小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごの歴史・文学・文化学 記事一覧

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「どこやらのラジュウム卵といふの、お母様にいただいたことがあるわ。白身が固くて黄身がやわらかいの・・・。」

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これは、川端康成の「山の音」(※)という小説の一節です。

さて、ここで出てくる「ラジュウム卵(ラジウム卵)」とはいったいなんでしょうか?

それは、「温泉玉子」のことなんです。

Wikipediaによると

『福島県福島市の飯坂温泉の温泉玉子は、この温泉で日本で初めてラジウムの存在が確認されたことに因み、ラジウム玉子(ラヂウム玉子)と呼ばれる。』hatuumi_ontama2.jpg

と、あります。上記小説の中、娘さんがお母さんから食べさせてもらった“ラジュウム卵”とは、どうやら福島市のたまごのようです。この小説が刊行されたのが1954年(昭和29年)。 少なくとも半世紀以上前からある由緒正しい温泉玉子なんですね。

福島市の飯坂温泉は、宮城県の鳴子温泉や秋保温泉とともに「奥州三名湯」とも言われています。

福島県温泉協会のサイトから旅館HPを拝見すると、震災による設備被害から休館しているにもかかわらず被災者受け入れをされている旅館、また被災休館を乗り越えiizakaonsen.jpg「震災復興プラン」を打ち出して再開なさっている旅館もありました。

がんばってらっしゃるお姿に、胸が熱くなります。

風光明媚・文学の香り高い歴史あるこちらの温泉、

そして大変な思いをされている福島県の皆様、

一日でも早くご復帰されることを応援しております。

 大型連休は終盤に入ってしまいましたが、本ブログをご覧の皆さんもぜひ、後半、応援も兼ねて、川端康成ゆかりの「ラジュウムたまご」とおいしい料理を食べに行ってみてはいかがでしょうか?

(関連)福島県温泉協会のHP

※(補足) 1954年(昭和29年)刊行。『鎌倉の長谷に住む、62歳になり老いを自覚するようになった尾形信吾が息子・修一の嫁・菊子に対して抱く情愛を、鎌倉の美しい風物とともに描いた作品。』です。 野間文芸賞を受賞した作品で、映画にもなっている名作です。 こちらもおススメです(^^)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2011年05月6日

こんにちは!こばやしです。またしばらくちょっと忙しめです。

さて、こんなニュースがありました。

抱卵の放棄相次ぐ=ペンギン繁殖地に異変? ―南極・昭和基地近く (時事通pengin.jpg信) – Yahoo!ニュース (http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110108-00000090-jij-soci)

南極昭和基地近くに住むアデリーペンギンは、今が繁殖の真っ最中なのですが、卵を放り出して失踪しちゃうケースが続出しているんだとか。 うーむ。

実は数千年前に、ニワトリさんにも同じケースが起こっているんですね。

通常の鳥類は、卵を産み温めはじめると、産むのをやめてしまいます。

卵を採りあげると、また新しいのを産みます。

ちょっとかわいそうですが、もともとニワトリさんも、こうやってたまごを採っていました。

ただ、この方式だと年に数十個が限界。 レア食材なんですね。

そのうちに、卵を温める本能が壊れた種が出てきます。

抱卵もしない&産みをストップしないniwatori_subako.jpg

という性質の種となり、一年中たまごを産み続けてくれる、現在の種になったんですね。

ニワトリさんが飼われはじめたのは約8000年前

2000年前くらいの中国やエジプトではすでに大量にたまごを産むニワトリさんを飼育していたという証拠が、出土しているそうです。

現在、世界には110億羽以上のニワトリさんがいます。

抱卵しないことで種として栄えているニワトリさん、

抱卵しないことで種の危機にさらされつつあるペンギンさん。

いろいろ考えさせられますね。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2011年01月15日

usagi_niwatori.jpgこんにちは!こばやしです。

師走も真っただ中となりました。
みなさん年賀状の準備はおすみでしょうか??

この干支の「うさぎ」、
漢字で書くと「」という字。

なんだか「」と似てますよね!?

何か関係が・・!?

