一晩でつくってやるぞ!

と決意しまして、
すごい量の土を掘りだして
積み上げていきました。

 

ですが・・・

まだ作り途中で

夜明けになって
ニワトリが鳴いたのです。

その鳴き声を聞いた
ダイダラボッチ、

うう~・・・!

残念だが、
あきらめよう・・!

と最後の土を放り出して
逃げ出しました。

 

その作りかけの山が
榛名山で

あわてて放り出した土が
ひともっこ山

悔しくて泣いた涙が
榛名湖になったとさ

・・・というお話し。


以前にご紹介した
ドイツや中国の物語、
一晩で壁井戸をつくる伝説と
プロットが似てますね~。

・一晩で作ろうとする

・あと一工程で完成目前

・ニワトリが鳴いて断念

という点が同じです。

 

同じなんですが
日本の伝説版は

スケールが
めっちゃデカい
ですね!

 

なんでしょうね?
こんな大規模工事でも
『一晩』じゃないとダメなんですね。

 

超常なる力の行使は
一晩だけ

鶏が鳴く=朝まで

というのが
世界共通の認識のようです。

 

このお話しが載っている

「ものと人間の文化史49 鶏」によると、
日本の伝説には

大規模工事を一晩で始め
ニワトリが鳴いたから
もうちょっとで断念した

というお話が他にいくつもあります。

 

たとえば冨士山と
あまのじゃく。

『アマノジャク』
という巨人が
一晩で美しい冨士山を
くずしてやろう!!

・・・と考えました。

山の土を海へどんどん
放り投げまくります。

 

ですが、

富士山があまりにでっかすぎ

一部しか崩せないうちに
夜明けになり

ニワトリがあちこちで
鳴き始めた。

アマノジャクは
ニワトリの鳴き声を聞き
運びかけの土を放り投げて退散、

その土は
箱根山の「二子山」になり、

海へ捨てた土は
「伊豆の大島」になったとさ。

・・・という伝説。

 

ちなみに
最後の『ひと捨て』でできた山
ダイダラボッチ版「ひともっこ山」は
高さ1,140メートル、

アマノジャク版「箱根二子山」は
高さ1,099メートルですので

奇しくも
最後に捨てた土の量は
ほぼ同じくらいのよう。

 

スケール大きいなりに
なんとなく規格が決まっているようで
面白いです。

 

日本の伝説の巨人たち
“一作業工程”は
『やま1,100m分の土』。

 

名作漫画『進撃の巨人』には
岩を投げる巨人がでてきますが、
いったいどれくらいだったんでしょうね!?

 

◆鶏の声は魔を打ち払う説も

「朝がきた!」

きっかけとして
ニワトリの鳴き声が登場しますが、

じっさいは
正確な夜明け時間の知らせ

と別に、

ニワトリは
聖なる声で邪を払う

という思想があります。

古代ギリシャでは
ニワトリは「魔除け」でしたし、

中国や古代インドでも聖なるものでした。

 

日本でもニワトリは
『神の使い』として
神社と深いつながりが
あります。

そう考えると、
朝に魔が退散するのは

天変地異の被害から
あと一歩のところを
助けてくれる存在

としてニワトリを見ることも
できますね。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:ものと人間の文化史「鶏」山口健児著)

(関連:うさぎとニワトリは神社つながり | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2024年11月7日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

『ニワトリが鳴いたら朝だよ』

がキーワードな物語って
世界中にあります。

今回は中国のお話しをご紹介。


周の仙王さんがあるとき王妃と約束をしました。

「オレは一晩で
百の井戸を掘る。

お前は百反の絹を織れ。」

その夜、夜明け前に
王妃は百反の絹を織りあげました。

「やったわ!」

「合図を出そうかしら。

そうね、鶏のまねしよっと。」

・・・と、
鶏鳴の鳴きまねをしたところ・・・

 

周囲の鶏がみなそれに和して
いっせいに鳴いたため、

 

井戸を掘っていた仙王は

「ええ!?
夜が明けたか・・・。」

ガクッ・・・!

と、99個の井戸を掘った時点で
止めちゃったのです。

 

これが、
今に残る“江西九十九井”の由来なんだとか。


・・・というお話し。

 

以前ドイツの「城壁を一晩で作る悪魔」
のお話しをご紹介しましたが、

「鶏の鳴き声で勘違いする」
「完成直前で断念し負けを認める」

という点はまったく同じですね。

 

なんでしょうね?

王様と王妃様は、
なんでそんなムチャ勝負を
はじめたんでしょうか!?

なんとなく
体育会系で脳筋な
イメージの王様な気がします。

ただ、
この物語でスゴイのは
むしろ奥様のほうですよね。

 

ちなみに百の織物というと
董永与織女」という
中国版七夕ストーリーが
有名なんですが、

こちらは身分を隠した天女が
10日間で百の反物を織って夫を助ける
というお話しです。

仙王の王妃さんは十日じゃなく

一晩で100反ですから

天の『織り姫』より
10倍速いわけです。とんでもないですね!

