小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまご・鶏のことわざ 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご鶏のことわざ92弾は中国から。

<鶏が鳴いて歩く、
ますます明るくなる>

(鸡叫走路,越走越明)

 

物事が進むにつれて、
より明らかになる
というポジティブな状況のこと。

ニワトリが鳴いて歩くごとに
事態が明るくなっていく。

これって、
朝鳴きする鶏に朝日がさしてくる

そんな夜明けのイメージも
含まれているような気がします。

力強くて、元気づける
ステキ言葉だなぁ、と感じますね。

 

◆世界中で「太陽の象徴」なニワトリ

元来ニワトリはポジティブな

陽のイメージ

があります。

 

太陽をあらわすイメージで
悪いものをはらう明るい存在

これは世界で共通するイメージでして、

西洋では魔をはらう存在として
教会のてっぺんに雄鶏が付いてました。

インドでは太陽の化身でしたし、
中国においては古来
「鶏は太陽を呼び戻す霊鳥」とされていたんですね。

 

日本でも、
太陽の神・天照大御神さまを
天の岩戸から呼び戻すのがニワトリです。

なので神社の鳥居はもともと
鶏の止まり木なんですね。

 

現代の僕たちにとっても、
「明るさ元気さ」ってすごく大事です。

『鶏が鳴いて歩く、
ますます明るくなる』

ぜひ積極的に使っていきたい!ですね~。

 

◆ウィット!中国のしゃれ言葉

ところでこの諺(ことわざ)は
「歇後語」っていいまして
“中国のしゃれ言葉やかけ言葉”の表現なんです。

 

前と後の2文で構成されていて

前文が
「たとえ(なぞかけ)」
後文が
「言いたいこと」

になります。

 

前文「鶏が鳴いて歩く」
→(何のたとえだろう?)

後文「ますます明るくなる」
→(なるほどそういう事か!)

という構図ですね。

 

ほかにも

「12月の扇子、時代遅れ」

「晴れの日の傘、余計なお世話」

なんてのがあります。

「紙の辞書なんてもう『12月の扇子』だぜ。」

「がんばろう!『鶏が鳴いて歩く』だよ。」

みたいに前の句だけで話すことも
多いんですね。

 

日本の
「〇〇とかけて△△と説く、
その心は・・・」

みたいな「ルールのある構文」なので
大喜利感があって楽しい慣用句です。

 

なんか自分でも考えてみたくなりますね。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年09月11日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごのことわざ第91弾、
今回はドイツから。

 

<卵ともう一つの卵のように似ている>
Sich gleichen wie ein Ei dem anderen

親子や兄弟などが
そっくりなこと。

日本でいう「うりふたつ」
です。

卵同士は外観が似ていて
2つ並べると見分けがつかないくらいだ、
ということから来ています。

なるほど~。
たしかにサイズが同じなら
そっくりに見えるかもですね。

ゆでたまごの試験なんかでも
事前にマーキングしておかないと
どれがどれだかわからなく
なっちゃいそうになります。

とはいえ実際は
よ~~く見て接していると、

同じ鶏種・同じ農場で生まれる卵でも
模様や色の濃淡・形状がそれぞれ
毎日豊かに変わっていて

たまごって多様性あるなぁ。

とは感じるんですよね。

ただし鶏卵が
似ている代名詞なのは
察するに

「ほかの鳥の卵とくらべて」

という意味かと思うんです。

たとえば「うずら卵」は
海外では「ニンジャエッグ」
なんて言われるくらい
模様の多様さがあって
背景に溶け込みます。

また、下の写真は海鳥の卵ですが
これもすごくバラエティあふれる
模様がありますね。

それに比べると鶏のたまごは
だいぶん似ている方だと言えるかも
しれません。

ちなみに日本の慣用句『瓜二つ』は
スパッと切った瓜の左右は
“切り口”がおんなじ形をしている
ことが由来。

そりゃそうです。
同じ形になりますね。

 

◆普及しているものが「たとえ」に

そもそも共通に知っていないと
こういう諺や慣用句にはならないわけです。

日本では「瓜」って
ことわざも多いんですよ。

平安時代から入ってきて
江戸時代には「みんな知っている」
食材でしたから。

 

そういう観点でいうと、
ドイツは卵の言い回しや
慣用句ことわざがかなり多い国です。

たまごで例えて
「ああ、そうだよなぁ。」
みんなが思ってくれるのは、

それだけ日本と比べても
畜産の歴史が長いドイツで
鶏卵が古くから親しまれていた
という証左なんでしょうね。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年08月4日

たまごの名言シリーズです。

『鳥は卵からむりやり出ようとする。
卵は世界である。
生まれ出ようとする者は
一つの世界を破壊しなければならない。』

(Der Vogel kämpft sich aus dem Ei. Das Ei ist die Welt. Wer geboren werden will, muß eine Welt zerstören.)

