エッ!鶏に追加パーツって!?古代中国の闘鶏騒動
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
アルコールを飲めない国はあっても
鶏や卵を食べられない国は無いわけですが、

もともとニワトリが世界中で
飼われるようになった理由の一つが、
娯楽。
すなわち闘鶏なんですね。

ニワトリの原種は比較的
気性が荒くって
戦い向きなんです。
ですのでずいぶん昔から
ヨーロッパからアジアまで
ひろ~い地域で
闘鶏が盛んに楽しまれていました。
また楽しむだけじゃなく、
大事なことを決める占いや
もめごとの決着をつけるため、
闘鶏が使われるようにも
なっていったんですね。

日本でも
宮中で千年つづいている
豊作を占う闘鶏の行事があります。
さて、
最古の歴史書といわれる
2千年前の「史記」という中国の書物に、
面白い闘鶏のエピソードがあります。
春秋戦国時代、
魯という国の
トップ豪族の一人に、
季平子(きへいし)という男がいました。

家柄を鼻にかけて
なにかとえらそうにする
わがまま者。
そして
郈昭伯(こうしょうはく)という
有力者がいまして、
この2人がトラブルになったのですね。

もともと両家は仲が悪く、
土地問題も絡んで関係は悪くなる一方…。
そこで、
「闘鶏で決着をつけよう。」
となったのです。
ポケモンバトルみたいなものですね。

まぁ、裁判所もない時代ですし、
「戦いで決着」というのは
珍しくありませんでした。
ですが
人間同士が決闘しちゃったら
戦争になりかねませんから、
闘鶏で勝負というのは
平和的な方法と言えます。
ところが・・・
闘鶏当日になってみると、
季平子(きへいし)さんのニワトリは

鎧をまとっていたのです。
ええ~。
それはズルい。
もちろんルール違反です。
対して、
郈昭伯(こうしょうはく)さんのニワトリは…

鋭利な剣を
蹴爪に装着していたのです。
当たり前ですが
こちらもルール違反。
つまりどっちも
すごい武器や防具をセットして
なにがなんでも勝とうとしていたんですね。
ええ~・・・。
これ、
どっちもバレないと
思ったんですかね?
さすがに無理があるような。
けっきょく、
「なんてやつだ。卑怯だぞ!」
「お前こそ!ズルしやがって!」

なんて
ますます関係が悪くなる事態になり、
その結果・・・
戦争になりました。

じつは
他にもいろいろやらかしていた
季平子(きへいし)に対して
「もうガマンならん。」
と、なんと王様(昭公)が
郈昭伯(こうしょうはく)に味方し
いっしょに兵を挙げたのです。
それに対して
トップ3の豪族たちがみんな
季平子さん側についたため、
国が内戦状態に・・・
ついに『鶏のツメに剣』の方の
郈昭伯さんは殺され、
味方した王様(昭公)は
国を追い出されてしまいます。
平和的バトルで解決の
はずだったのに
どうしてこんなことに・・・

その後、魯は
この内戦のせいで
国力が弱まったことから
衰退がはじまり
魯は分裂したのちに
他国に吸収・滅亡してしまいます。
ニワトリへのとんでもないズルが
一国を滅ぼしたとも言える
この「闘鶏の乱」、
なかなか考えさせられます。
◆孔子も「闘鶏の乱」に影響されていた
この「魯」って
じつは儒教を確立した
孔子さんの出身国なんですね。

孔子さんは
この「闘鶏の乱」のあと、
追い出された王様(昭公)を
追いかけて斉という国に移住しています。
孔子さんは魯で
弟子たちに
「仁」や「礼」
つまり他人に愛情をもって
私利私欲を抑えた行動しなきゃね、
と儒学を説いていましたから、
ニワトリへのズルからはじまる
真逆のエピソードに
心を痛め
「ここで教えを説いてもなぁ。」
となったことは想像に難くありません。

誠実に生きていないと
何があるかわからない、
という鶏の教えですね。
僕も心して精進しなきゃです。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。


