小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごのビックリ科学 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

今年の5月に、卵業界にとっては
なかなか衝撃的な研究論文が
ネイチャーに掲載されました。

 

卵がどのように割れるか、
そして強度と
靭性機能に関する
一般的認識に挑戦する』

“Challenging common notions on how eggs break and the role of strength versus toughness”

というタイトルです。

つまり

「どうなったら
卵が割れてしまうのか、
いままでの常識に
挑戦したよ。」

という内容です。

米国マサチューセッツ工科大学・通称MITの
研究チームは、

高精度の計測機器を用いて
いろんな方向から卵に力をかけたり落としたりすることで『卵の割れ方』を詳細に計測し、

また
予測数値シミュレーションを行って
いったい何が起こっているのかを研究したんです。

なんと204個もの卵を
超精密に割って計測しています。

論文はサイトから閲覧可ですので
ダウンロードして読んでみました。

おもしろいですね~!これ。

 

結論から言うと

たまごは縦より
横向きが強い

ということがわかったのです。

え~!!

 

◆常識をくつがえす!?

今までの常識では

卵は
タテからの衝撃や
圧力に強い

というものでした。

なんで「タテが強い」と
されていたかというと
構造の違い。

アーチ形構造って言いまして、
まるく曲がっている方が耐荷重が高い、
逆に平らに近いほど耐えられる荷重が少ない、というのが根拠でした。

 

僕もそう聞いていましたし、
専門書にもそう書いてあります。

じっさい、割れないことが重要な
卵パックは、卵がタテ入りですよね?

 

ですが・・・!

じっさいは横むき(なだらかな側面)、

つまり寝かせた状態の方が、
大きな力に耐えられることが分かったのです。

 

アーチ形の理屈と逆・・!

いったいどういうメカニズムでしょうか。

 

◆試験

まず、どんなふうに調べたのかというと、

・ギューっと押しつぶすテスト(静的試験)

・落とすテスト(動的試験)

この2つを
立てた卵寝かせた卵でやったんです。

なるほど、
じっさいたまごが破損するのって
落とすかつぶすかどちらかですよね。
理にかなってます。

で、その結果は・・・

 

◆やってみると・・・

① 卵を押しつぶしたとき

・卵が割れるまでにかかる力の強さは、縦でも横でもほとんど同じ

・でも横向きの卵の方が少し長く変形できる(しなる)

ことが分かりました。

つまり、

横向きの方が
「エネルギーを吸収しやすい=しなやか(タフ)」

ということだったのです。

 

② 卵を落としたとき

ちょっとずつ高いところから落としていくと・・・

横向きに落とした卵の方が割れにくい結果に

・縦に落とすよりも、横に落とす方が“しなる時間”が長く、力を分散できていた。

となりまして、

押しつぶす場合と同じく
落としたときも
「カラのしなり」が
大事だったんです。

◆結論

・「卵は縦の方が強い」というのは間違い

・卵は横向き(おなかの部分=赤道方向)で力を受けた方が割れにくい。

・卵に必要なのは「かたい強さ」ではなく、「しなやかな強さ(タフネス)」。

ということだったんですね~。

 

◆けっこうすごい話かも

これって、「へー。」
じゃすまないかもしれない
一大事なんですよ。

ぼくたち卵業界にとって
割れ防止」って永遠のテーマです。

ひとつでも割れを減らすために
たまご容器には多くの特許技術が
使われています。

タテヨコ強さの新事実で、
世界で生産される数百億個の
卵の輸送形態、貯蔵形態が

ガラッ!