ヘルマン・ヘッセ著「デミアン」から。

 

ヘルマンさんは20世紀初頭ドイツの
小説家で詩人、ノーベル文学賞受賞者。

この「デミアン」や「車輪の下」が
とくに有名ですね。

どの図書館にも必ず置かれている
イメージですが、
ほとんどの日本人にとっては

国語の教科書
エーミール少年と蛾のコレクションの話

『少年の日の思い出』
を書いた人

といった方がわかりやすい
かもしれません。

「そうか、つまり君はそういうやつだったんだな。」

のセリフ、めっちゃ心に残っています。

「少年の日の思い出」は、
なんと80年間ちかく!
中学の教科書に載り続けていますので、

ヘッセさんは
3世代にまたがって知られている
世代を超えた作家でもあります。

 

上記の
『卵は世界である。~』の言葉が書かれた
小説「デミアン」も教科書掲載のお話と同じく
少年の精神的な葛藤を描いたお話です。

「僕の考え方って他人とちがって
おかしいんじゃないか・・!?」

こういう不安ってありますよね。
若いころは特にそう。

主人公は
そんな風に悩んでいるときに、
変人な同級生「デミアン」に出会い、

『鳥は卵からむりやり出ようとする。
卵は世界である。~~』
このメッセージをもらうんです。

そして、

いま自分の持ってる常識なんて
しょせんちいさな卵の内側
みたいなもの。

そこからカラを割り捨てて
飛び出さないと
新しい世界は広がらないんだな。

そう思える勇気を手に入れるんですね。

 

こんな悩みって、
世代や国を超えた普遍性がありますよね~。

だからヘッセさんのお話って、
読みやすいし、これだけ時を経ても
まったく色あせないんですね。
80年間教科書に載り続けるのもうなづけます。

 

ちなみに
2つの立場の間で葛藤する
少年を描いたダークSFバトル漫画、
「東京喰種(トーキョーグール)」(集英社)
にも、このセリフが引用されています。

 

◆飲食店さん革新には卵メニューが便利!

“常識の殻をやぶる”のって
独立ご創業される飲食店さん
洋菓子製パン店さんのイメージと
重なります。

既存にないエリア、
新たな商品・ターゲット・・・
すくなくとも何か
『いま無い価値』を生み出さないと
創業できないわけで、

この勇気はまさに
カラを破る行為ですよね。

 

そして、
コスト面で優位性があり
メニューの取り回しが多く
新規性も出しやすいのが
卵メニュー。

飲食店さんのイノベーションに
すごく役立つ食材です。

だじゃれじゃなく
価値の殻を破るのは
「たまご」です。

ぜひファンができ
粗利の取れる新しいメニュー
をたまごで。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年07月24日

昨日で四国九州は梅雨入りですね。

野菜がすくすく育つ季節です。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

たまご・鶏の慣用句第90弾!
今回は日本・江戸の言葉です。

<雨降りの鶏>

「首をかしげる様」

「よくわかっていないのに
首を傾げる」

ことを言います。

「いいかげんな相槌打ちやがって
おめえみたいなのを
『雨降りの鶏』ってんだ。」

なんて説教でつかったり。

 

こういうことってありますよね。

大人になるとプライドもあるので
なかなか「知らない」とは言いにくい、
つい適当なあいづちをうっちゃうんですよね~。

 

ですが孔子さんも

“知らないことは知らないと
はっきり言うことが
本当に知っているってことだ”

なんておっしゃってます。

 

おのれが『雨降りの鶏』になってないか、
素直なこどものような気持ちで

「ちょっとわからないんです。」

といえる自分でありたいですね~。

 


◆なぜよく動く!?ニワトリの頭

たしかにニワトリはコッコッと
首をよく動かします

なので農場で
ニワトリを前にして
独り言をつぶやいてみると

「へー、フンフン。」なんて
軽いコミュニケーション
取ってもらってる気分になります。

 

そしてニワトリは
このことわざのように
よく左右に首を傾けますが、
これは『上下』を見るため。

人間は眼球をくるくる動かして
上下左右を見ますが、

ほとんどの鳥類、
ニワトリは眼球が大きいので
目だけギョロッとうごかすことができません。

そして顔の側面に目がついているため、
天地上下を見ようとすると
首をかしげるしかないんですね。

ちなみに歩くときに
ニワトリが首を振るのも
両側の目でなんとか
立体視するためだそう。

 

雨降りの方がよく首をかしげるかどうかは
あまり気にしたことがないのですが、

古い研究データによると
ニワトリは『雨降り後の晴れ』の朝に
最もたくさん鳴くんだそうです。

(参照:鶏の發聲に關する研究(実験第8) 森 戸 義 一1937)

ということはニワトリは
けっこう天候を気にして雨の時は

「はやく晴れないかなぁ。」

なんて気持ちでたくさん首を傾げ
しょっちゅう空を見ているのかもしれません。

◆たとえになるくらい鶏がいた江戸時代

いずれにせよ、江戸時代には

『雨降りの鶏』のイメージが
共通認識になるくらい
ニワトリが普及していたわけで、

そこは大変興味深いです。

 

現代でもぜひ、
あなたのお店の梅雨時の

たまご料理・鶏料理の豆知識として
ぜひご紹介してみてはいかがでしょうか。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年06月10日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第89弾、
今回は日本から。

 

<豪家の門に痩せたる犬無く、
農夫の倉に肥えたる鶏有り>

「みんなそれぞれの場所で、
そこに応じた生活をして
それなりに稼ぎをあげている」

という意味です。

 

ウチは食材の良さがウリ!

