こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
江戸の昔は、病気を治すとなると「食べものや薬草の効能で健康になろう」という考えが主流でした。
本草学、と呼びまして、いろんな医学書物が書かれています。
ただ……庶民には読んでもなかなか理解できないムズかしいものばかり。
そんな中で
『和歌食物本草』
という面白い本が出されていました。
これ、
「和歌」で食材の効能を伝える
という本なんです。
内容は全部ひらがな
五・七・五・七・七のリズムで書かれています。
今で言うなら「マンガでわかる健康食品」とか「ラップで覚える食材の健康機能」みたいなカンジでしょうか。
かなりのヒット本で何度もバージョンアップしながら重版されていまして、寛永七年(1630)・寛永十九年(1642)・正保三年(1646)・承応三年(1654)・寛文十一年(1671)・元禄五年(1692)・元禄七年(1694)の各版があります。うーん、すごいですね!
〇たまご健康機能の和歌は……!?
さて、この和歌食物本草には『卵の効能』も書かれていまして、
「たまごこそ しぼりはらとむ さんののち ゑなをくだして 目のいたみとむ」
という和歌が載っています。
現代にいる我々にはちょっとわかりにくいですが、
『しぼりはら』とは「渋腹」
…と書いてひどい下痢腹痛のこと。
『ゑな』とは出産後の胎盤とへその緒のことです。
つまり、
“たまごこそが、ひどい腹痛や後産に良く効き、目の痛みまで取っちゃうんだよ!”
という意味ですね。
実際、卵に豊富なグルタミンなどアミノ酸が不足すると腸内にウィルスが侵入してお腹を壊しやすくなりますし、同じく卵にたっぷり含まれるビタミンB2やルテインは、網膜の働きを助け目の充血を解消してくれます。
こうやって歌になっていれば、
体調が悪い時に
「あ!そうだ、卵を食べよう。」
…と思い出せるだろう
そういう考えですね。
うーん、面白い。
また例えば、
「芋こそは あぢはひからく 平のもの しよびやうのどくぞ ふかくつゝしめ」(芋こそは 味わい辛く 平のもの 諸病の毒ぞ 深く慎め)
のように、効能だけじゃなく「あんまりたくさん食べ過ぎるんじゃないよ!」という注意事項もたくさん載っていました。
和歌で伝える……これは一種の発明でして、
この本の後発品として、
『職人の技術』や『料理の技術』などいろんな分野で『和歌で教える本』が出版されることになります。
僕たちも、ちょっとしたコツや健康情報なんかをうたって覚えてみる、これって現代でも充分通用しそうですね!
試してみると面白そうです。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。