と変わっちゃう
可能性もあります。

いや~、ワクワクする話ですね。

ご家庭でも案外、昔ながらの「ざるに横置き」がよいのかもしれません。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

 

(参照:Challenging common notions on how eggs break and the role of strength versus toughness | Communications Physics)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2025年10月31日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

鶏から、ではなく
植物性100%でつくられた卵

「プラントベースエッグ」

というものがあります。

日本でもキューピーさんが
「ほぼたま」の名前で売り出してますね。

ヴィーガンエッグとも
呼ばれてまして、

ヴィ―ガンに好まれ
先進している米国やEUでは
どこでも手に入る一般食材として
拡大中です。

 

先日イリノイ大学とパデュー大学より

「ヴィーガンエッグに対して
消費者はどう思っているのか?」

を調べた研究結果が発表されました。

1600名の男女で調査したところ・・・

 

・植物性卵を食べたくなる
シチュエーションってあるの?

レストランとか自宅とか、
どういう場所だと食べたくなるか?
を調べたところ、

場所は関係なし

でした。

ちょっと素敵なレストランなら
とか自宅でなら、
とかそういう要素は無いようです。

これは興味深いですね。

プロの腕前で調理したとしても、
多くの人にとって
「植物性卵の料理」は
お店のフックにならないってことですね。

メニューのアピールには
少し工夫がいりそうです。

 

・スクランブルエッグかパンケーキか?

ようは植物性卵をつかって
「もろに卵っぽい料理」と

食材として使った場合
「ふだん食べている料理」では
どっちを食べたいかを
選んでもらったところ、

スクランブルエッグより
パンケーキがずっと上に。

まぁ、
そうかもしれませんね~。

例えるなら
牛乳を飲む人が“豆乳”へ
習慣を変えるなら

まずはそのまま飲むよりも
豆乳ケーキとか豆乳アイスの方が
受け入れられやすい、
みたいなカンジかもしれません。

 

植物性卵メーカーは

『本物の卵みたい!スゴイよ!』

・・・と、
スクランブルエッグや
サンドイッチみたいな
「もろ玉子な料理が作れます」的な
使用例PRをしてますが、

じつは響いていない
可能性がある
わけですね。

 

とはいえ
パンケーキみたいに
卵料理っぽくないメニューでPRしても

「卵抜き菓子レシピと何が違うのか?」

みたいな話になっちゃいますから、
難しいところですね。

 

・試したことがある人とない人

一度でも試食をしたことがある人ほど、
植物性卵を選ぶ比率が高いそう。

「意外といけるかも。」

みたいな。

これは昆虫飼料の鶏卵研究でも同じですね。

 

・味とかイメージについて

味と見た目 鶏卵の方がおいしそう

環境配慮 →植物性卵の方がよさそう

値段は →安いなら買ってみたくなる

このあたりは
「なるほどそうだろうな。」という
範囲ですが、

「環境配慮」など『世のためになるか』で
商品を選ぶ人がたくさんいる、ということは
重要ですよね。

鶏卵でも他食材でも
どんな環境で生まれたのか
ムダのない使い方してるのか・・・
こんなことをしっかり伝えると
お店でプラスになりそうです。

 

・誰がヴィ―ガンエッグを買う?

調査結果では、

「若い人」
「都市部に住む」「米国北東部に住む」
「政治的にリベラル派」

とのことで、
「新しいものを求めている人」
みたいなイメージがありそう。

日本で今後普及するとしたら
同じかもしれません。

 

あと、

「子供のいる人」
「食料援助受給者」
「アフリカ系アメリカ人」(黒人)

が、
植物性卵を「買ってみたい」人が多い
という結果に。

 

これはなぜでしょうね・・・?

前者2つは、
「より効率よく栄養摂取できそう」
みたいなニーズがあるかも。

 

じつはBBCニュースによると、
アフリカ系アメリカ人
他のアメリカ人に比べてビーガンや
ベジタリアンの割合が約3倍も高いのです。

(参照:Why black Americans are more likely to be vegan

そうなんだ・・!