いわば
古代のパワーカップルでしょうか。

 

このお話しが載っている
「大清一統志」は、
300年前に国家事業で編纂された
“中国の歴史地理総まとめ大百科”で
360巻もあります。

 

日本の地図の根拠にもなっているためか、
なんと内閣府の国立公文書館アーカイブで
ぜんぶダウンロードできます

 

このお話の国、「周」は
3千年ほど前にはじまった王朝ですが、

そんな昔から
たくさんのニワトリが
人の住まい近くで飼われていた

というのが興味深いですね~。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:ものと人間の文化史「鶏」山口健児著)

(参照:大清一統志)

(関連:『鶏は朝』という伝説 その①【ドイツ悪魔城編】 | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2024年10月24日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

『ニワトリが鳴いたら朝だよ』

これがテーマの“伝説”って
世界中にありまして、
めっちゃ面白いんです。

有名なところでは
聖書の「ペテロと3度鳴く鶏」の
エピソードですし、

日本でも
えびすさまだったり
ダイダラボッチだったり
鶏の朝鳴きがかかわるストーリーには
枚挙がありません。

その一つをお話しします。


<グライヒ山(ベルク)の悪魔城
と鶏伝説>

ドイツの真ん中あたり、
テューリンゲン州の南西部に

グライヒ山(グライヒベルク)という
山脈があります。

大グライヒ山、小グライヒ山に
分かれてまして、

その小グライヒ山にある古城の壁は

悪魔が一晩で建てた

という伝説があるんです。

 

この地方を治めていた領主には
とっても美しい娘がいました。

あるとき、領主が住む城が
攻め入られそうになったのですが、

その際に悪魔に

「一夜で堅牢な城にしたいんだ!

決して乗り越えられない3重の石壁を
朝までに城の周りに築いてくれたら、

大切な自慢の娘を
褒美にやろう。」

と約束したのです。

悪魔は2つ返事で引き受けました。

たちまち
無数の使役霊がどんどこ岩石を運び入れ
城壁が積みあがっていく・・・

この悪魔との約束を立ち聞きしていた
娘の乳母

「たいへんなことになったわ・・・」

と、内心あわてまして、
でも知らん顔で仕事をつづけました。

そして夜。夜中もすぎて
もうほとんど城の3重カベも完成間近なころ
乳母はそっと抜け出して

「今だわ!」

と、城のあちこちに置いた
干し草の山に火をつけました。

すると、
急にまわりが明るくなったので
鶏がみんな夜明けとかんちがいして

「コケコッコー!!!」

と鳴き始めたのです。

鶏鳴を聞いた悪魔は

「やや!もう朝か、しまった。」

とめっちゃあわてまして、
最後の要石にするつもりだった巨石を
投げ出して消えてしまいましたとさ。

 


・・・という伝説。

この玄武岩でできた3重の壁は
いまだ残っていまして、
1か所だけ巨石1個分が
空いたままになっているんだとか。

地元では「ヘレンマウアー(地獄の壁)」と
呼ばれていて、掘ってみても
地中深くから積まれているため

「こんなの悪魔じゃなきゃ
やっぱムリだよなあ。」

なんて言われているそう。

 

ちなみに伝承には
いくつかバリエーションがあって、

「攻め入りそうだったのは城主に
結婚を反対された娘の恋人の若い騎士。

悪魔が消える際に
人でなし城主の魂を連れ去ったので、

恋路をジャマするものもいなくなって
めでたしめでたし。」

 

「古城につながる階段を見つければ
莫大な財宝が手に入る。

そのカギは娘が好きだった白い花。」

なんてちょっと夢のあるおまけ伝承もあるようです。

 

◆鶏=時間という超メリットのある家畜

古代において、
毎朝夜明けの正確な時間に鳴いてくれる
ニワトリって、すんごく貴重だったんですね。

もっと生産性が高く
味も効率も良い鳥って
鶏のほかにいくつもいたんですが、

この「時を知らせる」という点が
圧倒的に勝っていたため、
それで家畜としての主流を獲得する
ことになったと言われます。

 

それこそ「朝になったら鳴く」
のみならず

「鳴くから朝になる」

なんて伝説もできるくらい・・。

 

◆モーニングにエピソードを絡めよう

お店でのモーニングでは
卵を使われることが多くありますよね。

 

たとえばメニューイングで
コショウを利かせた「悪魔風」
目玉焼きにして、

こういった
『ニワトリ朝鳴き伝説』
くっつけると、
単に美味しいだけじゃなくて
メニューに奥行きがでてきます!

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:ものと人間の文化史「鶏」山口健児著)
(参照:『ドイツ伝説集』ルートヴィヒ・ベルシュタイン編著・鈴木瞞訳)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2024年10月14日