・・・と思って調べてみましたが、
字が似ているのは全くの偶然とのこと。

両方とも別個に、
象形(形を似せること)から
今の漢字になったようです。

どっちも丸っこい感じを出そうとして似てしまったのでしょうか・・・。

さて、それはそれとして、このうさぎ)には、意外な接点がいくつかありますので、ご紹介。

 

◆数千年続く、たまごとウサギの意外な関係とは!?
密接な関係は、漢字の国ではなくアメリカ・ヨーロッパ圏にありました。
ちょっと下の絵を見てください。
  easter_rabbit2.jpg easter_rabbit3.jpg easter_rabbit4.jpg easter_rabbit5.jpg
どれも、卵とウサギが一緒に描かれています。
この組み合わせは、欧米ではしょっちゅう目にするモチーフなんです。
これはキリスト教、復活祭の絵なんですね。
古来より西欧では、卵は生命と復活の象徴多産であるウサギは豊穣の象徴として大切にされていました。
そして、この二つがキリスト教と結びつき、復活祭(イースター)には両者をモチーフとした様々な風習が、現在にいたるまで西欧各国で行われることとなったんです。
代表的なものは「イースターエッグ」。
ご存じ「カラフルな絵をつけたゆで玉子」を庭に隠して子供が探し出すという、割とメジャーな風習なのですが、
卵を庭にこっそり隠すのが「ウサギ」、イースターバニーだとされています。
それが、上の絵なんですね。
 
 
◆百年続く「卵の迷信」をつくったウサギとは!?
もうひとつ。
「たまごのコレステロールは体に悪い。毎日食べるのはキケンなんだよね?」
一年に何度も聞く、この話、実は迷信です。 
このお話のもとになったのが、ウサギ
約100年ほど前、ロシアの研究者がある論文を発表しました。
ウサギに卵を食べさせたところ、血中コレステロールが大幅に上がり、動脈硬化や心臓疾患など、さまざまな障害が出た。ゆえに、卵はキケンな食べ物だ。』
このセンセーショナルな論文は、またたくまに世界中に広まり、結果、「たまごを食べすぎちゃダメ!」という説が一般化します。
が、
よくよく調べてみると、「ウサギは草食だから、動物性たんぱくである卵コレステロールを分解できない」ことが判明し、
その後、サルでやってもヒトでやっても、このような結果は出なかったことから、「卵有害説は迷信」ということがハッキリします。(^^;)
しかし、巷にはこの説がしっかり根付き、百年後の現在まで続くことに・・・。
もし、その時の試験動物がウサギじゃなく、例えばネズミだったなら、いまごろ世界中でもっともっと卵は食べられていたかもしれません。
 
 
※ 現在では否定されています。→詳しくは当社たまご健康辞典に。
 
 
以上、の意外な接点でした。(^^)
カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2010年12月16日

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最近ゆっくり飲みに行くことは少なくなりましたが、

お酒を飲むのは大好きです。

さて、たまごといちばんつながりの深いお酒と言えば、実はカクテルなんです。

 

■カクテル名前の起源がエッグスタンド
フランス語で鶏肉・鶏卵の卸商(われわれの商売ですね)のことをコクティエ(coquetier)といい、転じてエッグスタンドのことも指します。

諸説あるカクテルの語源の中に「ニューオリンズの薬屋説」があります。フランス系移民の薬屋さんが、ブランデーにを混ぜたお酒を売ったところ大評判になり、これが上記のコクティエと呼ばれていたそうです。これが転じたとの説です。
(※この薬屋さんがブランデーと砂糖などを混ぜたお酒をエッグスタンドに入れて売ったからという説もあります)

 

■たまごを使ったカクテルいろいろ
じつは結構たくさんあります。卵黄ベースのリキュールがあるんですね。

ちょっとだけご紹介すると

エッグノック ・・・ミルクとたまご、そしてブランデーでできたカクテル。飲みやすいですが結構アルコール度数は高め。飲みすぎにご注意を。

フリップ ・・・お酒(ブランデーだったりワインだったり)と卵黄、そして砂糖をシェイクしたもの。

ミリオンダラー ・・・ジンベースでパイナップルジュースと卵白、ベルモット、甘味が入ったもの。パイナップルの酸味に卵白の泡がフワッと浮いた豪華な味わい。「百万ドル」の縁起良い名前もあって昔から人気のカクテルだそうです。

他にも、月刊スーパージャンプ掲載の「カクテル」という漫画先月号では、卵黄を使った「生牡蠣」そっくりの食感をたのしむカクテルが紹介されていました。(※うっかり名前は失念)その他にも沢山あります。

 

■なぜ飲み物にたまご・・・?
これは文化としか言いようがないかもしれませんが、日本人にとってはちょっと興味深いですね。

日本にも玉子酒はありますが、日常的な飲み物ではないですし。

メリットとしては(1)なめらかな食感になりボディ感が出る (2)卵うまみ成分によるマスキング効果で、味がまろやかに  (3)効率よく栄養摂取ができる

こんなところでしょうか?