背景としては、
アフリカ系アメリカ人は
以前は高血圧・肥満の割合が
多かったんですね。

貧困から野菜を買わず
ファーストフードを食べがちなど
社会的な要因がわかってきたため

「健康になろうぜ!」

と公民権運動的な面から
健康への考えが広まったのです。

◆まとめると・・・

研究チームのダ・ウン・キムさんは

「植物性卵を消費者が
どんなモノだと認知しているかを、
この研究から知りたかった。」

とおっしゃってます。

 

まとめると
植物性卵(プラントベースエッグ)は

・玉子料理にするのは抵抗感ある

・よく食べる料理に混ぜて使うなら大丈夫かも

・お店で使っても集客になりにくい

・『試食』が効果あり

・環境配慮してそうなイメージが強い

・高価格は手が出ない

ということですね。

 

外食関連でいうと、
専門店以外で使用するメリットは
まだそう多くなさそうです。

もしあなたのお店のメニューとして使うなら
「オムライス」「スクランブルエッグ」よりは

「マドレーヌ」とか「キッシュ」とか
ちょっとたまご感が低いほうが良いかもですね。

あとその意義をしっかり伝えるべき。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:Research cracks the code to trying vegan eggs)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2025年07月28日

もし、「シロアリを食べた鶏の卵は健康に良い」と知ったらどうしますか?


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

食用コオロギ生産・加工のベンチャー企業
「グラリス」さんが破産しました。

高校食物科の給食で希望者を募り
食べてもらったことから
SNS炎上したのが遠因だと、
帝国データバンクでは分析していますね。

そこから、
融資への批判だったり
もっと他の代替を研究すべきだとか
どんどん飛び火していったのを
覚えています。

 

なっとくした者だけが食べるなら
べつにいいじゃないか

そう思いますが、
そもそもの感覚として
やっぱり「昆虫食」には
それだけ忌避感が高いんですね。

 

以前にぼくは

昆虫飼育→加工して食べる

じゃなくて

昆虫→畜産動物→食べる

という、

ワンクッションあると
良いんじゃないか。

そうブログで書いたことがあります。

でも、ことはもうすこし複雑だったのです。

 

◆どう思うか?を調べた研究論文が発表

栄養になる昆虫の飼料を
畜産に活かそう

という試みはすでにされてますが、
「心理的にそれってどうか?」
について研究した論文があります。

 

昨年、東京大学・広島大学の研究で
「シロアリを摂取したニワトリの鶏肉、鶏卵に対する喫食意思および支払意思額 」(JASS システム農学会誌2023)
という論文が発表されました。

シロアリは健康成分を多く持っていて
アフリカでは薬に使わる昆虫です。

そこで「仮に」

シロアリを飼料に飼育した
鶏肉と鶏卵があったとして、
どう思うか?
もし健康に良かったら?

を調査したんですね。

シロアリが減ると
森林にも良いです』の説明も添えて。

 

「絶対イヤ」から「ぜひ食べたい」まで
7段階評価で890名に回答してもらったのです。

結果はちょっと面白いことに。

まず、好き嫌いで言うと
栄養が普通卵とおなじだったなら

「どっちでもない」よりも
わずかに「嫌い」寄りに。

たとえ直接食べるんじゃなくても
昆虫が食に関連することが
苦手な人がけっこういる、という結果ですね。

うーん、
こばやしの考えは浅かったかも。

 

ただし、

『健康に良いんだよ。』

という場合なら、

『食べてみたい』寄りになります。

環境のため、だけじゃ弱いけど

「健康になるなら食べたい。」

という人が結構いるわけですね。
こっちの路線はありのようです。

ちなみにイギリスで同様の調査をした報告では
「食べてみたい」が日本よりだいぶ多かったそうで
日本人は特に昆虫食に苦手感が強いみたいです。

 

◆えっ?田舎か都会住みかでチガウの!?

