エッ!?2万4千個のダイヤでできた卵があるの!?【世界のたまごアート】
「世界最大の金の卵を産んだのは、ただのガチョウなんかじゃない。この男だ。」
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
「カチンスキ―の卵」
をご存じでしょうか?
これ、
ギネス認定された
世界一でっかい
黄金と宝石でできた卵です。

正確には
『カチンスキ―の
アーガイル・ライブラリー・エッグ』
(the Argyle Library Egg by Kutchinsky)
と言いまして、
内部に機械仕掛けで動く
めっちゃ精巧な“黄金の図書館”が
配置されています。
この豪華すぎる黄金とダイヤの卵、
実に数奇な運命をたどっていまして・・・
1990年のこと。
オーストラリアのダイヤモンド鉱山会社が、
「ダイヤモンドをPRする、
最高の芸術品を作ってくれ。」
と依頼を出したんですね。

受けたのは、
英国で百年続く老舗宝石工房を率いる
ポール・カチンスキーさん。

6人の熟練職人が10か月かけ
出来上がった「卵」は
高さ61センチ、
最高級の18金15キロで
できており、
24,000個の
ピンクダイヤモンドが
ちりばめられていました。

予想の売り出しお値段は
700万ポンド。
日本円で約15億円。
すご~い!
このスゴイ黄金卵は
とうぜん世の耳目をあつめまして、
世界各地で展示され、
翌年にはギネス記録にも認定されました。
ところが・・・
売れなかったんですね・・。
「中東の大富豪が買うだろう。」
なんて想定していたのですが、
完成の翌年1991年に、
なんと湾岸戦争が始まります。
中東がそれどころじゃない状況に・・・

あてが外れたカチンスキーさんは
たちまち資金難になってしまいます。
必死で買い手を探しますが、
値段が値段だけに、見つからない。

「ゴールドでハデなのが
気に入られるんじゃないか。」
なんて、
ドナルド・トランプ氏にも売り込みを
しましたが、取引にはならなかったそう。

結局、
この黄金卵を作った職人は全員解雇、
その後ほどなくして工房は
人手に渡ってしまうことに・・・
◆「最高の商品」=「売れる商品」ではない
百年つづいた老舗企業が、
世界一の芸術品を作ったがために
消滅しちゃったんですよね。
商売として、
考えさせられるところです。

同じ「宝石の卵」として有名な
ファルベルジュの
インペリアルイースターエッグ
は、ロシア皇帝の注文を受け作られたもの。

つまり、
「誰が買うのか」が
先に決まっていました。

一方、カチンスキーの卵は、
「世界一すごいものを作れば、きっと“誰か”が買う!」
という壮大な挑戦でした。

これって僕たちの商売にも
ちょっと通じるところがあります。
卵屋でも飲食店でも洋菓子店でも製パン店でも、
「最高の素材を使った」
「手間をものすごくかけた」
「今までにない商品を作った」
だけでは、売れるとは限らないですよね。
誰に買ってほしいのか。
どんな場面で欲しくなるのか。
商品開発では、
「何を作るか」と同じくらい
「誰に売るか」が大切なんですね。
◆そして黄金の卵は、日本へ
そして、
売れなかった卵は
どうなったのでしょうか。

PRに活用された後、
1990年代に個人へ売却され、
長~いあいだどこにあるか
知られてない時期がありました。

ところが20年経って
判明した行き先は・・・
日本。
購入したのは、
マブチモーター創業者の馬渕健一氏でした。
この卵の内部には
精巧な機構があるのですが、
馬渕氏と息子さんは、
よく故障する「卵」内部のモーターを
ご自身で分解してメンテナンスされていたそう。
世界一を目指して
英国で作られた「黄金の卵」が、
めぐりめぐって日本のモーター技術者のもとへ。
なんとも不思議な縁ですよね。
そして馬淵氏の死後、
東京の国立科学博物館に寄贈され、
現在に至ります。
つまり(公開時には)
日本で観られます。

びっくりですね。
ちなみに前回の博物館公開が三年前。
今年(2026年)は
製作者ポール・カチンスキーさんの
娘さんがこの黄金卵についての
回顧録を出版し海外で話題になっています。
盛り上がり次第で今年また
観られるんじゃないかと期待しています。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。