おそらく、海洋国家である日本ではスープのダシを魚でとる(味噌汁・煮物)のと同じことで、

内陸地にあって動物性たんぱく質としての「たまご」が食文化の中心にあった地域では、その使い方にもより広い多様性が出てくるのは当然なのかもしれません。

身の回りにたくさんあれば、「このたまご、ちょっとお酒に入れてみたらうまいんじゃね?」って考えやすいですよね。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2009年11月7日

 

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本日は七夕ですね。

 

織姫と彦星2人の伝説、澄んだ夏の夜空と相まってとってもステキな文化として、日本でも親しまれています。さて、この七夕の期限は中国。日本では笹竹に短冊を飾るなどの風習が主流ですが、本場(?)中国では少しまた違った風習があるようです。

■中国の七夕と卵
もともと織女星(おりひめ星)の伝説から始まったこともあり(*1)、針仕事や機織り、子宝祈願などの風習が多いそうです。

中国の南地域、広州・香港では、女性の皆さんが手工芸の腕を披露するため、卵の殻をくりぬいて灯篭をつくったり、 工夫をこらした刺繍細工を作っているようです。
織姫さまにちなんで卵細工・・。 はたして織姫さまは職人工芸の技術も持っていたんでしょうか?気になるところです。なんにせよ、ぜひこの目で見てみたいですね。Smile  また、殻を赤く染めた卵を供え物にして、子どもが授かるようにとお祈りするとの事です。

夜には唄って宴会など、日本と比べて賑やかな印象です。日本の花見みたいな感じでしょうか?

 

■日本の七夕と食
対して日本の七夕は、竹笹に短冊だけでなく、赤飯や団子など、特別な料理をおそなえする風習も多いそうです。
そして、外せないのが素麵(そうめん)。織姫の機織りに見立てたものだそうで、そうめんを食べるのが最も古くから伝わる由緒正しい風習なんですね。
冷たくて夏にピッタリですしね。 ぜひキラキラ鮮やかな錦糸卵と、ひんやりツルツルのおそうめんで天の川ディナー、今夜おためしくださいませ。

 

■ところで・・
(*1)大崎正次「中国の星座の歴史」によると、古代よりあったのは織女星のみで、七夕のストーリーが普及してから、対になる牽牛星が天の川の反対から決められたとの事です。(参照・異説あり)

うーむ、彦星は後付けですか。 キリスト教でも、聖書にほとんど記述の無かったマリアさま人気が、教義普及の大きな一端を担ったそうですし、ロマンチックな物語の主役はいつの世も女性なのかもしれませんね。

(中国では七夕を「夏のバレンタイン」と言っているそうですが、なるほどバレンタインも女性のイベントですね)

 

参照:七夕文化(日本人七夕研究会)
参照:祭りの歳時記 七夕節(人民中国)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2009年07月7日

パンについて調べていたらパン屋の1ダース(Baker’s dozen)という言葉にぶつかりました。_なんと13個の事だそうで、確かにちゃんと辞書にもそう載ってます

昔パンの重量不足に厳しいペナルティがあった時代がありました。

万が一のミスによる処罰を避ける為にあらかじめ一個おまけした事が、その始まりだそうです。

そういえば、米原万理さんのエッセイ「魔女の1ダース」によると、悪魔や魔女の世界でも一ダースはやはり13なんだそうです。

こちらもロシア語辞典にはちゃんと載っていますね。なるほど魔女だけあって、不吉で邪悪な数だからこれを使うとされているようです。

 

◆たまごの入り数、お国事情
さて、卵の場合はどうでしょうか?パンのように一個おまけする必要もありませんので、1ダースといえばモチロン12個です。

そして、欧米の1パック単位も、12個入り。

日本のパックは10個入りが主流ですから、ちょっと多めですね。

日本と違って生食がほとんど無いこともあり、まとめ買いのライフスタイルが浸透しているようです。

さて、日本でも高齢化や少子化、核家族化などライフスタイルが変化した結果、卵の入り数も変化しつつあります。

欧米とは逆に、少なくても買える6個入りや4個入りのニーズが増えつつあるようです。偶数ばっかりなのは、もちろんパックの構造上の問題。同じパック販売なら、二個ずつ減らすか増やすしかないですよね?

「奇数入りがあってもいいじゃん。」そう思ってできたのは、下の写真の商品。(もちろん他の目的もありましたが)

スタンドパックという容器にに入っています。これは小さい卵で13個入っています。また、サイズ違いで7個入りや9個入りもラインナップになります。
使った後は、たたんでポイ。プラ容量も少なく、地球にやさしいです。通気も良く、卵の品質のもちも良いなど、色んなメリットがあります。

「もって帰るのに割れるじゃん。」
そんな声も聞こえそうですが、実は見えないところで沢山の工夫がしてあります。 これについてはまた今度。

※昨日は十三参りの日だったので、このエントリを書こうと思いたったのですが、忙しさに負けて翌日更新となってしまいました。日本やアジアでは、どちらかというと13は縁起の良い数の様ですね。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2009年04月14日