おもしろいのが、
住む環境の『移動』で差がでていること。

小さいころ都会に住み
いま田舎に移住している人

がいちばん
「シロアリ飼料育ち鶏のたまご」
を食べてみたいなと思った

という結果に。

 

ずっと田舎住み
ずっと都会住み

このどちらも住む場所の影響は
見られなかったのです。

 

『田舎へ移住した人は自分事として
環境への問題意識が高いのでは?』
という考察が論文ではされてますね。
なるほど。

 

・・・ということは、もし、
こんな卵を将来販売したいと思うなら

都会からのIターン移住者が多い地域なら
始めやすいということですね。

たとえば
台湾積体電路製造(TSMC)の
国内第1工場進出でめっちゃ移住者が
増えてる熊本県菊陽町みたいな地域なら
買ってくださるチャンスが多そうです。

 

◆虫の愛で方で変わる・・・!?

あと、おもしろいな、と思ったのが

一度でも昆虫食したことがある人

は昆虫を飼料にした鶏たまごも
「食べたいな」の気持ちが高いという。
しかし、
飼ったことがあるかどうかで変わる」。

 

いっぺん食べてみて
「けっこういけるじゃん。」

が、かなり有効ってことですね。

ですが、その人が
「昆虫を飼ったことがある」
ならば、「やっぱちょっと・・・」と
『食べたくない』が高くなるんです。

つまり昆虫を

「飼ったこと無い」×「食べたことある」

そんな人がいちばん鶏卵を
「食べてみたい」と思ってくれる結果に。

 

虫に親しみを持ってるからこそ
「飼料にするなんてダメだよ。」
と思っちゃうわけですね~。

 

他にも
北海道や中部地方は
「食べてみたい」が多い、とか

健康機能が高いならば
女性が「食べてみたい」が増える

など、
いろんな要素が絡み合っていて
人の嗜好の複雑さは
大変面白いです。

 

今のところ僕たちは
昆虫飼料のたまごは
考えていませんが、

将来のために
思考と知恵をめぐらせておく
必要があるとは思ってますね~。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2024年11月25日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

分子調理学の第一人者、石川伸一さんが
著書ですごくおもしろいことを言ってまして、

「たまご料理の多彩さの理由は

たまご自体が
おいしすぎないこと

です。」

美味しすぎないからイイ・・
これってなかなか聞かないフレーズです。
どういうことでしょう?

 

◆『旨味』が足りてない卵

おいしさの成分、うまみ成分には
グルタミン酸やイノシン酸がありますが、

実はこれらはある一定量以上ないと

「あ!おいしい。」

と旨味を感じないんです。

閾値(いきち)って言いまして、
この量を超えないと「おいしい」に
ならないんです。

 

で、ですね。

たまごには
うまみ成分があるんですが、
卵黄にも卵白にも、

単独で「おいしい!」と感じる
閾値(いきち)に、
うまみ成分量が
足りてないんです。

肉や魚のばあいは
単独で超えるものが多い。

 

えー!
うまみが足りない・・・

じゃあ食材としてダメなの・・?
・・かというと、

そうじゃありません。

足りないからこそ、

たまごは醤油やだしなど
他の旨味とのコラボで
おいしくなる。

『他の食材との組み合わせ
うまみが補充され、
たまごがもともと持っていた
潜在的なおいしさも増強されて
味に奥行きが生まれます。』

と石川教授もおっしゃってます。

なるほど・・!

これ、
すっご~く興味深いお話しなんです。

2つ観点があって、
まず、

『たまごの美味しさ』は
組み合わせでこそ花開く

ということ。

 

そして、もう一つは、

『たまごの美味しさ』は
「味」以外の要素が大きい

ということ。

 

つまり、
うまみ成分の量だけ
たまごの美味しさとして
重要なんじゃなくて

 

舌のなめらかなとろみ食感

焼き上げた香り

料理の色どりの鮮やかさなど

『総合力』で
大きな魅力を出している

ということですね。

 

これはどの食材より
ハッキリしてます。

 

親子丼を想像してもらえれば
分かりやすいんですが、

『旨味』はダシとの組み合わせ

『食感』はとろとろ半熟加熱で
滑らかさとフルっとした口当たり
ハーモニーに

『色味』は食欲をそそる
あざやかな黄色

・・・と、
どれも卵がないと
できない魅力ですよね~。

 

◆おいしさの「分解」をして活用を!