当店は接客が強み!!

このお店、立地が最高!

 

・・・なんて風に、
個々の強みを活かす飲食店さん
に通じるものがありますね。

これ、逆だったらどうでしょう?

 

門前にニワトリがいても
門番としては役立たずですし、

農家では犬より
卵を産むニワトリの方が
重用されるはずです。

自分の良さがピタッとハマる
フィールドさえ見つければ
そこでこそ成果をだせるんだよ、
というのは変わらぬ世の真理ですね!

◆日本初の〇〇作家の言葉!?

これを最初に言ったのは

江戸のベストセラー作家
曲亭馬琴(滝沢馬琴)さん

昨年ひさびさに映画化もされた
「南総里見八犬伝」の作者ですね。

現在放送中のNHK大河「べらぼう」
蔦谷重三郎の番頭を務めていた
こともありますので、
今後登場時にこの成句も
出てくるかもしれません。

 

やさぐれて放浪し
武士から町人になり、

食い詰めて筆の道に進むも
全く売れず、

出版弾圧を経て
それらの経験を活かしつつ産みだした
奇想天外エンターテインメント
「八犬伝」を大ヒットさせ、

『原稿料だけで食っていけた最初の作家』

なんて言われます。

リアリティある武家物語を書ける
町人小説家なんて
そうそういないわけで、

まさにことわざ通りの
生き方をしてますね~。
説得力あります。

 

ちなみにこの
「南総里見八犬伝」

超なが~~い
大大長編連載でして、

28年 全98巻

あまりに引き伸ばしがひどくて
現代語訳の編者が

「訳したところで
私も読者も苦痛なだけだ」

なんて音をあげそうになるくらい
まるで往年のジャンプ漫画の
ひどい引き伸ばしみたい、
なんて言われてます。

それでも売れたのですから
ホントにオンリーワンの分野だったのですね~。

ある意味うらやましい・・!

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年04月24日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご鶏のことわざ慣用句
88弾目は英国から。

<雄鶏と雄牛ばなし>
(cock and bull story)

大げさなはなし、ヨタ話のことです。

「トムが宝くじで10億円当たったって?
そりゃ“雄鶏と雄牛ばなし”だな。」

みたいにつかいまして、

4百年前の戯曲にも登場する
由緒ある言い回しなんです。

 

どうしてニワトリとウシが
ヨタ話になるのか。

これ、
ある有名なホテルがその由来なんです。

 

ロンドンバーミンガムの間に

「雄鶏亭」と「雄牛亭」
という2つの有名な宿が
あったんですね。

旅人はよく
この2つのどちらかに泊まる。

すると夜あつまって
ワイワイと情報交換をするんですが、
酒が入ると

 

「おりゃ森の中でクマより
でっかいオオカミを見たぜ!」

なんてテキトーな
おおげさな話が始まるわけです。

そして、そのウワサが
地元に広がる・・・。

つまり、
うさんくさい情報の2大発信源
この2つの宿だったのです。

 

たびたび騙される地元の人は

「どうせまた出所は
雄鶏亭か雄牛亭だろ?」

「今回は“雄鶏”だったよ。」

 

みたいな反応となり、

「雄鶏と雄牛ばなし」=ヨタ話

となったわけです。

これがそこそこ有名になりまして、
それぞれに泊まった旅人が

どっちのウワサが
より信じられ広まるか
2つの宿の旅人どうし
競い合うこともあったとか。

なかなか迷惑な話ですね(笑)

現代に例えるなら
バズり目的でアクセスを競い
噂をたれながすユーチューバー
みたいなものでしょうか。

 

すごいことに
どちらのホテルも現存してます。

雄鶏亭(cock hotel)は
こんなカンジ。

少なくとも5百年前、
1470年にはあったことが分かってまして、
イングランドの国家遺産にもなってます。

すごい老舗ですね~。

いちど泊まってみたいものです。

 

ちなみにどっちのホテルも
この不名誉なことわざ
めっちゃ利用してまして、

雄鶏亭(Cock Hotel)は
カンバンに
「有名な(Tha famous)」と
付いてますし

雄牛亭(Bull Inn)なんて
「悪名高い(The innfamous)」
って自分で書いてます。

面白いなぁ。

商売もこれくらいしたたかに
行きたいものですね~。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参考:THE COCK HOTEL, Stony Stratford – 1310973 | Historic England)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2025年03月6日