小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

不老不死のスターターキット!?『哲学のたまご』

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

「哲学の卵」というものをご存知でしょうか?「哲学者の卵」とも言われます。

これ、「なりたての哲学者」とかいう意味ではありません。

実は“錬金術”の道具なんです。

錬金術、つまり黄金を創り出す術で、また不老不死になれる「賢者の石」を創り出すための学問で、16世紀ごろに大流行しました。

その「黄金」や「不老不死」をつくるためのスタート、

一番とっかかりに、必要な材料を水晶の丸いビンにぜーんぶ入れて封をするんです。そこから始める。

これを「哲学の卵」と呼んだのですね。

いわば錬金術の『スターターキット』です。

無から有を生み出すような神秘的研究の素材セットを、『生命の源』としてすべての栄養素が入った「卵」に例えるのは、中々興味深いですね。

「哲学」っていうと文系イメージがあって、実験のおハナシで出てくるとなんだかヘンな気がしますが、そもそも「この世の真理」探究はすべて哲学の分野。

昔むかしは科学も数学も知的探求学問はみーんな「哲学」に含まれてました。

なので「哲学のたまご」。


ちなみに

「世界は卵から生まれた」

‥‥‥という信仰が広く欧州・アジアに根付いていまして、

「哲学の卵」はこの世界たまごのミニチュア再現版。

『原初の混沌が入った“”から世界が生まれた』

というイメージを反映してできた実験方法です。

そういえば先日ご紹介したフィンランドの民話でも、卵から世界が生まれていましたね。

「錬金術」は現代でこそ「ムリ」とされていますが、当時の最先端を行く研究でして、後の「現代化学」の礎となっています。

例えば

ビーカーやフラスコ・試験管

なんかはこの錬金術から生まれた器具ですし、

あの万有引力アイザック・ニュートンさんも錬金術をずっと研究していました。

「空気からパンを作り出す」と言われたアンモニア生成法「ハーバー・ボッシュ法」も、錬金術からの発展です。

うーん、そう考えると、

「哲学の卵」から、数百年を経て現代の豊かな生活が生まれた、とも言えますね。

すごい。

ただ、ホンモノの卵だって負けていません。


『いいですか。親愛なる友よ。これほど稀なる宝を炉や蒸留器から創り出した錬金術師はいないのですよ。それをあなたは雌鶏から得ることができるのです。あなたが労働と喜びを結びつける術を知っているのならば。』

これは17世紀フランスの農学者、ブリュダン・ル・ショワスラさんの言葉。

鶏のたまごは錬金術に匹敵するくらい素晴らしい!という意味ですが、これも上述の「哲学のたまご」というものがある事を踏まえると、より深い意味合いになります。

同じ時期の研究→錬金術師よりも、一生懸命育てた鶏さんと農夫の方がすごい!という農学者としての自負が感じられてステキですね!

ボクも完全同意です。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:卵じゃなく時計をゆでたニュートン | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , 面白たまご話2021年07月12日