ですので、

「いいたまごを使って
美味しいメニューを。」

・・・とあなたのお店で検討するなら、
その『おいしさ』で重視するのは

色味なのか食感なのか、
なのか香りなのか

それによって
メニューでつかうべき

最もベストなたまごが

変わってきます。


時には
コストダウンになる事も
ありますので、
ぜひ考えてみてくださいませ~。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える・石川伸一)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2024年10月22日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

先週ちょっと面白いニュースがあがっていました。

New understanding of avian eggshell attachment has implications for medical, egg industries
(https://phys.org/news/2024-02-avian-eggshell-implications-medical-egg.html)

(卵殻の吸着力についての最新研究が、鶏卵産業と医療に影響する)

ようするに、

たまごのカラと
内側の薄皮が、
なぜしっかり
くっついているのか?

のメカニズムが
最新研究でくわしく分かってきた

たまごの品質アップにも
医療にも
いろいろ役立つかも
とのこと。

たまごのカラの
内側には

卵殻膜(らんかくまく)

っていいまして
うす~い膜が
ぴっちり貼られて
いるんですね。

ゆでたまごを剥くと
皮みたいなのがありますよね?
あれです。

生卵を割ると
カラの内側に
キレイにくっついています。

ピッタリと
しっかりくっついてて

はがそうと思うと
ちょっと力もいります。
まるで工業品のような精密さ。

で、ですね

たまごのカラって
炭酸カルシウムで
できてまして、
あるいみ「かたい石」ですね。

また内側の膜は
たんぱく質でできた
「やわらかい繊維」です。

 

無機物と有機物
このふたつが
ミクロでしっかり
くっついている。

 

じっさい
どうなっているんでしょう?

考えてみれば不思議なんです。

カナダ・マギル大学の研究チームが、
最先端の3DイメージングX線顕微鏡と
電子顕微鏡をつかって、
この界面を3次元的に調べたんですね。

すると、

卵のカラに
膜の繊維が
1000分の一ミリ単位で
からみつき、

逆に膜には
卵殻のトゲが
百万分の一ミリ単位で
埋め込まれている

 

という構造が分かったんですね。

たまごのカラは
ミクロでみると
お城の石垣のように
凸凹してますから、
その隙間に
膜の繊維がからみついている。

 

そして、もっと拡大すると、
カラの微細なトゲが
釘のように、
まるで靴のスパイクのように
がっちり刺さる事で
卵殻膜のシートをつかんでいるわけです。

マクロとミクロで
お互いに入り込んで
カバーしあっている
すごい構造なんですね~。

 

◆人工靭帯なんかに応用できそう

これ、たとえば
人工的につくったヒザ関節とか
靭帯に応用できるかもしれないんです。

やわらかい繊維の人工靭帯と固い骨
アスリートの動きに耐えられる
しっかりしたものを目指すなら

 

固いたまご殻と
やわらかい膜が
お互いからんで
がっちりくっつく構造は
理想的ともいえます。

そして
固いもの&やわらかいもの
の組み合わせって
いろいろありますよね?

たとえば
歯と歯ぐきもそうですし、
車のコーティング塗装とか
コンタクトレンズとか
スマホのガラスコーティングとか

将来は卵殻と薄皮の応用で
世の中がさらにステキに
なるかもしれません。

 

◆たまご品質向上にも!?

そして、マギル大学の研究者さんたちは

たまごそのものの
品質向上になるかも

とも言っています。

そもそも
たまごの薄皮(卵殻膜)は
カラの強度を高め、
高度な防菌構造のため
にあります。

「殻と膜の界面が
丈夫で安全で健康な卵の
特徴だ、という発見から

この界面構造を
さらに強化する
遺伝子を育てていけば、

卵の生産者や養鶏業者の
破損ロスを減らすことが
できるかもしれません。」

とのこと。

たしかに
この観点での育種は
無かったかと思いますので、

「とても割れにくい卵」

「保存性が数倍伸びる卵」

みたいなものに
つながってくるかもしれません。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2024年02月27日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごと言えば新鮮…

というイメージはあるかと思います。

 

ですがその逆なのが、

時間をかけて美味しくする
発酵食品としてのたまご

これに、
すごくおもしろい魅力があります。

どれもちょっと変わった
食べ物になるんですね。

 

◆たまご発酵醤油

普通は小麦と大豆と麹で
作るのが醤油ですが、

なんと!
卵の白身と小麦
醤油ができるんです。

特徴としては、
味が濃いのに色が
すごく薄い・・!

あとほんのりと
たまごの風味がすること
でしょうか。

ふつうの醤油や味噌は
発酵の過程で黒褐色になる
メイラード反応が起こります。

たまご醤油の場合は
これが少ないんですね。

 

ちょっと面白いのは
その作り方でして、
醤油麹菌の発酵って
液体な卵の白身には
生やせないんです。

ですので、
たまご+小麦粉で固める

つまり、
いったんケーキを作って
砕き、そこに麹菌を生やして
発酵させてるんですね。

ケーキ→醤油

何年か前に京都女子大発の
ベンチャーから出まして

現在、たまご+大麦で
つくった卵醤油が市販されています。

超たまごづくしのメニューなんかも
おもしろいんじゃないでしょうか。

 

◆麹熟成卵黄

さっきの発酵醤油は
卵白に麹でできたものでしたが、
卵黄+麹発酵でも
かなり面白いものができます。

それが、麹熟成卵黄
キューピーさんが研究してまして
なんと黄身のうまみが5倍
香気成分は90倍に。

なかなかスゴイですね。

どちらかというと
競合がたまごじゃなくて
チーズなどになってくる
感じです。

まだ新しい食材ですので、
今後も何か面白い使い方が
ありそうです。

 

◆中国伝統の高級食材
「卵白粉」

最後は、
超レア食材「卵白粉」です。
発酵醸造学・小泉武夫氏の著書
「発酵食品礼賛」に出てきます。

『卵の卵白だけを発酵槽に入れ、
夏期で2から3日、秋期で4から5日
冬季で1から2週間、放置した状態
で空気中から進入した菌で発酵を行わせる。

(中略)この発酵した卵白を濾過した後、
乾燥させてから粉末にしたもの』

これがとてもきめ細かい
優良な粉となって、現在では
滋養剤や高級菓子なんかに使われて、
希少価値からなかなか手に入りにくい
ものになっているとのこと。

 

位置づけ的に
和三盆みたいなカンジですね。

発酵させるのは、
「卵殻膜や胚などを
発酵による泡とともに
浮遊させて除去し、
製品純度を上げるため」
とのことですが、
これ、めっちゃ大変なんですよ。

 

なにせ、生の卵白って
溶菌作用がありまして、
菌にめちゃくちゃ強いんですよ。

つまり、そんな簡単に
菌が生えたり発酵したり
しないんです。

上記の卵白発酵なんて
めっちゃ手間なんですね。

そこまでして、
上質の食材を作り上げるなんて
ホント感動します。


いかがでしたでしょうか。

そもそも卵の発酵食品を
そこまで見かけないのは、

「たまごが長期保存食だから」

なんですね。
意外と長もちするので、
発酵して保存する必要がなかった。

ですが、
「よりおいしくなる」
その目的で考えると
いろんな発酵が
新たな食材として
おもしろい可能性があるんです。

 

ちなみに
ピータンやたまごの糠漬けは
菌による分解が進むわけでは
ありませんので、
厳密に言うと発酵食品ではありません。

 

ぜひ、たまご繁盛メニューの
新たな選択肢として、
たまご発酵食品を活用して
くださいませ~。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2023年04月16日